12:困った人たち

 フィーベルはシェラルドの腕の中にいる。

 ふてくされた顔をしてそっぽを向いていた。


 先程の失言に落ち込んでいるのだろうかと思ったが、よく見れば耳の縁が赤くなっている。おそらく恥じらいもあるのだろう。


 まさかあのドレス姿をまた見られるとは。


 あまり人前に晒したくないこともあり、シェラルドはあえて横抱きにした。その効果はあったと思う。フィーベルは気付いていなかったが、ちらちらと彼女を見つめる視線を複数見つけた。アンネの後ろでおんぶにだっこしているような姿でいてくれたからこそ、多くの者から声をかけられずに済んだのだ。


 視線があった場所をひと睨みすれば、そそくさと別の場所に移動したり、さっと視線を外される。


「……あの」


 すると急にフィーベルがもごもご口を動かす。


「も、もういいんじゃないですか」

「なにがだ」

「だから、もうこの格好じゃなくても」

「ドレスを見られるのが恥ずかしいだろ」

「この格好も恥ずかしいですっ!」


 耳元で叫ばれてしまう。

 シェラルドは少し顔をしかめた。


 しきりに下ろすように催促されるが、シェラルドは応じなかった。むしろこのような状態だからこそ声をかけられなくて済む。昔からなぜか女性から声をかけられることが多い。強面だなんだと言われることもあるのに、華やかな場に出ればこぞって令嬢たちがやってくる。


 騎士だからか、隊長という肩書があるからか、母が貴族だからなのか、理由は知らない。どう考えても優男のヨヅカの方がモテるであろうに(実際モテているが)、どういうわけかこちらにも声がかかる。


 過去に色仕掛けで迫られたこともある。

 すぐに自分の上着をあげてその場を去った。


 その話を周りにすれば「もったいない!」という非難の声ばかりだったが、正直目のやり場に困るだけだ。それに全く心は動かなかった。……今腕の中にいる少女のドレス姿には、少し心が揺らいだが。


「もう少しくらいいいだろ」

「だから、もう、私は大丈夫です! 見られないようにしますから。なんならシェラルド様の後ろに引っ付くような感じで」

「俺が大丈夫じゃない」


 色々言われるが一言で返す。


 するとその瞳は大きく開かれた。


 少し揺れ、また下がる。

 恥ずかしそうな表情をしていた。


 それを見てほくそ笑んでしまう。


 フィーベルは歳の割に落ち着いており、出会った時から戸惑うことが少ないように感じていた(怖がれはしたが)。花嫁になるための課題を難なくこなし、前日の準備だっててきぱきと動いて行った。ヨヅカに聞けば、急な襲撃にも堂々としており、最初は一人で全部しようとしていたようだ。


 こちらが余計なことを言ったと思えば案外気にせずけろっとしていたり、意を決して抱きしめてみてもただ微笑んで夜もしようと言ってくる。驚かされるのはこちらばかりなのか、と少し悩みそうになった。


 だがどうやら年相応なところもあるらしい。

 そこはやはり女の子だ。


 だからこそからかってしまう。

 もっと困らせるようなことを言ってみたくなる。


 そんなことを言ってしまえば軽く問題になりそうなものだが、今日くらいはいいだろう。どうせ花嫁なのは今だけだ。なら、少しくらい。今のシェラルドはそんな思いでいた。




 会場の入り口につくと、他国の騎士を見つけた。

 隊長クラスの。以前視察で話をしたことがある。


 すぐにフィーベルを下ろし、挨拶をした。


「グラニド殿。お久しぶりです」

「おおシェラルド殿。ここでお会いできるとは。今日はおめでとうございます」


 エリノアへの賛辞だろう。

 側近としてありがたく頂戴する。


「ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません」

「お気になさらず。隣の方は?」

「初めまして。妻のフィーベルです」


 彼女はドレスの裾をもって上品に挨拶をしていた。


 ふてくされていた顔はどこへやら。

 一瞬で微笑んでいる。見事な変わりようだ。


 すると相手も笑顔になる。


「いつの間に結婚を?」

「最近です」

「素敵な方を見つけられたようですね」

「ええ」


 これには本気で同意する。


 花嫁を連れてこい、と言われた時はどうなることかと思ったが、フィーベルに花嫁役を頼んだのは正解だった。フィーベルは素直だ。素直過ぎて少し頭が痛くなるが、純粋だと思う。だからいい。だから素のままで話すこともできる。


