08:心の内

 フィーベルはルマンダと一緒に歩いていた。


 歩いている最中は特に何も言われず、ちらっと顔を見ても無表情だ。シェラルドから事前にルマンダのことは聞いていた。いつも鉄仮面で何を考えているのか分からないらしい。確かに綺麗な人ではあるが、感情が読めない。


 別れ際にシェラルドが伝えようとしてくれたことを思い出す。


『頼んだ』


 と言われた気がした。


 ルマンダと二人きりになってしまったので、シェラルドに助けを求めることはできない。普通ならここで不安になるんだろうが、フィーベルは少し嬉しかった。頼りにしてもらえるということは、信頼してくれている証しでもあるから。


「――ねぇ」

「は、はい」


 足が止まるので、フィーベルも止まる。

 正面で向き合うような形になり、また背筋を伸ばした。


「あなたは、本物の花嫁? それとも偽物?」


 無表情のままで聞かれる。そこには何の感情もなかった。動揺しそうになるが、ぐっと堪える。すぐバレルわけにはいかない。


 するとルマンダは言葉を続ける。


「でもそんなこと、どうでもいいの」

「……え?」


 予想外の言葉にぽかんとする。

 相手は変わらないままだ。


「一週間で花嫁を探す方が難しいわ。それに、花嫁が見つかっても、あの子のことだからすぐに結婚する気はないだろうし」


 確かに無茶な話だとは思った。が、まさかそこまで予想した上で連れてこいと言ったとは。さすが母親、というべきところだろうか。シェラルドのことをよく分かっている。


 ルマンダはゆっくり口を動かした。


「少しだけ、私の話に付き合ってくれる?」


 フィーベルは頷いた。


「今回花嫁を用意するように言ったのは、二つ理由があるの。一つは早く結婚してほしいから。仕事熱心なのはいいことだけど、一人で全て背負い込む必要はないと思っているわ」


 薄々気付いていたが、どうやらシェラルドは過度の仕事人間のようだ。最初花嫁の話を断った時も、仕事に生涯を捧げる、と言っていた。確かにシェラルドは仕事を率先してやろうとする。それは自分のためというより、相手のためだ。


 昨日も上司に仕事を丸投げされたと怒っていたが、それでもちゃんとやり遂げていた。責任感が強いのだろう。立派だが、身体が大丈夫か心配になる。


「もう一つは、シラの身分のこと」


 シラ、というのはシェラルドの愛称のようだ。

 ヨヅカはシェラと呼んでいるが、こちらの方が可愛らしい。


 ルマンダはシェラルドの今の位置について話してくれる。貴族の娘であるルマンダは、平民の学者と結婚した。本来ならば夫の家庭に入るのが普通だ。だが、夫は学者なのでいつも色んな国を回っているらしく、今は実家の屋敷で暮らしているらしい。ルマンダ自身は文化方面に力を入れているようだ。歌や演劇がさらに広まるよう援助したり、講演をしたり、各地や各国で交流を広げる仕事をしていいるらしい。


 侯爵家だからかそれなりに名が知れ渡っており、ルマンダは今も実家で暮らしている。そのため、結婚してからも注目されることの方が多いらしい。そして、それは子供達にも影響を与えているようだ。


「シラは自分の意志で騎士になって、側近を任せてもらえるほど立派になったわ。家のコネじゃないか、なんて噂が流れたこともあったけど、黙々と仕事をこなして成果を出した」


 話しながらルマンダの表情が緩くなる。

 息子を愛おしく思う母親そのものだ。


「だけど成果を出せば出すほど、より周りは注目してくる。シラ宛にたくさんの見合い写真が届くの。社交界に行けば彼を狙う令嬢ばかり。どうにかして家同士の絆を強くしようと、色仕掛けで迫ってくる人もいたわ」

