第3話 序章、勇者の使命

立花亜真斗 21才

平凡な自分で歩む、平凡な人生に嫌気がさしだした頃だ


仕事終わり、コンビニでたくさんの酒を買い

家に向かって歩いている



そんな中、突然足元に大きな魔方陣が


だれかのいたずらか?!

いや、辺りも暗くなった今、魔方陣は不気味に光を放っている


なにかが起きる、覚悟し亜真斗は目を閉じた



次に目を開けた時にはもう亜真斗の視界には光が差し

それを遮る影


亜真斗は一瞬にして悟った


異世界に召喚されたんだと



そして目の前には


小汚い、いや言い過ぎだ、あまりよい環境で生活されていないであろう

ジジイが立っている



少し、口が悪いかもしれないが、僅かながら

いや、異世界に召喚といえばもうちょっとプラス要素があってもいいはず


そんな希望を打ち砕くジジイと質素なテント内での始まり


荒んでも許される気がした



そんなじいさんが話しはじめた


「おぉ、そなたがこの村を救う勇者

よくぞ参られた」


それと同時に取り巻き達が歓喜の声をあげる

「助かったぁ!」「勇者様ぁ!」



亜真斗は冷静に聞く

「待て、勇者ってなんだ、今の状況と何をさせる気か教えてくれよ」



「そうかすまんすまん、勇者は異世界から来たのだ

知らんで無理もないかの、とりあえず場所を移そうかの」


じいさんがそう言うと、少し強面の強そうな男が前に出てきた


「わしの孫、ローグじゃ、勇者をたのんだぞ」


そう言うとじいさんはどこかに行った



「付いてこい」

言われるがままローグに付いていく



テントを出る、そこには村が広がっていた

不規則に立てられた木の家、荷物を運ぶ人々


あまり大きくはない、少し高台に行けば全部見渡せそうな規模の村だ


そして歩きながらローグが言う

「この村はデポル、俺の生まれ育った故郷だ

そしてここは戦争の最前線なんだ」


「戦争?! なにと戦うんですか」


ローグは少し呆れながら言う

「もちろん魔族だよ、お前、本当に勇者か?

その身なり、とても戦いに向いてないな」



もちろん亜真斗には魔族と戦いなんて経験がない

勝手に召喚され、勝手に勇者と呼ばれてるだけだ



だけどもローグは歩みを止めず言う

「正直、あの魔方陣で勇者を呼ぶなんて

俺は最初から信用していないしな

旅の流れ者が持ち込んだ魔方陣に、

信用するじいさまもどうかと思う」


「まぁ愚痴はこのくらいで、

俺は故郷を守りたい、たとえお前が勇者でなくても、ここに存在する限り戦ってもらうからな」


亜真斗にはローグが、頼もしくも恐ろしくも見えた



「とりあえず戦いに必要なものを揃えよう、

まず1番近いのは武器屋かな」


そういって亜真斗とローグは武器屋に入った



「好きなものを選べ、仮にも勇者様なんだからな」


皮肉たっぷりにローグは言った



亜真斗はいろんな武器を見ていると

突然、大きな鐘の音が鳴り響いた



「敵襲ー!敵襲ー!」



すぐにローグは店を飛び出した


亜真斗も追いかけて店を出る


その直後、ものすごい轟音と共に亜真斗は吹き飛ばされた



何が起きたのかわからなかった


周囲にはさきほど見ていた武器が散らばっていて


武器屋には大きな岩がめり込んでいる



「投石だぁ!建物から出ろぉ!!」




一足遅ければ死んでいた


でも亜真斗は無傷ではすまなかった



歩けはするが痛い、左腕は今のところ動かせない



辺りの建物が崩壊していく




前方には魔族達が進行中のようだ


子鬼のような姿、おそらくゴブリン的なやつだろう



そしてカバに見える

間抜け面の動物に跨がるゴブリンが

村の中を走り回りながら弓を撃っている



これが、戦争...



村人達も剣を振るい勇敢に戦っている




亜真斗はひとまず片手で持てそうな短剣を拾い、歩き始めた





すると1匹のゴブリンが亜真斗目がけて走り出した


すかさず短剣を向けるが、押し倒された



幸いにもこのゴブリンは武器を持っていなかったが



抵抗するも、短剣を持つ手は抑えられ


ゴブリンの鋭い爪が目の前まで来ていた




すると目の前を一閃の槍


ゴブリンを突き刺しながら押しのける



「大丈夫か!怪我は!」


そこには息を切らしながら必死に生きる

ただの村人の姿が


「あんた、もしかして勇者様か?」



亜真斗はその場を逃げ出した


痛みでうまく走れなくても、引きずりながらでも、亜真斗は必死に走った




「何が勇者だよ、村人以下の勇者なんて…」






村の広場には数多のゴブリン部隊


その中央にローグの姿が



ローグも片腕を負傷しているようだ




「無茶だ、勝てない」


だが亜真斗には助ける力もなければ勇気もなかった




すると突然、ローグは雄叫びを上げ、鬼のような形相で大きな剣を振り回し

ゴブリンを薙ぎ倒していく


ゴブリン達は怯み、後ずさりしている


そこに村人たちが槍を構え突っ込んでいく



「ローグさん大丈夫ですか!」


「すまないお前達、ところで勇者を見たか?」


「さきほどゴブリンに襲われているところを助けたのですが、どこかに行ってしまいました」


「そうか、すまなかったな」





亜真斗は誰にも見つからないように村を出た


「なんだよ勇者って、なんで俺なんかを呼んだんだよ」



亜真斗は村外れの森の中を、

逃げるようにひたすら歩き続けた

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