 今となっては、彼女以外に花嫁役の適任者はいなかっただろう。


 他愛もない会話で無事に終わる。きちんと挨拶ができるか、紹介ができるか、シェラルドも不安なところがあった。ひとまず終わったことにほっとしていると、フィーベルも大きく息を吐く。


「大丈夫か」

「大丈夫です。緊張してしまって」


 苦笑しながら顔を手で仰いでいる。


 見れば首に汗が流れている。頬も血色がいい。……無駄に色仕掛けをされるより、こちらの方が精神的にくるものがあった。そっと目を逸す。


 と、見覚えのある紫色の頭を見つける。


「! ヴィラ」


 声をかければ、さらさらとした短い髪を持つ女性が振り返った。髪の長さは耳を少し超えるほど。大振りの珊瑚色のイヤリングを揺らしながら、髪と同じ色の大きな瞳を大きくさせる。


「シェラルド! 驚いた。今日は姫様の傍じゃないのかい?」


 彼女はなぜかドレスではなく式服を着ていた。


 魔法兵団の濃い緑を基調とした、いつもの仕事着とは違う、刺繍や飾りが豪勢なものだ。騎士団は目立つ白色の式服に対し、魔法兵団はあまり変わらない。


「シェラルド様、この方は?」


 客人リストに騎士団と魔法兵団、つまりは身内の名は入っていない。だから聞いたのだろう。フィーベルが物珍しそうに彼女を見ている。


 するとヴィラは目を輝かせた。


「この子がフィーベルさん?」

「私のことを知ってるんですか?」

「もちろん! クライヴ殿下から聞いていたんだ。私は魔法兵団で一つの隊を任されているヴィラ・ブルーリア。よろしくね」


 ぶんぶんとフィーベルの手を振り回すように握手する。


 彼女は女性初の隊長でもあり、気さくな性格もあってか、男女問わず誰とでも仲良くなれる。女性で魔法を使うという点でもフィーベルと一緒だ。親近感があるようで、フィーベルも嬉しそうに挨拶をしていた。


「この後、各国の魔法使いや学者の方々と会食があるんだ。フィーベルさんの魔法のことは聞いてる。少しでも役に立つ情報を得られるよう、がんばるね」

「! ありがとうございます」


 今回フィーベルが花嫁になったのは、自身の魔法のことを知るためでもであった。クライヴがおそらくヴィラに頼んだのだろう。


「君に来てもらったらいいかなとも思ったんだけど、けっこうお偉いさんて珍しい人が多くてね」


 苦々しい顔をしながらヴィラが説明する。


 どうやら珍しい魔法使いに対して実験したり、研究しようとする人もいるらしい。フィーベルのように個性魔法だけを使える者はそういない。物珍しさに研究されないよう、今回ヴィラが間に入るという。


 改めてクライヴの采配は的を得ている。


「ああそうだ。一応私の魔法も伝えておこうかな」


 ヴィラがその場から数歩下がる。


風よ踊れウインド・ダンス


 すると身体全体に涼し気な風が吹いてくる。

 風量も抑えているのか、自然の風と同じような心地だった。


 と同時に、フィーベルもドレスも舞う。


「きゃっ!?」


 スカートがふわっと上がり、フィーベルは慌てて押さえた。


 シェラルドは普段起こることのない現象に思わず凝視しそうになるが、慌てて手で目元を隠す。華奢な白い足が太ももまで見えてしまったことは許してほしい。ヨヅカは足派だとか言っていたが、なんとなくその魅力は分かった気がする。


