可愛い服を買いにいきましょう

「クーナさん、外でぼうっとしていたから、何事かと思いましたにゃ」


「す、すみません……」


 ギアと別れてから、しばらくたったあと。予定していた時間にエレンさんとクロナさんと一緒に、ショッピングをすることになった。わたしがぼんやりギルドの前に立っていたから、二人ともびっくりしたらしい。


「ちょっと、考え事していて」


 そう言って、なんとか誤魔化す。


「それにしても、クーナさんが自分から服を買いにいきたいって言うの、珍しいですね!」


「あの、ご迷惑でした?」


「え!? ぜーんぜん! クーナさんの可愛い服を選ぶなんて、腕がなりますなぁ!」


 げへへ、とエレンさんはノリノリだった。


「エレンさん、怖いですにゃ」


「えー、なんでですかぁ! クーナさんを可愛くしたいでしょ、誰でも!」


 楽しそうなエレンさんに、少しほっとする。一応、夏服もあるけど、数が少ないから少々買い足した方がいいのかもしれないと思っていたのだ。涼しい季節と違って夏はたくさん汗を掻くから、毎日洗濯しなきゃいけないしね……。

 それに、なんていうか、その……いつもより可愛い服が欲しくて。

 今日だって、適当な服を着ている時にギアに会っちゃったし。あ、別にギアがどうとかじゃなくて、お祭りだし、ちょっとくらいお洒落してもいいのかなって思って……。


「夏ですからね、誰だってお洒落したくなりますよ!」


 わたしがモジモジしていると、カラッとした様子でエレンさがそう言った。

 頼もしい二人と共に、わたしはいつもお世話になっている服屋さんへと向かった。ちなみにモフモフたちは、先に喫茶店に戻っている。

 ……いや、木苺のパイにかじりついて全然離れなかったから、置いて来たのだった。



「んー、これもいいですねぇ!」


「こっちの方が動きやすくていいんじゃないですかにゃ?」


 服屋さんについた途端、早速二人はいろいろな服をわたしに当て始めた。

 迷惑かなぁって思ってたけど、喜憂だったみたい。

 二人は服を選んでは、これは違う、あれがいいと意見を交換しあっていた。


「クーナさんはどんな感じがいいですにゃ?」


「えっと……」


 いけない。わたしから頼んだのに、全然考えてなかった。

 わたしは慌てて、どんな服がいいかを考えた。


「えっと、ギアが……」


 パッと口を押さえる。わたし、今なんて言おうとした?


「ギア? ギアさんがどうかしたんですか?」


 キョトンとした顔で、エレンさんが言った。


「い、いいえ、あの」


 冷や汗だらだらになる。


「ぎ、ギアが夏祭りはみんなおしゃれしてるって、言ってたから、それで、あの、お祭りの服とか、欲しくて……」


 焦りすぎたけど、なんとかそれっぽい言い訳を言えた。


「ああ、そうだったんですね! それならやっぱり、いつもよりとびっきり可愛い服じゃないと!」


 幸いにも、エレンさんは何も気づいていないようだった。

 心臓をバクバクさせていると、クロナさんがじーっとこちらを見てきた。


「なるほどですにゃ~?」


 うっ。なんでそんなにニヤニヤしてるんだろう……。

 ドギマギしていたけれど、それ以上クロナさんは何も言わなかった。

 わたしは思わず、胸をほっと撫で下ろしてしまったのだった。

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