第二部 後半 家族襲来

第4章 白狼族の恋

お風呂でまったり


「はふぅ」


 わたしは湯船に浸かって、まったりとしていた。お湯の中にはお花がたくさん浮いていて、いい香りがする。

 先日のお疲れパーティで、エレンさんとクロナさんに、入浴剤セットをプレゼントしてもらったのだ。入浴剤をお湯に溶かして、リラックス効果のあるお花を湯船に浮かべれば、あっという間に極楽の完成。お風呂ってなんでこんなに気持ちいいのかな。ずっと入っていたいくらい。


 そういえばレイリア家にも、入浴剤があった。もちろん、わたしは浸からせてもらったことはなかったけど……。義妹のアニエスが、いつも自慢げに香りのことを話していたっけ。

 いつも獣臭いと叱られていたけど、今は大丈夫かな……。

 この入浴剤はいい香りがするから、ずっと浸かっていたらわたしにも匂いが移るかもしれない。


「る~♪」


 ルルはさっきから、ばしゃばしゃと犬かきでお湯の中を泳いでいた。


「きゃっ。もう、バシャバシャしちゃダメだよ」


「るーるるぅん」


 しっぽをブンブン振って、ルルは泳ぎ続ける。


「ピュー」


「ピー」


「ピュルル」


 モコモット達は、お風呂に浮かべていた桶の中で、お湯浴び? をしていた。ピチピチ鳴いて、気持ちよさそうにお湯に浸かっている。普通の鳥って羽を洗うけど、ピピ達は普通にお湯にもったりと浸かっているだけだ。ちょっと変だけど、まあ、精霊なのでこれが普通なのかもしれない。


 ルル達って、普段はお風呂に入らなくても全然汚れないけど、たまにこうやってわたしにくっついて体を洗ったりするんだよね。やっぱり精霊も、お風呂が好きなのかなぁ。


「みんな、体洗ってあげる」


「!」


 石鹸でモコモコと泡を立てると、我先にとモフモフ達が攻めてくる。


「わっ! お風呂で暴れちゃダメだよ!」


「る~!」


「ぴちぃ~!」


 バシャバシャ、モコモコ。お風呂は一気に泡だらけになってしまった。

 クスクス笑いながら、ひっついてきたルルをひっぺがして、泡で包み込んであげる。

 洗っているうちに、ふと思い出した。


「そういえば、あのダンジョンにいたスライム、元気になったかなぁ?」


 ダンジョンの九十八階層にいたクリスタルスライム。あの子、今も元気だったらいいなぁ。


「中に入ってたキラキラ、綺麗だったねえ」


 ルルをモコモコの泡で包みながら、そう呟く。

 あれ? そういえば、あのスライムが生み出すのって……。


「る~!」


「わぁっ」


 ルルがブルブルと体を震わすものだから、思考が散り散りになってしまった。泡が飛び散って、鼻先に泡がひっつく。


「る?」


「もう、泡だらけになっちゃったよ……」


「るん♪」


 ルルはわたしの鼻先についた泡をぺろっと舐めると、渋い顔をした。

 舐めちゃダメだよ、とルルをお湯で洗い流していると、モコモット達も早く~! とピチピチ鳴いてわたしの頭に乗ってくる。


「はいはい、ちょっと待ってね」


 ルルにお湯をかけると、わたしは泡だらけになりながらモコモット達も洗ってやった。

 何か大切なことを忘れているような気がするんだけど、気のせい?



 お風呂を上がると、心なしかルル達は艶々のピカピカになった気がした。

 ブラッシングもしたからかなあ。


「それに比べて、わたしは……」


 最近、何だかよくわからないけど、わたしは自分の見た目を気にしている。

 いや、今までもずっと、耳やしっぽなんていらないって病んでたんだけど……そうじゃなくて。

なんかこう、もっとふわふわにならないかなぁって、最近は思うようになったのだ。


「イングリットさん達も、クロナさんも、すごくふわふわなんだよね……」


 どうやったら、あんなモフモフサラサラになるのだろうか。

 生まれ持ったものなのだろうか……?

 わたしは鏡の前に立って、ため息をついた。しっぽを指先で持ち上げて、ポトっと落とす。

 わたしのは何だか、痩せてて萎んでいる。


「どうしたらふわふわになるのかなぁ……?」


 今度クロナさんに聞いてみよう。しょぼしょぼのしっぽを見て、そう決意したのだった。

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