「それは、すごいですね」

「もちろんシラは突っぱねてたけどね」

「……それも、すごいですね」


 客人の女性たちを見ても綺麗な人ばかり。社交界の令嬢たちなんて、もっと綺麗なんじゃないだろうか。そんな人達から攻められたらすぐに落ちてしまいそうになるが、シェラルドは特に動揺することもなくあしらったらしい。すごい。


 ルマンダはそんなフィーベルを見て笑う。


「だからどんな花嫁を連れてくるか気になっていたの。あの子、あまり女性のこと好きじゃないから」


 言いながら頭の先から足先まで見られる。

 慌てて背筋を伸ばした。


「クライヴ殿下が用意して下さると聞いていたけど、こんなにも素敵な子だったなんて。あなたなら安心して任せられそう」

「あ、ありがとうございます」


 褒められたのでお礼を伝える。どうやら花嫁として合格のようだ。それだけでほっとした。推薦してくれたクライヴの顔に泥を塗らずに済んだし、シェラルドの横に並んでもいいのだと思えた。


「ねぇ。あなたにとってシラはどんな人かしら」

「どんな……」


 何を聞かれても答えられるよう、アンネと一緒に考えてきた。この質問に対しては特に考えていなかったのだが、きっとルマンダは、偽りの言葉は聞きたくないだろう。


 フィーベルは今浮かんだ言葉を口に出す。


「とてもいい方です。私にも優しく、時に厳しく色んなことを教えて下さいます。あと、とても仕事熱心で、熱心すぎて、私も身体が心配だなって思うことがあります。たくさんの方に慕われているし、とても素敵な方だと思います」

「そう」


 嬉しそうだった。

 その表情に、こちらも嬉しくなる。


 ルマンダは少し迷うように聞いてきた。


「ねぇ。あなたはこれからも、シラの傍にいてくれる?」

「……え?」

「この際花嫁が本物かそうじゃないかはどうでもいいの。さっきも言ったけど、ああ見えてシラは女性に注目される。私に似て容姿はいいし。ちょっと顔が怖いとも言われるけど」

「確かに、怒った時は怖いです」


 流れで言葉が出てしまう。はっとして慌てて口を手で隠す。だが相手は笑ったままだ。どうやら共感したことで笑ってくれたらしい。


 そして穏やかな顔になる。


「花嫁がいれば、令嬢達も大人しくしてくれる。そしてシラも、仕事に集中できる」

「……もしかして、シェラルド様のために?」


 はにかみながら頷く。


 それだけで、どれだけシェラルドが愛されているのかが分かった。結婚をしてほしいのも、花嫁を用意してほしいのも、彼の未来を応援しているからだ。


 フィーベルは勢いよく伝える。


「私でよければ。クライヴ殿下とシェラルド様のおかげで、今があると思っています。とても感謝しているんです。ですから、私でよければ、傍にいます」


 この場所を与えてくれたのはクライヴだ。そして、今まで知らなかったことを教えてくれているのはシェラルドだ。昨日も城の人達とたくさんお話できて楽しかった。自分だけの世界は狭い。だけど色んな人と接することで、また道は広がる。


「あ、でも、シェラルド様がいいかどうか」


 フィーベルは苦笑した。


 花嫁でいるのは今日だけだ。今後はどうなるか分からない。シェラルドはしなくていい、と言うかもしれない。それならお役目御免だ。


「――それについては問題ないよ」


 急に声が聞こえて見れば、クライヴの姿があった。

 傍にはいつものようにマサキを連れている。


 今日のクライヴは王子として礼服を着ていた。全体的に青、紋章や装飾は金だ。シェラルドたちが着ていたものより落ち着いているように見えるが、いい生地を使っているのだろう。深い青色の生地はあまり見たことがなく、上質なものだった。クライヴの瞳とよく合っている。