 フィーベルが恐る恐る聞いてくる。


「み、見ました?」

「見てない」


 本当だ。足だけだ。


「えー? 見てないの? せっかくサービスしてあげたのに」

「ヴィラ!」

「あっはははは!」


 豪快に笑われる。


 ヴィラの個性魔法は「風」だ。風力を弱めることも強めることもできる。隊長というだけあって、魔法を繊細に操れるところが、評価されているようだ。


「いいじゃないか。可愛い花嫁さんのスカートがめくれたら見たくなるだろ?」


 その発想自体どうかと思う。


「お前ほんとは男じゃないのか」


 溜息交じりに皮肉をぶつけた。

 ヴィラの隊のメンバーは男だけだ。まさに紅一点。


 魔法兵の中には女性は多くいる。だが同じ隊に女性がいないことで、より男性化してしまっているように思う。本人にはそこそこファンがいるらしいのに、そんなことにも気付いていない。


 自分は周りから女だと思われてないと、笑いながら話されたこともあった。だがそれは間違いだ。現に一番近くにいる者から相談事を持ち込まれたことがある。


「やだなぁ。男たちの願いを叶えてあげてるだけだよ」


 器用に片目を閉じて決め顔をされる。

 思わず半眼になった。


「いらん」

「えーひどーい」

「ヴィラ隊長っ!」


 するとどこからか彼女を呼ぶ声が聞こえる。

 同じく魔法兵団の式服を着た背の高い青年がやってくる。


 いつもヴィラの隣にいる、副隊長だ。


「どこにいたんですかっ! もう皆さん集まってます!」

「え、そうなの? ごめんごめん」


 どうやら客人を待たせているらしく、その青年と一緒に駆け出す。

 その途中、器用に再度片目を閉じた。


「じゃ、また会おうね~!」


 まるで風、いや嵐のようだ。

 シェラルドは少しぐったりした。


 だがフィーベルはにこにこしている。

 どうやら彼女を気に入ったらしい。


「楽しい方ですね」

「あいつの世話はしんどいぞ」


 ヨヅカと同じく同期なので扱いは分かっているつもりなのだが、人を豪快にかき回す。本当に風のように。だからこそ話に付き合うと結構大変だ。




 その後も立て続けに挨拶をして回る。

 大体の挨拶が終われば、しばらく二人で会場を見て回った。


 途中エリノアは大丈夫か気になり、そちらに目を向ける。


 見ればカインと一緒にいた。二人とも楽し気に話している。傍にいるヨヅカと目が合い、微笑みながら頷かれる。なんとなく、こちらは気にするな、と言っているようにも見えた。


 しばらく進めば、ダンスを楽しんでいる人達で賑わっていた。

 近くで演奏家たちが優雅な曲を演奏している。


「踊るか?」


 フィーベルも一生懸命に練習してくれたのだ。

 一緒に練習はできなかったが、さすがに本番まで無下にはできない。


 すると彼女の顔がぱっと明るくなる。


 どういう意図でそんな表情になったか分からないが、シェラルドも思わず顔が緩んでしまう。手を差し出せば、フィーベルがその手を取ろうとしてくれた。


「あ! シェラ!」


 ……が、邪魔が入る。


「げ」


 眉を寄せ、素で声を出してしまった。


 こちらを見つけてやってきたのは、従姉妹のアナンとカレンの双子の姉妹だ。二人とも赤毛の長い髪をくるくるに巻いており、この式典に負けないくらい華やかな格好をしている。歳は両者ともに二十歳。強気な猫目の瞳は深緑色、身長は低いが、美女の類に入る。


 ちらちらと彼女たちを見ている男性たちもいた。


 彼女たちは母であるルマンダの妹の娘で、よく屋敷にも遊びに来る。職業は仕立て屋だ。こう見えて服を作るセンスが飛びぬけているらしく、国でもけっこう有名だったりする。


 最も、かなりの高級店なので主なお客様は貴族だ。その腕を買われたこともあり、今回式典に参加できたのだろう。おそらくこの式典に参加している客人のドレスも作っているはずだ。


