再会


 その後、わたしたちはお祭りの屋台を見たり、遊んで回ったりした。

 ボール当てると景品がもらえるという屋台にルルが興味津々になっていたので、やらせてあげた。そうしたらなんと、ルルは口でボールをくわえて、ポーンと景品に当ててしまった。

 景品は、高級ケーキの食べ放題券だった。


「ルル、よかったね! 食べ放題のチケットだって!」


「るう~!」


 ルルはめちゃくちゃ喜んで、しっぽをブンブン回して走り回っていた。

 モコモットたちも大喜びしている。彼らが食べ放題に参加すると聞いたら、ケーキ屋さんはどんな顔をするだろう……。わたしもエレンさんもクロナさんも、その様子を思い浮かべて、吹き出してしまったのだった。

 しばらく街で遊んでいたら、日も暮れてきて、夜風が涼しくなってきた。


「花火、楽しみですね! お祭りの最終日に上がるから、まだ何日かありますけど」


 エレンさんが空を見上げてそう言った。


「この調子だと晴れそうなのでよかったですにゃ」


「本当ですね。私、毎年楽しみにしてますもん」


 二人がそう言うのだから、きっと花火というのはすごく綺麗な物なのだろう。


「クーナさんは、花火って見たことあります?」


「ないんです。アルーダ国には、そういう文化がなくって」


 エレンさんがふふっと笑った。


「それだったらびっくりしますよ! とぉっても綺麗ですからね!」


「そうですにゃ~」


 尚更楽しみになってきたなぁ。


「そろそろギルドに戻りますかにゃ? まったり休憩しつつ、座ってみんなでおしゃべりでもしますかにゃ」


「ああ、そうですね。そうしましょっか」


「はい」


 わたし達はそれぞれ好きなものをたらふく食べたので、もう屋台には満足していた。しかも帰ったら、ルーリー達が新鮮なオレンジのフレッシュジュースを凍らせて、氷菓子にしてくれているらしい。わたしたちはそのまま帰路に着くことになった。






「あれ……おかしいな」


 わたしは祭りの喧騒の中を一人で歩いていた。

 さっきまでエレンさんたちと一緒だったのだけど、人混みに揉まれてはぐれてしまったのだ。


「まあ、ギルドに戻れば合流できるし、いっか」


 ルル達も多分、先にギルドへ戻っているのだろう。

 ギルドへ帰ろうと足を踏み出した時。聞き覚えのある軽やかな声が、耳に届いた。


「見つけた」


 この、声。

 思わずゆっくりと振り返る。噴水広場の前に、よく見覚えのある女の子が立っていた。

 人混みの中、その女の子が立っている場所だけがなぜかはっきりと見えた。まるで時間が止まってしまったように、あたりが静かになる。


「見つけた、お義姉様」


 どうして、あなたがここに?

 あまりの驚きに、声が出ない。見間違えようがなかった。

 そこに立っていたのは、義妹のアニエスだったのだ。

 そしてアニエスの後ろからやってきたのは。

 薄っぺらな笑顔を浮かべたお父様と、不機嫌そうに目を細めたお継母様だった──。


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