 ルマンダはすっと頭を下げ、挨拶をする。


「クライヴ殿下、どうしてここに」


 フィーベルはいきなりの主人の登場に驚いた。

 いつものように笑顔を向けてくれる。


「たまたま話が聞こえたから、少し聞いていたんだ。大事な二人のことだしね。フィー、ドレスよく似合うよ」

「ありがとうございます。シェラルド様が選んでくれたんです」

「ああそれで。彼が選びそうだ」


 クライヴはちらっとルマンダを見る。

 そしてまたフィーベルに顔を向けた。


「さっきの話だけど、シェラルドのことなら大丈夫だよ。僕から伝える」

「え、でも」

「シェラルドが働き過ぎているのは僕も感じていたんだ。だからヨヅカにも側近になるよう頼んだ。休むよう伝えているんだけど、言うことを聞いてくれなくてね。そんな彼を止めてくれる人も必要だと思っていたから。その役目をフィーがやってくれるなら、僕も安心して任せられるな」


 側近を二人にしたのはシェラルドのためでもあったらしい。クライヴも苦労していることをする。そんな風に言われては、こちらはやる気を出すばかりだ。ガラクには色々と教えてもらった。ハグだってなんだかんだしてくれたし、今後も自分にできることをしていきたい。もっと休んでもらわなければ。


 元々花嫁をやる意志もある。クライヴとシェラルドと、そしてルマンダのためなら喜んでその役目を全うしたい。フィーベルは力強く答えた。


「私でよければ、喜んで!」

「シェラルドにはまた僕から言うから。とりあえず今日、よろしくね」

「はい」

「じゃあ僕はルマンダ夫人とお話があるから。それにそろそろ時間でしょ?」

「わ、ほんとだ」


 壁にかかっている大きい時計を見れば、もうすぐ始まりそうだ。小走りで行かなければ間に合わないだろう。フィーベルは「それでは」と頭を下げ、その場を駆けだした。




 フィーベルがいなくなってから、ルマンダは静かに王子を見る。


「とても純粋なお嬢さんのようですね」

「ええ」

「些か……疑うことを知らないようにも見えます」


 クライヴはルマンダをちらっと見る。

 口元は笑っているが、目は笑っていない。


「彼女は喜んでやってくれる。彼のためにもなるし、あなたにとっても良いことなのでは?」

「確かに初めはそうでした。ですが、あんなにも素直な子にお願いするのは、少し胸が痛みます」


 フィーベルがどんな子なのかはすぐに分かった。真っ直ぐで、素直で、こちらの言葉をそのまま受け止めてくれる。とても分かりやすい。本物ではなく、仮の花嫁であることもすぐに分かった。元々期待もしていなかったが、思ったよりいい子だ。


 それにこちらがお願いしたら、すんなり引き受けてくれた。嬉しい反面、彼女に悪いことをしていると思ったのだ。彼女は自分のことではなく、こちらのことを思ってやろうとしてくれている。


「それに、シラはきっと断るでしょう」


 フィーベルが心配していたように、いくらフィーベルがいいと言ったところで、シェラルドが了承しなければ成立しない。あんなにも素直な子であると、逆にお願いしづらい。シェラルドもそう感じるはずだ。彼女のためにも、断るだろうと思った。


