第4話『ねんがんの 白ワンピースをてにいれたぞ!』
"考える人"のポーズをしながら真面目な顔で俺は言う。
「俺は明日からは超頑張る。毎日レベル50くらいあげるくらいの勢いで地下下水道を掃除しまくるよ。だから、仕事終わったらソピアが毎日俺のレベルを吸収してくれ」
「あんまり、仕事を頑張り過ぎて……会いに来てくるのが遅くなっても妾は寂しいぞ。仕事はほどほどで切り上げてきて会いにきてくれぬかの?」
「もちろんだ! 最速で仕事を終わらせてレベルも上げてここに来る!」
俺は、(自称)フロムゲーを極めた男だ。
竜頭バグとか使わずクリアした
ダーク○ウルとかも2周目以降は、
敵のパターンや位置を覚えて最適な行動を取れる男だ。
そんな俺が地下下水道の敵ごときに負けるはずが無い。
フロムによって鍛えられた俺の心は折れない!
それにレベル250を超えてから急に伸び率が下がり始めたのだ。
きっと、250レベルを超えるとこの地下下水道のモンスターの平均値を
上回るから経験値効率が悪くなるに違いない。
ならばあえて一旦レベル30くらいまで下げて、
毎日サクッと50レベルほど上げて、ソピアに毎日50レベルずつ
吸収してもらうのが一番効率が良いのではないか?
「ソージよ……。お主の大切なレベルを250もいただいて申し訳なかったのじゃ。妾にとっては、お主のことはとても感謝しても仕切りないのじゃ妾としてはお主にはあまり無理して欲しくないのじゃ。命あっての物種なのじゃぞ」
「心配してくれてありがとう! でも、30レベルもあれば、いちばん苦手なアルビノ・アリゲーターも倒せる十分な能力があるから大丈夫だよ。それに、ダーティー・スライムを倒せば経験値ガッポリもらえるからね」
「そうか……。妾はお主の力を信用しているが、あまり無理をするでないぞ? 妾はお主が居なくなったら、その時は……もうこの世に未練はないのじゃ」
「心配しなくても大丈夫! レベル30もあれば、掃除魔法で無双できるから。それに、俺もソピアと会えないのは寂しいから絶対に死ぬようなムチャはしないよ! それじゃ、また明日、仕事終わったら来るね。いってきます!」
「ソージ、いってらっしゃいのじゃ!」
最近のお別れの挨拶は、『いってきます』になった。
帰る場所があるというのは良いものだ。
某白いロボットが宇宙で戦うアニメで
『まだ帰れる場所がある。こんなに嬉しいことは無い』
というセリフがあったのだが今なら同意できる。
その後は帰り際に遭遇したジャイアント・ローチや、
ダーティー・スライムを掃除魔法で蹴散らしつつ、
ルンルン気分でギルドの受付に行き、報酬をもらう。
……っと、その前に。
「セントレス」
完全に自身に身の周りの匂いを消す魔法である"セントレス"。
レベル250を超えていた時は無臭にするだけではなく、
ほのかにフローラルな香りも付けられる魔法だった。
その効果がなくなったのだけは残念かもしれない。
「ジャイアント・ローチ倒してきました。これ、ローチの頭部です」
クエストに記載のあったノルマ10匹分の頭部を受付に渡す。
多く渡しても報酬が増えるわけじゃないのが残念だ。
その変融通効かせてくれると嬉しいのだけどねぇ。
「清掃員……じゃなくてソージさんですね。はいはい、現物を確認しました。それではクエストの達成報酬として満額報酬、銀貨3枚をお渡ししますね」
銀貨1枚が1万円。それが3枚も!
……つまり、なんと! 日給3万円!!
1ヶ月働けば90万円。
おまけに宿屋とかに毎日泊まれるのだ。
前世で言う所のホテル暮らしなのでは?!
異世界で俺は大富豪である。これは嬉しい!
最高級のワンピースも買えるぞ!!
「ありがとうございます!! 明日も掃除がんばります!」
「いつもキツイ仕事ありがとうございます。ソージさん。ではまた、明日」
俺は銀貨3枚を握りしめて、
王都の中でも一番大きい服屋に行った。
ここなら俺の望むワンピースが手に入るはずだ。
俺は店員さんに声をかける。
「140cmの女の子ににあう花柄付きの白いワンピースをお願いします」
「あら。彼女さんへのプレゼントですか? そうですね……ご希望の品であれば、いま70%OFFのバーゲン中なので金貨3枚でお譲り出来るかと」
ちょっとボッタクリだな。まあ、ギリ払えるか。
俺は銀貨3枚を店員さんに渡す。
「えっと……すみません。銀貨3枚ではなく、金貨3枚です……。当店では申し訳ございませんが、銀貨でお譲りできる商品はございません」
俺は愕然とした。金貨は10万円である。
ワンピースに30万円も払う狂人がこの世界に居るとは思えない。
ボッタクリ店である。酷い目に会った。
もう来ない。
「……分かりました。……どうもありがとうございました」
そのあと俺は、日が落ちる前に王都の服屋を何店も回った。
だが、どこも思ったより女性用のかわいい服の値段が高かった。
俺はただかわいいワンピースが欲しいだけなのに。
少し悲しい気持ちで王都の街並みを歩いていると、
古着屋のお店を見つけた。
「ここなら服が買えるかもしれないな」
お……っ! ビンゴ! 白いワンピースみっけ。
身長も140cmくらいだからこれに決めた。
少しコーヒーを零したような染みが着いてはいるが、
俺のバブル・ウオッシュを使えば一撃で染みを落とせる。
掃除魔法で完全に漂白すれば新品も同然だ!
やっぱり、掃除魔法は最強だったのだな。
「これ、おいくらですか?」
「銀貨5枚になりますが、お代はお持ちですか?」
中古服なのに5万円もするのか……高い。
だけど、無駄遣いしてなかったから買える。
貯金していて良かった!
それにしてもお金はお持ちとはちょっと失礼だな。
貧乏そうに見られたのかな? ちょっと心外だな。
俺は、店員さんに銀貨5枚を渡す。
「ねんがんの 白ワンピースをてにいれたぞ!」
俺はウキウキ気分で王都の街を歩く。
白地だけで柄がないワンピースだとかわいそうだよなぁ。
裁縫セット買って刺繍してみようかな。
あとは、花屋にも行って花束買わなきゃ。
それに、宿屋に帰ったら交換日記も書かなきゃだし、
なかなか忙しい一日になりそうだ。
俺は、いろいろな店によりながら買い物をして、
いつもの定宿にたどり着く。
俺は、安宿……王都でもコスパの良い優良な宿屋の自室に戻る。
長期契約の割引もしてもらっているからお得な宿なのだ。
「おっしゃ。やったるでー!」
白いワンピースと向き合いながら夜遅くまで
花の刺繍を着けるために挑戦したが、
未経験者にとって想像以上に刺繍は難しかった。
オシャレな感じにしたかったのだが花丸チューリップ、
みたいな刺繍になってしまったのが悲しかった。
俺はソピアとの交換日記に、酷いボッタクリの服屋の事、
良い古着屋を見つけた事、俺の刺繍があまり上手くいかなかった事のお詫び、
などなどのとりとめのない事を書き、明日の仕事に備えて眠りについた。
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