第23話 アヤカ〜〜♡♡♡♡♡

 藤田幹事のBBQに呼ばれて来た。昨日の金曜日に場所を伝えられた。ビルの屋上をテラスにした会場だった。


 どっかの公園で手ぶらのファミリーも楽しめるBBQかと思ったら、カジュアル感を装ったパーティーだ。メインの食事がBBQなのだけど。


 綾香さんがひらひらしたレースのワンピースを選んでるからそれに合わせた服を着て来たんだけど正解だった。


 貸し切りで三十人ぐらいかなぁ……

 都会の夜景を借景して映えまくりのオシャレさにビックリした。都会のオアシスって感じ。貸切だって聞いてないし!!


 入り口に藤田を見つけた。

 受付してるじゃん!!


「藤田、これなんのパーティーなの? 」


「あ、そうか。説明して無かった」


 藤田、酷いな……会場をネットで調べて慌てたのに。会社の系列店だったけど。


「ジェシカさんの接待だよ」


「……ジェシカさん……って誰だよ? 」


 ここは知らないふりをした。


「ロサンゼルス在住のイラストレーターだよ。元社員だったけど在勤三年でロス行っちゃった……井達さんの元奥さんだよ(小声)」


「それ、早く言ってよ……! 」


 本当、藤田、幹事失格だからな!! 綾香さんが一応名刺持参って言ってくれなかったら大失態するところだったぞ!! 綾香さんのLIN□からブロックするぞ!!


「で、僕はどうしたら良いわけ? 受付? クローク? 」


 平社員中の底辺だぞ?


「いや〜、井達さんが呼べって言ったから誘ったんで分かんないなぁ〜。井達さんところ行って」


「最悪! 」


 お前は二度と幹事するな! 綾香さんも休日のコンサートに行くぐらいのノリなんだもん。僕は素直に時間通りに来て恥ずかしい。帰りたい。


 眩しい西日で照らされてるテラスから、井達さんがこっちに来いって手招きしてる。僕は駆け足で挨拶に向かう。


 井達さん……めっちゃ、ラフな格好してるし。でも、ブランドのTシャツなんだろうけど。体躯で着こなしてるよ、井達さん。


「倉本、……悪いな誘って」


 お招きいただきありがとうございますと言うべきか、訳もわからず遅れて来ましたって謝るべきか悩んでる僕に、井達さんは声を潜めて申し訳なさそうに言う。怖い。


「あの、何にも分からず来てしまったんです。すみません」


「いや、お前は来てくれただけで良い」


「……はい」


 井達さんから両肩に手を添えられての脅迫が始まった。


「お前は、わんこじゃない、エンジェルだ! 」


「意味が分かりません」


 受付の藤田の方を見ると綾香さんの姿が見えた。美容院で髪をセットしてお人形さんみたい。……きれいで早く連れて帰りたい♡


 僕を助けてって願ってるのに、藤田が綾香さんとお喋り始めて……アイツ、許すまじ。


「ところで倉本、ノベルティのわんこ履いてきてたりする? 」


「はい……て、ますけど」


 綾香さんがもらった井達さんからの海外出張のお土産。男性用下着の犬柄のボクサーパンツだ。綾香さんの部屋に置いているうちに数枚を下ろしたので、このところ履いてる率が高い。


「お前は偉い。エンジェルから、ジーザスに昇格」


「もう、上が無いじゃないですか! 」


 井達さんのテンションが理解出来ない。元妻の接待と言うプレッシャーでおかしくなってるのか……なんで僕をアテにしてるの?


 綾香さんの方を見ると、綾香さんの背後に現れた美人の外国人女性が綾香さんに抱きついた。もしかして、もしかしなくても……あれがジェシカさんか。


「アヤカ〜〜♡♡♡♡♡」


「ハーイ、ジェシカ……」


 こっちまで聞こえる声でジェシカさんは綾香さんを激しくハグしまくる。せっかくセットした髪もメイクも台無しにぐしぐし指入れて髪にも顔にもどこにもキスしまくってるんだけど……


「……うわぁ」と、僕は声を漏らした。


「倉本……綾香ぐらいなんだ。ジェシカに好かれて、あんだけやられて耐えられるの。酒は呑ませてくるし、お前も宜しくな……」


「そ、そう言う事ですか……」


 やっと理解出来て脱力感。

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