 クライヴはあっさりと言う。


「心配しなくても、シェラルドは断りませんよ」

「……?」

「これはフィーのためでもあるんです。だから絶対、断らない」


 強い口調のクライヴに、ルマンダはただ黙っていた。

 珍しく相手は真面目な表情をしている。


「仮でも夫婦であれば、二人を守ることができる」


 遠い目をしていた。珍しい表情だ。その瞳には何が映っているのか、それは本人にしか分からない。ルマンダは改めて、王子の責務の重さを悟った。







「! シェラルド様」


 駆け足で向かえばばったり会う。

 シェラルドは焦った顔になっていた。


「フィーベル、母から何を」

「そんなことより時間ないですよ。もうすぐ始まります」


 すぐに腕を取り、シェラルドと共に走る。

 慌てたように「おい」と言われるが、無視をした。


 走りながらもシェラルドはしつこく聞いてくる。


「何か言われたんだろう。何の話をしたんだ」

「特に何も。あ、でもシェラルド様のことを心配していました」

「心配? 結婚のことか」

「ただの心配です」


 フィーベルは思い出しながら少し笑ってしまう。

 ルマンダを見れば一目瞭然だ。息子思いのいいお母さんだと思った。


 だが相手は眉を寄せる。


「心配をかけたことなんてない」


 シェラルドらしい返答だ。

 騎士としても優秀らしいし、確かになさそうだとは思った。


 フィーベルは苦笑する。


「親というのは、いくつになっても子供を心配するものなんですよ」

「お前親になったことないだろ」

「そ、それはそうですけど、でも、見れば分かります。本当にシェラルド様のこと愛してるんだなぁって」

「っ、母に限って」

「そんなこと言わないであげて下さい。私には親がいなかったから、むしろ羨ましいです」


 するとシェラルドは口を閉じた。

 気を遣ってくれたのが分かった。


 フィーベルは気にしていなかった。物心つく頃には親がいなかったのだ。親戚に預けられて育ったが、いつも一人だった。小さい頃からそうなので、今ではもう慣れている。だから思わず羨ましいと言ってしまった。言った後で、こんなところでする話でもなかったと反省する。


 シェラルドの視線が、痛かった。


「気にしないでください。もう過去のことですし、私も特に何も思っていないんです。そんな態度をされるよりは、笑ってもらった方が」

「笑い話ではないだろ」

「……そう、ですけど、察して下さい。シェラルド様、女性の扱いが下手なんですね」

「おい」


 少し不機嫌な声になる。

 フィーベルは笑っておいた。


 するとそっと頭に手が乗る。

 何度か撫でてくれた。


「今は俺がいる」


 呟くような低い声だが、なんだかあったかい。

 フィーベルは「そうですね」と自然に言葉が出た。


「……いや、俺だけじゃなくて、殿下やアンネ殿も」

「? はい」


 急になぜか弁解されたが、頷いておいた。


 そう、今は一人じゃない。周りにたくさんの人がいる。だからいいのだ。寂しくはない。それにシェラルドが傍にいてくれて、寂しくなくなってきた気がする。傍にいてほしいとルマンダに頼まれたが、傍にいることができて嬉しいのは、自分の方かもしれないと少し思った。




 会場に入れば、全てが輝いて見える。


 飾りつけのお手伝いはしたが、灯りがあるとこんなにも綺麗になるのか。大きなテーブルの上に真っ白なテーブルクロスが敷かれており、その上にたくさんの豪華な料理が並んでいる。


 客人達がワインを片手に話し込んでいたり、本当に人が多い。話し声まで聞こえなくても、耳元がずっとざわざわしていた。演奏家たちも呼んでいるようで、その傍ではダンスを楽しんでいる人達もいる。


「フィーベル」


 呼ばれて見れば横にシェラルドが並ぶ。

 腕を曲げて手を添えるように指示を出された。


 そっと腕に触れ、一緒に会場を見て回る。

 すると演奏の曲が急に変わる。談笑していた人達も静かになった。


 曲に合わせて歩いてきたのは、エリノアだ。

 

 今日も美しく着飾っていた。淡いピンク色のドレスには所々レースやリボンがついている。今年で十四でまだ若いが、その風格は王女そのものだった。フィーベルの前で見せた子供らしい無邪気な表情とは違い、大人顔負けに静かに微笑んでいる。


