第8話 ラドラス・アスモデリウス一家の最期

この話は約10年ほど前の話である



ラドラス・アスモデリウスとは

ここ最近、第六魔王候補のツェルネ家を滅ぼし

新 第六魔王候補になったアスモデリウス・ルードの配下がラドラス家である



昔から魔人の血筋でありながら、類のない能力でルードの右腕にまで上り詰める




そんなある日に第三、第四魔王候補が手を組み

人間との大戦争引き起こす



ルードの部下には、希少な予言の力を有するものがおり

戦況を読み取り、人間と魔王候補達を

一網打尽にしようと、少数部隊を編成

僻地にアジトを構え、機を伺った



だがしかし、予言に存在しない人間側の遊撃隊により敗戦

アジトは崩壊、ルードは行方不明になる




その後、魔族達は敗戦

世界の裏側に身を潜める




ルード亡きアスモデリウス一家は弱体化

右腕のラドラス家がアスモデリウス一家を引き継ぐ



だが、現ラドラス家当主

ラドラス・ソーンは類のない能力が認められ右腕になったが

所詮魔人などと罵られ

アスモデリウス一家、第六魔王候補を継ぐ器にあらず

アスモデリウス一家をまとめることに苦戦していた



ラドラス家は個々に芽生えた能力を一子相伝するという能力を持っており


当主は自分の能力だけでなく、先祖代々に渡る個々の能力を扱える




ソーンは個々の能力が目覚めず

しかも、先祖代々の力も使いこなせなかった


そんななか、ソーンは

秘めたる力を持つ娘、ラドラス・ルイに

未来を託すため、当主の座を譲り

そして一子相伝の儀式を執り行うと決める







ラドラス家一同

はルイを連れ、険しい森や山の先にある、儀式を執り行う為の神殿を目指す


「お姉ちゃん、どこに向かってるの?」

そこにはあどけなさが残るルイの姿





そのとなりに、ルイの世話係であり

ラドラス家を支える予言士、メイレンがいた



「お姉ちゃん、また話の続きを聞かせて

時渡りのお姉ちゃんはあの後どうなっちゃうの?」


ルイはこの険しい道のりが

当主を引き継ぐ儀式とは知らずにいた



「続きは帰ってからにしましょう」


メイレンは歩きながら、優しく答える



だがメイレンは気が気でなかった


なにか不穏な予感を感じとっていた





そして一行の最前列を歩くソーンも感じていた


「おかしい、やけに静かすぎる」




そして、霧の立ちこめた森を抜けると


そこには、前入りして安全を確保してる部隊がいるはずだが、その姿が見えない



すぐさま鐘が鳴らされ

一行は警戒態勢をとる





「お嬢様、決して離れぬように」



メイレンは予言士であり、世話係であり、

ルイのボディガードでもある




一行は戦闘態勢のまま、険しい山道を進む





そして落ちればひとたまりもないであろう

崖沿いの道にさしかかろうとしたとき



突然の嵐、鳴り響く雷鳴




「く、こんな時に‥偶然ならよいが……」


ソーンはそっと呟く






「お嬢様、端を歩いてはなりませんよ」



「…うん、でも怖いよお姉ち‥」


惨劇は突然やってくる




ルイに向け、死角から1本の矢が放たれた



メイレンはそれを察知し、矢を迎撃

払い落とした



だが目を離した隙に、ルイの足下が不自然に崩れ落ちる


とっさに崖に捕まるが

崩壊は止まらない





無情にもルイは崩れ落ちた




すぐさまメイレンは崖から飛び降り

ルイを掴み、空にめがけ放り投げた




「後衛隊!お嬢を頼むっ!!」


メイレンは崖下へと落ちていった






メイレンほどの実力者なら、ルイを助けつつ

自身も助かる方法はあったはずだ


一瞬の出来事でなにが起きたかわからなかったが、ルイの目には映っていた




メイレンは腕や足から多量の出血をしていた



自身を犠牲に自分を助けたのだと







そして宙を舞うルイを、後衛隊が掴み

そのまま崖沿いの道を走り抜けた




ようやく神殿近くに到着したルイ達は

父のソーンがいる前衛隊に追いつく



だが、そこには父と側近の部隊しかいなかった




そして前方、神殿前には

見慣れぬ部隊、それとソーンの前に

ルードの右腕を務めていた将の姿が



「く、雷冥のヴォルグ」




「おやおや、出世したら呑気に

こんなお山にピクニックですかな、ラドラス」



「貴様こそ何故ここにいる!