 二人とも社交的だが、シェラルドはこの姉妹を苦手としていた。


「げ、ってなぁに? 相変わらず失礼ねぇ」

「こんな美女に声を駆けられたら、喜んで駆け寄ってくれなくちゃ」

「死んでも御免だ」


 遠慮ない言い方であるにも関わらず、姉妹は面白げにふふふと笑う。

 薔薇の刺繍が施された扇を手にしており、それも一緒に揺れる。


「そういえばルカは?」

「来てるんじゃないの?」

「さぁな」


 この姉妹は姉であるルカととても仲が良い。


 確かに姉の名前も客人リストにあった。ルカは色んなことを仕事としている。デザインをしていたり、宝石を扱っていたり、ルマンダの影響で芸術や文化関係の仕事をしていたり、その幅は広い。姉ではあるが、正直何をしているのか全く分からない。


「なーんだつまんないの」

「ね、その子誰なの?」


 アナンがいつの間にかフィーベルの横にいた。


 無遠慮にほっぺをつんつんしたり、髪に触れたり、ドレスの生地を確認するかのように色んな箇所を触っている。フィーベルはシェラルドの客人と分かってか、されるがままになっていた。


「あっ、あの……ひゃっ!」


 あろうことか胸の膨らみにまで触れる。

 姉妹は感心するように頷き合った。


「すごーい本物」

「いい身体してるね。着やせするタイプかー」

「おいっ!」


 一瞬固まりかけるが、すぐに二人の腕を引っ張る。

 少々手荒になったが従姉妹だからいいだろう。


 すると両者とも眉を寄せて睨んでくる。


「ちょっと、なにするの」

「痛いじゃない」

「無遠慮に触るなっ!」

「「シェラのものだから?」」


 声が揃う。息がぴったりなのはさすが双子か。

 にやにやとこちらを見て笑っていた。


「なっ、」

「ルマンダ様に聞いたよ。花嫁さんでしょ?」

「可愛いじゃん。ねぇあなた、シェラのどこがいいの?」


 人をおもちゃのように遊んでおいて、遠慮なく質問している。フィーベルは慌てて答えようとした。が、その前に二人は顔を合わせて笑い合っていた。


「でもシェラって男としては未熟だよねー」

「つまんないよねー」

「え、え?」


 フィーベルは訳も分からず双子を交互に見る。


 だがシェラルドはまた始まった、と呆れた。

 この言い方はいつものことだ。


 この姉妹は器量が良く可愛らしい。

 それは認めよう。


 だが、かなり手が早い。


「だって新婚でしょう? 色っぽい話とかないの?」

「男としての魅力全くないんだよね。お堅いし」

「お前らと一緒にするな」


 平坦な口調になる。


 あれこれ手を出す奴らと一緒にされたくない。

 もし仮に称賛されても全く嬉しくない。


 だが二人は意外そうな顔をする。


「女の一番の栄養は色恋の話よ?」

「そうしてもっと美しくなれるの」

「お前らの場合は見境がなさすぎる」


 しかもストライクゾーンがかなり広い。上から下まで選り取り見取り。相手からすれば、美女に誘われたら断れないだろう。むしろ逃げてくれと心底思うが。


 急に嫌な予感がし、小声で聞く。


「まさか、誰か誘ってないだろうな」


 二人はにっこり笑った。

 綺麗に声が揃う。


「「この後会う」」

「帰れ」


 秒でツッコむ。


 何のために来たのか。ここは男女の出会いの場じゃない。王女であるエリノアの誕生日を祝う日でもある。それなのに自分の欲にまみえるようなことをするとは。


 今日は各国の客人も来ている。どうかこの双子の毒に侵されないように祈る。だが騎士団の中には飢えた奴もいる。案外餌食になっているかもしれない。


 するとむっとされる。


「別にいいじゃない。そっちこそどうなのよ」

「全然進んでなさそうだし、どうせキスもしてないんでしょ?」

「っ、だからお前らに関係な」