 頭の上にはプラチナのティアラをつけており、耳元と首元にはピンクダイヤモンドの宝石をつけている。薄っすらと化粧もしており、大人びた印象があった。


 息を吸い、よく通る声で挨拶をする。


「私の誕生祭にご出席下さり、誠にありがとうございます。この時間が皆さんにとって有意義な時間でありますようにと、お祈り申し上げますわ」


 大勢の客人達が拍手をした。大きい喝采だ。


 エリノアの前には長蛇の列になっていた。挨拶をする順番は決まっているものの、みんなエリノアと話したいのだろう。すでに並んで待っていた。


 自分たちの番が来て、フィーベルもドレスの裾を持って挨拶しようとする。が、エリノアの方が早かった。すぐに手を振り「挨拶はいらないわ」と伝えてくる。


「あなたのことはもう知ってるもの」

「お誕生日おめでとうございます。エリノア殿下」

「前よりはマシな格好ね。綺麗じゃないこともないわよ」

「ありがとうございます。エリノア殿下は今日もお美しいです」

「ま、まぁね」


 エリノアはくるくるの髪を手でいじる。

 少しだけ嬉しそうな表情だった。


 少し距離を置いて見守っていたヨヅカは、隣にいるシェラルドに話しかける。


「花嫁がフィーベルさんでよかったね。お姫様とも相性良さそう」

「嫌味を嫌味と思ってないからな」


 半眼になる。


 まだ一週間くらいの付き合いではあるが、フィーベルのことは少し分かってきた。言葉の意味をそのまま受け取り、相手の嫌味に気付かない。いつか誰かに騙されないだろうかと少しだけ不安になるが、フィーベルの美点でもある。


 エリノアは幼い頃から我儘なせいで、あまり歳の近い女性と仲良くなれなかった。このままでいけば、フィーベルはエリノアの良き友人になれそうだ。


「で、ご両親は大丈夫だった?」

「ああ、多分」

「多分?」

「俺はのけ者にされた。だから内容はよく知らない」


 ヨヅカから憐れむような視線を向けられる。

 手を振ってそんな顔するな、と伝えた。


 フィーベルは嘘が上手い方ではない。

 本人が何もなかったというのなら、何もなかったのだろう。


 が、何の話をしたのかは気になる。先程から何度も聞いてみた。それでもフィーベルの返答は一緒だ。ただ心配していた、と。フィーベルの様子を見るに、フィーベル自身に害はなかったのだろう。……いや、分からない。嫌味を嫌味と分かってないフィーベルだ。もしかしたら何か言われたのかもしれない。本人がそれに気付いていないだけで。


 シェラルドはフィーベルの顔を見つめる。

 彼女は笑いながらエリノアと話していた。


 あの流れではあるものの、家庭のことを知ってしまった。親がいないことは知らなかった。だが、彼女は笑っていた。笑って大丈夫だと、答えていた。……大丈夫なわけがない。大丈夫になるまで、どれだけ月日を重ねたのかと思うと。


 安心させたい意味も込めて「俺がいる」と言ってしまった。夫婦だから。だが、仮だ。本当の夫婦でもないのに。言った後で少し後悔した。だがフィーベルは受け入れてくれた。それが少し、戸惑った。慌てて他の人の名前も出せば、あっさり頷かれる。


 フィーベルにとって自分の存在は、他の人と同然。そう、一緒だ。


 だが、フィーベルの行動は分からないことだらけだ。ハグをしようと言ってきたり、ガラク隊長の巧みな言葉に騙され過ぎじゃないだろうか。しかも男に不慣れだというのに普通に触れてくるとはどういうことだ。こっちがどれだけ悩んで、意を決して、触れたと思ってる。


 もちろん、こちらのことを思ってしてくれたのも分かっていた。昨日も今日も一歩も引かなかった。相手のことだとおそらく強く出るのだろう。確かに抱き心地はよかった。温かくて、柔らかくて。だからこそ一度で留めてほしいと思うのだ。何度も触れたくなってしまう。


 しばらく悶々としていると、ヨヅカが横からを顔を出す。


「百面相してるけど大丈夫?」

「……元々だ」

「それはそれは、たくさんの顔持ってるんだね」


 からかっているのがすぐに分かった。

 シェラルドは鼻で笑った。


「ちょっとシェラルド! 私に対して何もないの!?」


 お姫様から催促を受ける。

 さすがにおめでとう、は言わなくては。


 シェラルドは苦笑しながら向かった。

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