第8話 何をオーダーしてるの要くん!
「カラオケならこっちにもあります」
そう言って要くんはグイグイと私の手を引っ張り、駅前の表通りからブロックを曲がって裏通りに入っていく。
街の様子が変わるや否や、ネオンの派手なビルに私を連れ込んだ。
——ラブホテルじゃない!?
「た、確かにカラオケはあるわね」
要くんは返事をしない。
『沈黙のわんこ』と語呂のいい感じの要くんが、テキパキと部屋を選んでキーを取りエレベーターに乗り込む。
——うわぁ、久しぶり(感無量)
広いのに密室感のある部屋に入ると、私はカラオケのリモコンとマイクをベッドの真ん中に置いて上着をハンガーに掛ける。ベッドに正座して居住まいを整えた。
もう間違いは犯さないと態度を示した。
「話なら聞くわよ? 」
すっごいダサイ気がするけど、要くんにいい女を見せてる場合じゃない。プライベート手帳から何から何まで見られちゃってるし!
要くんはムスッとして上着とネクタイを外し、私に向き合うようにベッドの上に座った。
——怒ってる。ちょっと怖い。
「……何か、ピザとか頼む? 」
私を睨んでくる要くんに焦りつつ、メニュー表を開いて誤魔化そうとする。二時間のご休憩で話も食事を終わらせて脱出しなきゃと、私の頭は混乱している。
そうだ、お酒も頼もう……私しか飲まないのは悪いけど、
「ワイン頼んでもいい? 」
そう私が言うと、要くんは無言でオーダーパネルを操作し始めた。
要くんは、ピザとワインとコンドームをオーダーした。宿泊の延長ボタンまで押してる。
——こら!!
何を頼んでるのよ!
要くん!
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