ただいま
転移式を使用し、ダンジョンの第三階層へと戻った後、ようやく元の道を辿ってダンジョンの外へ出ることができた。中にいたから気づかなかったけど、丸一日以上、あのダンジョンの中にいたらしい。
穴から出ると外は天気のいい午前で、本物の日の光に、わたしは目を細めてしまった。やっぱりダンジョンの中の光とは、少し違うような気がする。
「クーちゃん!」
「!」
荷物をチェックし、モフモフ達もちゃんと揃っていることも確認して、わたしたちはギルドへ帰ろうと歩き出した。すると街の向こうから、ルーリーとダンがやってきた。
「ルーリー!」
わたしは思わず駆け出す。
ルーリーもパッとかけてきて、二人でぎゅううっと抱きしめあった。
「よかった、無事だったのね……!」
「はい、どこにも怪我、しませんでした」
いろいろと予想外のことは起こったけど、すごく元気だ。
ルーリーはわたしの体をペタペタと触って本当に怪我をしていないかを確認すると、ようやくほっとしたようにわたしの目を見た。
「ずっと心配だったのよ、私たち」
「お待たせして、ごめんなさい」
「ううん、いいのよ。クーちゃんが無事だったらそれで」
再びむぎゅーっと抱きしめられる。そばにやって来たダンが、わたしの周りにいたモフモフ達を見て目を丸くした。ダンが手を伸ばすと、ピピがその太い指に止まって囀った。
「もしかして、進化したのか?」
「はい、そうみたいです」
「そうか……」
ダンの頭や肩に止まるひよこ……じゃないや、小鳥達。
「はち切れそうなくらい太っていたのは、きっとこのためだったんだな」
「ねえ、それにしても結局丸くないかしら?」
二人は小鳥達をつついて楽しんでいた。
小鳥達も目をキラキラさせながら、二人に甘えている。
「?」
さっきからやけにぶりっこしているなと思ったら、どうもダンに美味しい料理を作って欲しいみたいだ。
「……中身は変わってないな」
意図に気づいたのか、ぼそっとダンが呟く。
そこにリュックから飛び出したルルも参戦して、小鳥たちとまっっったく同じようにダンに擦り寄り始めた。
「るー!」
ルーリーもわたしも、思わず吹き出してしまった。
ひとしきり笑った後。ルーリーは涙を指で拭って、改めてわたしに向き直った。
「クーちゃん」
「はい」
「おかえりなさい。あなたが無事で、本当によかったわ」
「!」
そう言ってもう一度ギュッと抱きしめられる。ダンには頭をくしゃりと撫でられた。
──この言葉を口にできるのがどれだけ幸せなことなのかを、わたしはよく知っている。
「ただいま!」
わたしは大きな声でそう言うと、満面の笑みを浮かべたのだった。
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