第4話 生き延びる術

あの戦いから3日ほど経っただろう


亜真斗は森の中を当てもなく

歩いては休んでを繰り返し

道中、川の水や果物で餓えを凌いでいる


魔族に怯えながら




すると拓けた所に出た


間違いない、ここは3日前の戦場

デポル村だった



亜真斗は無意識の内に、安全が確認できている同じ所を

ぐるぐると回っていただけだった



村にはもう人の気も魔の気もなかった




亜真斗は正直もう、餓えも限界だったこともあり

村を物色し始める



そして、自分が召喚されたテントを見つけた



そこに転がっているビニール袋


その中身は亜真斗が召喚される前に

コンビニで買い込んだお酒とおつまみが



「一緒に召喚されたんだな」






心許ないが、食料を手に入れた亜真斗は

また当てもなく歩き始めた





だが今回は前回と違う、お酒という思考を狂わす代物を手にしている



ひとまず大きな町を目指し、整備された道を

恐れなく突き進んだ





すると道中、道外れに小さな建物が


砦にも見える建物




亜真斗は近くに身を潜めた



ここにいるのは人か魔物かを知るために



人なら助けを、魔物なら逃げよう


安直な考えである



だが今の亜真斗に冷静な考えは出来なかった


程よく酔いが回っていたからだ




亜真斗は集中する


人か魔物か




すると幻覚だろうか、建物の壁越しに影が見え始めた




だがそれは人らしくない形をしている



亜真斗は確かめるために建物に近づく





そして裏手に回り込むと窓を見つけた


影は全部で3つ



1つはすぐ目の前の部屋に存在している


恐る恐る覗き込むと



案の定、そこには少し大きいが

背中の曲がったゴブリンらしき魔物


そしてたくさんの食料が



亜真斗は決断する



魔物を倒して食料を得ると




冷静さを欠いてはいたが


力なくしては生きてはいけない

今死ぬか、後で死ぬかだ


表に回り込み扉から建物に入る




亜真斗には敵の位置が見えている



死角が多い分、亜真斗にとっては有利である



足音を立てず、こっそり近づく




通路の曲がり角、すぐ近くにゴブリンの気配




ゴブリンが背中を向けているのを確認し


背後から一刺し



ゴブリンは音も立てず崩れ落ちる



「へ、俺だってやりゃできるんよ」


そのまま亜真斗は通路を突き進む



あと影は2つ


もう一匹のゴブリンも死角の近くに立っている


さきほどと同じように背後から一刺し



意気揚々と進む




そして最後は、最初に窓から見た大きなゴブリン


部屋に陣取ってる為に、なかなか近づきにくい



それでも自信をつけた亜真斗は


机などの障害物に隠れながら近づく




だが、亜真斗は探知スキルはあっても

気配を消すスキルは持ち合わせていない




ボスゴブリンがこちらに気づいた


亜真斗はボスゴブリン目がけて走り出した


短剣を突き立て「うぉぉぉりゃゃぁぁー」



ボスゴブリンは振り向きざまに腕を振り下ろす



偶然にも、その腕を躱し胸元に短剣を突き立てた




亜真斗に笑みがこぼれる




だがしかし、ボスゴブリンは亜真斗を振り払った


亜真斗は吹き飛び、机に激突した




浅かった...短剣では仕留めきれなかった





ボスゴブリンは短剣を引き抜き、投げ捨てた


そして亜真斗に向かって歩みを始めた



亜真斗は椅子などを投げて応戦するが

ボスゴブリンの歩みは止まらない



亜真斗には為す術がない、万事休す



すると遠くからゴブリンの叫び声が


ボスゴブリンは歩みを止めた



すると通路から、青白い光の筋が

ボスゴブリンをかすめる



「やっぱりただの素人か、ボロボロじゃない」


そう言いながら、長い赤髪を括り上げている女性と

その後ろから、眼鏡が似合う、地味と爽やかが両立している青年が部屋に入ってきた



「仕留めるならちゃんと仕留めなさいよね」


おそらく通路で亜真斗が奇襲したゴブリンのことだろう


そしてその女性は、金色の装飾銃を片手に

ボスゴブリンに向かって駆け出した



ボスゴブリンの長い腕が鞭のようにしなる


それを華麗に躱し、至近距離で撃ち込む

撃ち込む撃ち込む


そして、華麗に跳躍しながら

脳天から至近距離で撃ち込む



亜真斗は開いた口が塞がらない



そしてボスゴブリンは崩れ去った




すると眼鏡の彼が亜真斗に手を差し伸べる


「大丈夫?よく1人でこんな拠点に押し入ったよね」


亜真斗は手を取り、体を引きずり起こす


「生きるためには仕方なかった

敵も3匹しかいなかったし」



眼鏡の彼はキョトンとした



すると赤髪の彼女は食料を鞄に詰めながら

「さぁ早く増援が来る前にとんずらするわよ」



だが、亜真斗は感じた


多数の敵が建物に入ってきていることに



「だめだ、敵がいっぱいいる」


「あんた、分かんの?」




すると眼鏡の彼が、少し短めの曲剣を2本ぬき

「仕方ない僕が...」


その瞬間、窓めがけて赤髪の彼女が

引き金を引く



すると、とてつもなく大きなエネルギー弾が

壁もろとも吹き飛ばす


「さぁ、走るわよ」


にこやかな笑顔で彼女は言った




魔の気が急速に近づいているのがわかる


眼鏡の彼は亜真斗を担ぎながら

「無駄に力を使うなって言ったじゃないか!」

彼女に文句を言いながら共に脱出した






「もう大丈夫だと思いますよ」

亜真斗は魔の気がないことを伝えた



「それは君の能力かなにかかい?」


「僕は亜真斗、立花亜真斗

多分、そうだと思います」



「あぁごめん、自己紹介がまだだったね

僕は東雲弦治[シノノメゲンジ]」

「それで彼女は...」


割り込むように彼女は言う

「トーコよ、自己紹介ぐらい自分でさせなさいよ」



亜真斗は安堵からか、突然眠りだした

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