第19話 大した事ない?(要くん目線)
同じ最寄駅の綾香さんが、夕方その駅に降りる。僕は隣の車両から降りて跡をつける。
本当、格好悪い。ストーカーみたいで自分の行為が気持ち悪い。
だから今日で終わりにする。そうする為に綾香さんに声を掛けて、二人っきりで話し合うんだ。
綾香さん、颯爽と一人でカラオケ店に入ろうとするから時間が引き戻される感じがして「あー、好き」って思う。
迷惑だろうけど声を掛ける。
「綾香さん、お話があります」
振り向いた綾香さんが一瞬怯んで、今すぐ抱きしめたい肩で仁王立ちする。
「私も、大した事ないけど伝えたいことがあるわ」
——大した事ないって言わないでよ
優しく向けられた笑顔に気遣いが感じられたけど、僕にはこっちの話を打ち切るような意味に近くてガッカリする。
井達さんもこれやられたのかな? だとしたら、これ、押し負けたらダメなやつだ。
————————————————————
「カラオケならこっちにもあります」って、ラブホテルに連れ込んだ。「確かにカラオケはあるわね」とか、綾香さんどんだけポンコツなんだろう。
今も、僕に手を握られて部屋の前まで素直に付いて来ちゃってる。警戒心どこ!?
部屋に着くなり、綾香さんはカラオケのリモコンとマイクとメニュー表をベッドの真ん中に放り投げて、巣作り? いや、本人には違う意味なんだろうけど。
「話なら聞くわよ」
「ピザ頼む? 」
「ワイン頼んでいい? 」
テンパリ気味な綾香さんが面白い。今までどうやって生きて来たんだろう。
結局、綾香さんは井達さんとは発展してなくてむしろ社内で噂になってる事で困惑してるし……
僕の事も「社会的に死ぬ」って頭いっぱいになってるし……
僕の気持ちも井達さんの気持ちも全く頭に無いみたいだ。綾香さん、ナチュラルにあちこち焼き野原にしてきた?
ベッドの真ん中で正座して顔色をくるくると変える綾香さんを、誰が知ってるんだろう。僕がオーダーしたコンドーム見ては目を泳がせて慌ててるし。
井達さん、綾香さんを逃してどうして他の女性と結婚したんだろう。急にどんな人なのか気になってきた。
とにかく綾香さんの目の前にいるのは僕だ。
「綾香さん、もう一回ちゃんとやってから考えてもらえませんか? 」
そう言って僕は綾香さんに詰り寄ったら、綾香さんは困った顔しながら自分からも寄ってきて僕にキスをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます