第9話 竜を継ぎし魔人
1人暗闇の中
ルイは泣き崩れている
壁に掛けられた松明が徐々に火を灯し始め
段々と周囲が明るくなっていく
「やれやれ、うるさくて敵わん
ゆっくり寝ておれんではないか」
部屋の奥から見馴れぬ老人が現れた
ルイは泣きじゃくりながらも
「あなたはだれですか、パパを助けて下さい」
老人はちいさく溜息をした
「残念じゃが、それは叶わぬ
1つ、お前さんが力無き者じゃからじゃ
2つ、力を持つわしはここから出られないからじゃ
3つ、いまからおぬしに
守るため、変える為の力を継承する
それが終わる頃では手遅れなのじゃ」
「いやだよぉ、力なんかいらないよぉ
パパもお姉ちゃんも、力を持ってるから戦う
んだよ」
「たわけが!!
おぬしに力がないから戦うんじゃろが!!」
老人に喝を入れられたルイは
さらに泣きだす
「やれやれじゃ、全くわがままな子に育ったもんじゃ」
「申し訳ありません、それは私の責任です」
なんと暗がりから現れたのはラドラス ソーンだった
「なんじゃおぬし、もう絶えたのか」
「えぇ、ラドラスの血に泥を塗る未熟者でお恥ずかしい限りです」
「パパ!」
「黙れ小童!」
ソーンに駆けよろうとするルイを老人は
弾き飛ばした
「先代、なにを!」
「今、無用な感情は儀式に支障をきたす
わしはおまえのような未熟者を2度と世に出すつもりはない!」
周囲の松明が青白く光り始めた
「汝に我らの血の記憶を受け継がん!」
目も開けられぬ光に包まれた
そしてとてつもない衝撃にルイは吹き飛ばされ
神殿から姿を消した
「儀式は終わった
さて、少しソーンに話がある
おぬしが何故、未熟者なのか」
「先代……それは私が単に弱いだけでは」
「いや、しっかりとおぬしは力を引き継いでいるはずじゃ
なのにうまく力が使えないのか
恐らく、おまえの父が余計な知恵を入れたのじゃろう」
「父が?一体何のために」
「やつは野心家じゃった
だが、自身の力だけでは、世界は得られんかった
さらなる力を得るために
おぬしに別の力を託した結果
ラドラスが引き継ぐ力すら曖昧になってしもうたのじゃろう
だからあの子には、余計な感情や記憶は
ひとまず押し殺して、ラドラスの力を詰めさせてもろた」
「それじゃあ先代!
ルイはもうあのルイじゃないんですか!」
「あせるでねぇ、とりあえず、な
力を使いこなしていけばいずれ押し殺されたもんは戻ってくる
そして、お前さんの父が残した秘めた力もいずれな‥‥‥」
………………………
…………………………………………
そして、神殿の外
周りにはヴォルグ率いる小隊が集まり
神殿を包囲している
「おや?風の流れが変わりましたねぇ
お前達!戦闘態勢に入りなさい!」
殺気立つ魔物達をよそに
神殿の扉が静かに開く
そして、神殿から弾き出され、
敵陣のど真ん中に転がりだされたルイ
静かに起き上がるが、そこには一切の
強さも感情も感じられない
周囲が静まり返る
すると、空を飛ぶ魔獣に乗って待機していた
1匹の魔物が単身で
一直線にルイ目掛け、仕掛ける
「手柄は頂いたぁぁ!!」
大きな槍を向け空から急降下
そして、そのままルイに衝突
とてつもない衝撃が周囲に広がる
「血の気が多くて困りますねぇ
ですがこれでラドラスも終わ……」
砂埃が晴れるとそこには
敵の首の根を掴み上げ、立っているルイの姿が
「な、ものども、やってしまうのです」
ルイの周りに禍々しい気が漂う
「…憎い……憎い……魔族が…」
先ほどの奇襲で、ルイから流れ落ちる血が
宙に霧散していく
「うぉぉあぁぁ!!」
周囲の空間が赤く染まる
ヴォルグ達の周囲も僅かに赤く染まる
「これはラドラス家の奥義
無幻血界…は、はやく止めるのです」
魔物達が雄叫びを上げ攻め始める
だが、ルイの周囲の赤く染まった空間が
1部濃くなり、そこから血の刃が生まれ
魔物達に牙を剥ける
攻めいる魔物達が、無情にも斬り捨てられていく
「こ、こんな馬鹿げた力があんな小娘ごときに
いや、あれは……」
ヴォルグは感じた
ルイの背中に赤き竜の存在を
「く、甘く見ていましたね
この軍勢では足りませんか…」
「攻めろ攻めろ!味方を盾にしてでも突っ込めぇ!」
「ここは敵の射程内だ、引くな!攻めろぉ」
魔物達は捨て身の覚悟でルイを討ち取ろうとしている
すると、血界内の空間に赤き文字が浮かび上がる
「…全部……全部…消えてしまえばいい…」
赤き文字が紅蓮の炎に姿を変え
周囲の敵を焼き払う
「ぎゃぁぁ」
「逃げろぉ!」
「ヴォルグ様ぁ!これは退却の‥‥‥
ヴォルグ様!ヴォルグ様はどこにおられる!?」
「消えろ、消えろ、消えろ‥‥‥‥‥‥‥‥」
数多の断末魔と共に、ルイの周囲には灰しか残されていなかった
そして、突然なにかが抜けたように
ルイはその場に倒れ込んだ‥‥‥‥‥
リコレクションチューナー スイ @sui19
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