第15話「LOUDNESS」

そして、歓迎会当日。

八尋殿では、オオトヒワケ主催で企画されたアウワの歓迎会が催されていた。

食卓はイザナギとイザナミ、そしてその子供たちが全員揃って大いに飲み、大いに食べ、大いに騒いでいた。

だが、これらはあくまで単に序章に過ぎない。この日のメインイベントはこの後にあったのである。


既にほぼ全員がいい具合に出来上がっており(オシオとアウワだけは全く飲んでいない)、ちゃぶ台を囲んでいる。

彼らの視線は、数十枚の板を重ねた束をかき混ぜシャッフルしているヒワケに集中している。

板はとても薄く、赤と黒の色をした模様がそれぞれ二種類ずつ描かれている。


「さて諸君。新参者のアウワくんにも分かるように改めて、説明するとこれから行われるのは単なる遊戯ゲームとは違う。己の尊厳、名誉、そして労働を賭けた勝負になる」

ヒワケが得意げな顔で芝居がかった演説を始めた。だが家宅六神のほぼ全員がそれに対して含むところがあるような視線をぶつけていた。

特にオオヤビコに至っては事あるごとに顔の筋肉をヒクヒクと痙攣させ、時折舌打ちを交えながらヒワケに憎悪の視線をぶつけている。


「こいつは手札を早く使い切った者から順に上がっていき、最後まで残った者が敗北者っつー訳だ。だがその際には、そいつは上がった者のいう事を何でも聞かねばならないというルールがある、晩飯を一つ寄越せとか、酒一本寄越せとかな。勿論、再戦を挑んで勝てばそのルールはチャラだ。だが、負ければ負けるだけどんどん負債が貯まっていくという危険性リスクもあるわけだ」


ヒワケはそう説明しながら慣れた手つきでカードを一枚ずつ、一柱一柱に順番に配っていった。

「…新入りにそんなリスク背負わせるのもどうかと思うんだけど…」

イワツチヒメが自分の手札を確認しながらヒワケを睨んだ。

「まさかあんた、アウワをカモにしようなんて考えてるんじゃないでしょうね?」

それを聞いたフキオとヒワケが続いてヤジを入れた。

「うーわマジかよ、最低じゃねえか」

「神の屑だな」


「ぎく…神聞きの悪い事を言うんじゃねえよ!俺は本当にコイツに速く馴染んで欲しくてだなぁ!」

「ぎくって言おうとしたの聞こえたわよこの愚弟が」


「はいはいはいはいもうその辺にして!みんなアウワをもてなしつつ楽しくやりましょ!!ね!!!!!」

オシオが手をパンパンと叩いてその場の空気を強制的に収めた。その声色が若干やけくそでキレ気味なのは気のせいだろうか。

彼も色々と溜まっていて、捌け口を求めているのかもしれない。



「そんじゃあ、各自手札の準備は整ったか?順番はこうだ。俺の手札をアウワが一枚取り、その隣いる奴がアウワから取る。こんな具合で左回りに札を各自取っていき、それ繰り返すという寸法だ」


