嬉しい再会
──ぷるん! ぷるるん!
キラキラと光る紫色のスライムが、わたしたちの前でぷるりと揺れた。
スライムは眩く輝いている。よく見ればその輝きは、スライムの中にある、宝石のようなものが発しているようだった。
んんん? あれ……? このスライムって、もしかして……。
「ギア、わたし、このスライムに見覚えがあるような……?」
「俺もだ」
わたしとギアは顔を見合わせた。ま、まさか……。
「あの時の、クリスタルスライム!?」
スライムは肯定するように、ぷりーんと揺れた。
わたしが水晶の階層で休憩中に踏み潰してしまった、あのスライムだ。
あの時はすっかり弱っていたけれど、今はもちもち、ぷるぷるとして、かなり元気そうだった。
「嘘、本当に?」
ルルたちがふんふんとスライムの周りを嗅ぎ回る。それからパッと顔を輝かせて、わたしを見た。まるで再会を喜ぶかのように、飛び跳ねる。
「信じられないが、どうやら本当のようだな」
ギアも放心したようにスライムを見ていた。
「えっと、あの、スライムさん? もしかして、あの時のスライムさんですか?」
試しにそう聞いてみると、スライムはぴょこぴょこと嬉しそうに飛び跳ねた。中で光る宝石が、とっても眩しい。
「でも、ギア。なんだかこのスライム、ピカピカ光ってませんか? 前はこんなんじゃなかったような……?」
そう言うと、何かを考えていたギアがはっとしたような顔になった。
「……そうか。このクリスタルスライムの魔水晶に感化されて、アトランシアの花が咲いたんだ」
「え?」
「クーナ、覚えてないか? クリスタルスライムはとてもレアなモンスターだ。その理由は、体内で莫大な魔力を持つ、魔水晶を生み出すからだ」
「あっ!」
そういえば、そんなことを言ってたっけ。
「スライムの体の中に、宝石のようなものがあるだろう?」
「は、はい」
その宝石が、強い光を発しているのだ。
「俺たちと別れてから、このクリスタルスライムはきっと魔水晶を育て続けていたんだろう。あの時は小さかったが、今はかなり大きくなったみたいだ」
「でも、一体どうしてこんなところまで来たんでしょう?」
そっと手を差し出すと、スライムは嬉しそうにわたしの手のひらに登ってきた。
ああ、やっぱりあの時のスライムだ。あの時は随分弱っていたみたいだけど、今はすっかり元気になって、ぴょんこぴょんこ、ぷるんぷるんととってもアクティブ。
「元気になってよかったです。もしかして、わたしたちに何か用事があったんですか?」
そう尋ねると、スライムは突然震え出した。それからぺいっと中にあった宝石を吐き出す。
「わっ!」
おっことしそうになって、あわあわと手のひらで転がす。
「それが魔水晶だ。しかもこれは、かなりのエネルギーを秘めているみたいだ……」
ギアがそう呟く。
「もしかして、クーナに恩返しをしにきたんじゃないか? レモネードの」
「ええっ!? そ、そうなんでしょうか。そのために、わざわざこんなところへ?」
スライムがうんうんと頷いた気がした。スライムの恩返しなんて、聞いたことない。こんなことってあるんだ、と呆然としてしまった。
ルルたちが興味津々にこちらを見ていたので、スライムをおろしてやると、まるで再会を喜ぶみたいにプルプルし始める。
「……それにしても、すごい光ですね」
手のひらにあった魔水晶を、指でつまんで空にかざす。
確かに、なんだか気圧されるような感じがした。地底魚の中にいたときに見た、光の球みたいだ。そういえばあの光の玉も、莫大なエネルギーを持っていたからわたしの持っていた天秤が光ったんだっけ。と、そこまで考えてわたしはようやくあることに気づいた。
「あっ!」
……そうだ、そうだった! やっと思い出した! わたし、なんで忘れてたんだろう!?
「どうしたんだ?」
訝しげな顔をするギアを見て、わたしは興奮して震える声で捲し立てた。
「わたしが拾った金の天秤の話、ギアは知ってますか?」
「ああ、シモンから聞いたよ。クーナがすごいアイテムを手に入れたって。確か……真実の秤、だったか?」
「そう、そうなんです!」
手に入れたはいいけど、結局使用するのに莫大なエネルギーを持つ魔水晶をはめなくちゃいけなくて、使えなかったのだ。
「それは……」
説明すると、ギアはわたしの手の中の魔水晶を見た。
「こ、これのこと、ですよね……?」
「……おそらく」
ギアも少し、驚いたように頷いた。
「すごい偶然です。こんなことがあるんですね……!」
これであのアイテムが使えるようになる。それにしてもすごい縁だ。あの時、シモンの言葉を信じて、ずっと持っていてよかった。
──縁は大事にしないとね。関係ないと思っていても、ふとした瞬間に縁が繋がっていくのが、
……繋がる。縁が、繋がる。
ふと、頭の中でそんな言葉が反芻された。
今、何か大事なことが、頭に浮かびそうになっている。なんだろう、この感じ……。
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