「――シェラルド様は、」


 ずっと静かだった隣から少し大きめの声が聞こえる。

 これにはアナンとカレンも顔を向けた。


「シェラルド様は、優しいです。優しく私を抱いてくれます!」

「「え」」

「……は、」


 思わず固まる。


 いつ、どこで、なぜそうなってる。

 だがそんなシェラルドをよそに、双子は満面の笑みでフィーベルに近寄った。


「え!? え!? そうなの?」

「どんな感じなの? 夜になるとやっぱり変わる!? 男になる!?」

 

 これ以上はさすがによくない。


 声が大きすぎたせいでまた周りからなんだなんだ、という目で見られる。急いでフィーベルの腕を取り、その場を駆けだす。背後から「ちょっと!」「待ってよー!」と声が聞こえるが、二人とも運動はあまり得意ではない。特にこの人混みだ。上手く紛れ込めば平気だろう。


 案の定、思ったより早く姿をくらますことができた。


 追って来ないことにほっとしたが、問題はフィーベルだ。嘘でもなんであんなことが言えたのか。問いただそうと口を開きながら彼女を見る。


 が、ぎょっとした。


 フィーベルの身体は左右にふらふら揺れていた。

 眠いのか目がとろんとしており、今にも夢の中に行きそうだ。


 よく見れば、右手に小さい空のグラスを持っている。


「フィーベル、それ」

「? これ、ですか? もらったんです」


 今までにないほどに楽しそうに笑われる。

 思わず見惚れそうになるが、そうじゃない。


 慌てて持っていたグラスを取り上げた。


 「ああ、」とフィーベルが取り返そうとするが、身長はこちらの方が高い。どうにか抑えつつグラスを嗅げば、甘い香りとかすかに酒の匂いがした。


 料理と一緒に提供されているもののようだ。料理を運ぶ使用人が持つトレイの上にも、同じグラスが並んでいた。匂いからして果物のお酒だろう。そこまで強くはないと思うが、フィーベルはアルコールに弱いことを知る。


 先程の発言はこの酒の力が大きかったようだ。


 双子と言い合っている間、フィーベルは静かだった。その間に使用人が気を遣って渡したのかもしれない。若干ほっとする。素であんなことを言われたらさすがに心臓が痛くなる。


 そうしている間にもフィーベルの身体がぐらっと揺れる。慌てて支えるが、そのまま倒れ込んでしまう。目は辛うじてまだ開いていたが、動けそうになかったので、横抱きにした。


 すると今度はすんなり首に腕を回してくる。

 そのままこちらに全体重を預けてきた。


(……さっきと大違いだな)


 駄々をこねる子供のようだったのに、今は甘えるように、身体を密着させてくる。少し心がざわめきそうになるが、無心を貫く。本当はずっと無心を貫いている。でないとこんなことはできない。


 無防備な寝顔がこちらに向く。

 少しだけ口を開けて、寝息を立てていた。


 シェラルドはその場から移動する。


 夜風に当たらせるか、どこかの部屋で休むか考える。アンネを探した方がいいかもしれない。フィーベルのことを一番よく理解しているし、傍にいてもらった方がいいだろう。


 すると口がゆっくり動く。


「優しく……抱きしめて……くれました……」


 もしかして、それを言いたかったのか。


 確かに二人で何かしたことといえば、それしか考えられない。言い間違いだとしても、だいぶ意味合いが変わる。


 つくづく驚かせることをする少女だ。

 

 だが、あの言葉を放ったフィーベルは、どこか気恥ずかしそうに、けれど堂々としていた。散々ひどいことを言ってきた双子から、助けようとしてくれたのかもしれない。


 シェラルドは少しだけ声を出して笑ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る