「大丈夫よ、アウワ。もしもこのクソがイカサマなんてしようものなら即刻しばき倒してやるから」

隣に座っていたイワツチヒメがアウワの方と叩き、優しい調子で励ますという非常に貴重な瞬間を見せてくれた。

「あはは…気持ちは嬉しいけど穏便にしてね?」

アウワは宥めるように言ったが、内心「多分言っても無駄だろうな」と思っていた。


「けっ、何でぇまったく…まあとりあえず準備完了って事で、始めるとすっか」

ヒワケは高らかに宣言した。

試合開始ゲームスタートだ!いざ尋常に…勝負っ!!」


一巡目。

各々が札をやり取りしていくが、特にゲームに大きな動きは無い。それぞれ様子見と言ったところだろうか。

ヒワケは余裕しゃくしゃくの笑顔だった。対してアウワは「えーっとこうかな」だの「あれ?合ってるっけ」とぎこちない様相だった。


二巡目。

一巡目とあまり変わりはない。オオヤビコが口元を手で覆いながら自身の札を睨む。


三巡目。

「お、一個出た」

フキオがパァンと景気よく2枚の札を捨てた。

それをヒワケがじろりと見た。「こいつ、今日ヤケに運がいいな」と意外に思っているのであった。


六巡目。

「あ、また出た!」

アウワがまたしても札を減らしたことで、ヒワケの顔はまた焦燥感を募らせた。

「すごいよアウワ!優勝候補じゃないか」

「へえ、アンタ中々運がいいじゃないの」

「…本来なら勝負相手として、早期の排除の対象になるところだが…今だけはお前を称えるぞ!」

オオヤビコがアウワの幸運を褒めた。それも未だに札が減らないヒワケを横目に。

もうこの時点で既に他の連中もだいぶ札を減らしてきている。だが俺はどうだ?

引いても引いても、外れの札ばかり。常勝(自称)の座が足元からどんどん削られていっている気がする。…まさかイカサマか?そんなはずはない。新入りのアウワは勿論、他の奴らにそれだけの知恵と技術があるとも思えない。


じゃあ何故?


いや、それよりも問題は今、自分の面子が壊されつつあることだ。奴らの顔を見ればわかる。日頃負けている分の意趣返しのチャンスだって思ってるのが見え見えだ。フキオに至っては明らかにヒワケを見下すような視線をチラチラと送ってくる。