ここは貴様のような薄汚い悪魔が立ち入る所ではないわ!」




「おー恐い、ならばその認められた能力を使って

力ずくで追い出してみますかな」





ヴォルグは右腕の座を奪われ

アスモデリウス家を離反、ラドラス家を恨み

いま復讐を果たそうとしている





「覚悟するんだなヴォルグ

炎血の竜よ、今目覚めん」



ソーンはナイフを取り出し

自身の腕を切りつける


「ルイよ、よく見ておけ

これがラドラス家の戦い方だ」



滴り落ちる血が地面で文字となり、淡く光を放っている


次の瞬間、一瞬にして燃え上がり

意思を持っているかのように敵にめがけ

走るよう燃え広がっていく



「ほぅ、それが人間もどきのお下がりの力ですかな」


炎が敵部隊の半数を焼き払っていく




ルイは初めて、戦っている父の姿を見た


だが少し、不慣れなのか

炎の扱いに手こずっているようにも見えた




敵部隊の残りがソーンの背後から奇襲を仕掛ける



「お父様後ろ!」



ソーンはルイの声に反応し

振り向きざまに血の滴る腕を振る


「ルイ、これがおじい様の力だ」


振り払った血が刃となり敵を切り裂く




「厄介な半人半魔ですねぇ

魔族と同じように個々に別々の力を持ちながら

人間のように遺伝する力を合わせ持つ

普通の半人半魔なら半端な2つの力を持つが

ラドラス家が遺伝していく力は

[力を引き継ぐ力]

それによって、純粋な魔族に引けも劣らぬ

初代ラドラスが持つ竜の力と

代々の力を有するとは

早く滅ぼさねば魔王の座は危ういですね」



気付けば部隊は壊滅、ヴォルグと側近のみとなっていた


「ハァハァ、さぁヴォルグ、覚悟はできたか?」


ソーンは息を切らしながらヴォルグを追い詰める



「ほんとうほんとうに残念ですねぇ

こんなに力に恵まれながら、使いこなせない出来損ないなんてねぇ

私が手を下すまでもないですよ」


ヴォルグの側近がソーンをに襲いかかる



ソーンは炎と血の刃で応戦するが間に合っていない

無理に合わせ出した刃や、コントロールしきれていない炎は

相手の攻撃で打ち消されてる



「その程度で魔王候補とは聞いて呆れるわ」



ソーンは手も足も出ない状況だ







「さてさて、危険な芽は摘んでおきましょう」


ヴォルグはルイに向け、歩みを始める




「やめろヴォルグ!娘には手を出させんぞ!」



「お前によそ見をしているひまはないぞ」



ヴォルグの側近はさらに攻めたてる







ヴォルグは異形な刀を取り出し


ルイに目がけ振り下ろす



ルイは恐怖に目を閉じる




「ルイィ!」






その瞬間、とてつもない衝撃波が体を駆け巡る






一瞬の沈黙、恐る恐る目を開ける



するとそこに、ルイと共に来た後衛隊の1人が立ち塞がっている




体の一部が消し飛びながらも、ヴォルグの攻撃を体で受け止めていた






「下っ端のモブ勢のくせにこしゃくな」






「こんな私ですが、ソーン様に拾われた恩

メイレン様に託された使命

お嬢様をお守りします、早くお嬢様を神殿へ!」


他の後衛隊がルイを抱きかかえ

神殿に向かって走り出す




「どいつもこいつも私の邪魔をしやがってぇぇ!!」


ヴォルグの魔力が膨れ上がるのを感じる







「や、やだよぉ みんな死んじゃやだよぉ」





ルイはもう涙で前が見えない







爆ぜる衝撃、鳴り止まぬ戦闘音









突然、ルイは地面に転がり落ちる




涙を拭い、前を見ると、目前に神殿の入口が



振り返れば、返り血に染まるヴォルグの姿が


「鬼ごっこはおしまいですよ」





すかさずソーンが割って入る


「手は出させんと言っただろう!」




ヴォルグの側近の攻撃を受けながらも

ソーンはルイの盾になる



「ルイ、早く中に!」



「やだよぉ!私もパパと一緒に戦うぅ」





 

無情にもヴォルグの攻撃の衝撃により

ルイは吹き飛ばされ神殿の中に




ヴォルグの側近がルイを狙い、飛びかかるが

神殿の入口で強力な結界に弾かれた





「すまない、身勝手なパパで‥辛い思いをさせるな」




「パパぁ パパぁー!」






神殿の扉は閉まり


ルイへの儀式が始まる






「やってしまいましたねぇ

 早急に増援を呼び

 神殿を取り囲みなさい

 ラドラスを根絶やしする好機ですよ」



ヴォルグは儀式の阻止に失敗したが

力を使いこなす前に討ち取る為

手筈を整える



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