なんだそのクソみたいなチラリズムは。いらんいらん。

こうなったら…どんな手段を用いてでも勝ちに行かせてもらうしかない。

そう、どんな手段でも、だ。



十巡目。

「…あ、無くなっちゃった…?」

アウワがヒワケから取った者を含めた2枚の札を捨てて手札が無くなったと同時に、ヒワケは自らの手から溜まった手札を取り落とした。

「う、ウソだ…ろ…?」

常勝のヒワケが負けた。前代未聞の出来事だった。

「いよっしゃあ!流石だぜ新入り!」

上機嫌に背中をバンバンと叩いてくるフキオの手が痛い。オオヤビコも溜飲を下げたような表情でアウワの健闘を無言で称えた。

「ふむ、はじめてにしては飲み込みが早いと思うぞ」

イワツチビコの評価はあくまでも客観的なものに傾いた。


「あはは…ありがとう、皆。まさか最下位にならずに済むとは思ってなかったよ」

「いやいや、だとしてもこの強運は驚異的じゃないか!」

「ふぅん…ライバル出現と言ったところね、これは」

オシオとイワツチヒメの労ったが、アウワはそれを制した。

「でもさ、今回優勝したのはオオヤビコなんだし…僕なんかよりも彼を称えた方がいいんじゃないの?」



「何でもいいさ!あの野郎を常勝の座から引きずり下ろして、この遊戯ゲームに変革をもたらしたって事実の方が大事なんだよ、なあオオヤビコ?」

「うむ。俺も初めての優勝で舞い上がりたい所だ。だがそれよりも嬉しいのは…」

そう言って背後で愕然としたままのヒワケをチラリと見た。

「あいつの敗北を知ったツラを拝ませてくれた事だ。お前には感謝しているよ、アウワ」

オオヤビコに肩を叩かれたアウワは苦笑いしながら困惑した。

「褒められているには違いないけど、喜んでいいやら悪いやら……」



「俺が…負けた…この俺が………」

勝者たちが笑う裏で、敗者となったヒワケはその味を噛み締めさせられながら、ぶつぶつと負けた負けたと繰り返している。

「おい、いつまでも放心しとらんで戻ってこいや敗北者」

カザモツワケがヒワケのツンツン頭をべしべしと叩いた。

「いいや、まだだッ!!」

「うおっ、びっくりした」

突然の立ち直りにカザモツワケはたじろいだ。ヒワケの目には再び闘志のようなものが燃えていた。だが彼はそれを一旦引っ込め、ひきつった笑顔の裏に隠した。

「た、大したもんじゃねえか。手加減してやったとはいえここまでやるとは思わなかったぜ。俺の見込み通りだな!」

輪の中に自分をねじ込もうとしたヒワケを見る勝者達の目は冷ややかで呆れ気味だった。

「あんたボロ負けの癖に何気取ってんだか…」

「負け惜しみもそこまでだと哀れなもんだなぁ?」


「う、うるせー!お前らだって大した順位じゃねえくせによぉ!何だったら…もう1回だ!もう1回勝負しろ!」

ヒワケは散乱した手札を素早く拾い集めると再びかき混ぜシャッフルした。だが今度は最初と打って変わって明らかに冷静さを欠いており、動揺なのが丸分かりだ。

遊戯ゲームってのは、自分が負けだと認めなけい限りは…まだ負けたとは言わねえんだ!」


再び各々に手札を配っていく。そうだ、自分が認めなければまだ負けていない。だから今日は勝つまで続けてやる。まだ俺は常勝のヒワケだ、依然変わりなく。


「さあ、今度は俺の一人勝ちだ。行くぜ!!」


ーーーーそして、二試合目終了。


「あ、上がった」

オシオが優勝した。

「なん、だと…?」

殆ど遊戯ゲームに参加せず、経験値ならアウワと大差ない彼が優勝するなんて。

「た、たまには兄貴に花を持たせないとな…?さ、次行こうぜ次!」


ーーーー三試合目。

「はい、あたしの優勝」

今度はイワツチヒメだ。

ヒワケは空いた口が塞がらなかった。

「次だ…次!」


ーーーー四試合目。

「俺だ」

イワツチヒコ、勝利。


ーーーー五試合目。

「うっしゃあ!俺の勝ちだぜ!」

フキオ、第1位。


ーーーー七試合目。

「ほい、俺の勝ちや。ごちそうさん」

カザモツワケ、一等賞。


ーーーー八試合目。

「おうククリ、勝ったんか!凄いのう、兄ちゃん嬉しいで」

ククリヒメ、制覇。

「つーかこいつも参加してたのかよ…」


ーーーーそして九試合目。

「……やった。僕の上がりだ!」

「チクショォオオオオオオオオ!!!!!」

アウワの喜びとヒワケの嘆きが同時に重なった。

「馬鹿な…何故だ!何故勝てねぇんだァ!!まさかアウワ、てめぇイカサマなんて…」

「ええ!?そんな事するわけないって!」

アウワは慌てて否定し、それを他の神が援護する。

「そうだよ…彼はそんなことする奴じゃないって」

「そんなんだからドベで負けんのよ」

「責任転嫁とかサイッテーだな」

そこにイワツチビコがもう1つの問題をぶつけた。

「それよりお前…負け分だいぶ溜まってるハズだが、大丈夫なのか?」

ヒワケはハッとした。常勝の座から引きずり降ろされた上に、兄弟達全員分の負債を負わされてしまったのだから。どうする?最早降参するしかないか?

「いや…まだだ、まだ終わってねえ…」

ここまで来たらもう引き下がれない。ここで引き下がることは今後、この家での力関係が大きく変動し、最底辺の貫目かんめに甘んじる事と同義なのだ。

だからこそ、戦うしかない。例え負債ツケがどんどん溜まっていくリスクを負ってでも。



…………そしてさらに回数を重ね、現在十二試合目の終盤。

手札が残り2枚となったヒワケと残り1枚のみになったアウワが向かい合い、最後の一手が迫っていた。


「んぐぐぐぐぐぐぐぐ…」

ヒワケは祈りにも似た悲痛な唸り声を上げながらアウワを睨んでいた。その眼を限界まで見開き、歯を食いしばり、額からは脂汗が流れる。十一連敗を重ねた彼はもはや一歩も引けない状況だったのだ。

そんな一柱の緊張状態をよそに、他の神からはめんどくさい、もう飽きた、早く終わりにしてくれオーラがダダ漏れである。

フキオは「いいぞいいぞ、やっちまえー」というヤジの中にあくびを交え、オシオは何度もこっくりこっくりと舟をこいでいた。

アウワ自身も、既にかなりの睡魔が意識にもたれかかっており、早く締めにしたいという思いがあった。


「さあ引け!引け!引くんだよぉ!俺が勝つか、お前が負けるか、二つに一つだ!」

「いや、それ実質選択肢が一つしかないよね…?」

もはやこの男の喜劇の独壇場ワンマンショーだ。

「もう何でもいいから早く終わらせてくんねえか?もうねみぃよ…」

「夜更かしは美容の大敵って母さんが言ってたんだけど」

「せやで、ちっこいククリちゃんもお眠せんとあかんしなぁ」

そんなブーイングが聞こえて来たところでイワツチビコも頭をかいた。


「アウワ、もうさっさとそいつに引導渡してやれ」


アウワは頷くと、ゆっくりとその手を伸ばし、2枚の手札の前で止めた。

「うーん…」

手を左右させて、札を慎重に吟味している。この一手で勝てないとまた試合が長引くかもしれないからだ。

右にしようか…そう思って向かってその手札に指をかける。するとヒワケの顔が一瞬の内にこの上なく純粋な明るい笑顔になった。

アウワは一瞬、その笑顔に胸が痛んだ。しかし小さな声で「ごめん」と呟き、左のカードをスパッと抜きとった。


「あああああああああああ―――――――――!!!!!!」


ヒワケの笑顔は一転、この世の全ての希望を奪い取られ、この世の全ての絶望を叩きつけられたような悲惨なものとなり果てたのだった。


「みんな盛り上がってる所悪いけど、もうその辺にしときなさい?島の虫も鳥も眠れないでしょう?」

ヒワケが畳に伏すと同時に、騒ぎを聞いたイザナミが襖を開けて皆を窘めた。

「はぁー…やっと終わりかよ、いい加減疲れたぜ…」

フキオが自分の肩をトントンと叩くと同時に他の神も思い思いに伸びをしたり、あくびをしたりでお開きムードになっていた。

「あの、みんな今日はありがとう。あと僕のためにここまでやってもらっちゃってごめんね?」

アウワが感謝と詫びの言葉を入れた。

「いや、元々俺達がやりたくてやったことだ、気にするな。それじゃあ」

イワツチビコが微笑んで部屋を出ていった。

「それに、今日はいいもんも見られてすっきりしたしな!」

フキオはそう言って、同じ体勢のままピクリとも動かないヒワケに視線を移した。

アウワはその姿に、苦笑いしか出来なかった。




「ふぅぅぅ…」

アウワが天を仰いで大きなため息をつくと同時に、オシオによってちゃぶ台の上に湯気を立てる湯呑みが置かれ、それをグッと飲み干した。

既に居間は片付けられ、中央にはちゃぶ台が戻され、家宅六神とククリは皆部屋を出ていき、先ほどまでのどんちゃん騒ぎが嘘だったかのように静まり返っている。

なお、ヒワケは去り際に「今度またリターンマッチするからな、覚えとけ!」と捨て台詞を残していった。またあれを繰り返すと思うと、少しだけ気が重くもなる。


「それにしても、随分楽しんでたみたいで、嬉しいわ」

イザナミの言葉に少しはにかみながらアウワは笑った。

「いやあ、中々疲れたよ。みんな、高天原の神達より癖が強くて…騒がしくて…でもそこが良かったりして…とにかく、楽しかった」

「そう、それなら…良かった」

彼女の目は、まるで子供を慈しむ親のそれに近かった。

アウワは思った。そう言えばイザナギやイザナミは自分にとってどんな間柄になるのだろうか。彼らが生み出したこの島の地中で発見されたのだから、やはり子供に当たるのか。そうでないなら…兄弟になるのだろうか。

どっちにしても、家族であることに変わりはないのであろう。


「おい、すまないが俺にも一杯茶をくれないか?」

襖を開けて入ってきたのはイザナギだ。オシオはそれに気付くといそいそと彼の分の茶を用意しに行った。

イザナギが座蒲団に沈むように座ると、程なくしてオシオが茶を持って来てイザナミの前に置いた。

「しかしまぁこうも静かだと、この島に降りたばかりの時のことを思い出すな」

イザナギは懐かしそうに言って茶を啜った。

「そうね、あの時は私達二柱だけだったもの」

あれから長い時が流れ、二柱しか存在しなかったこの家もアウワを含めて十柱と、高天原の神口じんこうに追いつこうとしている。それだけじゃない、島の外には高天原にもいなかった数多の生命種が生まれては死んでいき、それを繰り返している。

ひとまず、当初よりの目的であった創世の下準備は整ったと言える。


そう、「下準備は」だ。

創世を次の段階に進めるには、もっとより多くの神々が必要だ。

イザナギはその「次の段階」にそろそろ進むべきではないだろうか、と考えていた。

しかし…。

「もっと産まなきゃとは思ってるんだけど…ククリを産んだのを最期に子供が出来る気配が全くなくて…」

イザナミは自らの腹部を撫でながらうつむいた。

「ああ、俺達も今の今まで努力してはいるんだけどな…」

「そうなのよ。毎晩頑張ってるんだけど…」

「あのすいません、実の息子がいる前でそう言う生々しい発言はやめて頂けないでしょうか?」

横からオシオが苦虫を噛み潰したような顔で口を挟んだ。それに対してアウワは全く意に介していない様子で聞いている。

「ふーん、そっかー…」

あれ、もしかしてこいつ…「そういう事」に関する知識が殆どない…?

オシオはまた悩みの種が増えたような気がして、頭を抱えて唸るしかなかった。

何故高天原の叔父達はそっち方面の教育を怠ったのか、と恨めしい気持ちになった。

「でも…そんなにたくさん産むのは非現実的だし、そもそも二柱の負担がすごいんじゃないかな…特にイザナミは」

「それは俺も常々思っているよ、だがそれで結局どうするか、だ」

アウワは顎に指を当て、じっと考えた。考えて、考えて、考え続けた。

自分が知っている事、聞かされたあらゆる情報を総動員して。

原初より神々の掲げる「創世」を叶えるためにどうすればいいのか。


数秒かそこらに違いなかったが、少し時間置いた時のことだった。

一瞬、アウワの景色がぐらりと歪み、頭の中が真っ黒になった。


「…おい…おい…しっかりしろ、アウワ!!」

自分を揺さぶるイザナギの声で、アウワは我に返った。イザナギとイザナミ、そしてオシオが心配そうに見ている。

「…あれ、ごめん…一瞬だけぼーっとしてた…」

それにイザナギがいぶかし気な顔する。

「一瞬だって…?お前、随分と長い間そんな状態でいたんだぞ。ずっと俯いて、虚ろな目で何かぶつぶつと言ってたし…」

耳を疑った。

「疲れてるみたいだし、貴方ももう休んだら?」

一体どういう事なのだろうか。

「う、うん…そうかもね、一日中はしゃいでたし…」

納得がいかなかったが、二柱の心配を無碍にする訳にもいかない。アウワはふらふらしながらも立ち上がり、自らの寝床へ向かおうとした。

そして襖に手をかけた時。


「ねえ、アウワ」


オシオが声をかけてきた。

「少し変な事聞くよ?…こんな言葉が聞こえたんだけど…」

「な、何…?僕、変な事言ったかな?」


オシオは不安気に口ごもってから…おずおずと聞いた。




「ニ ン ゲ ンって…何?」








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