第8話「MOON/断章1」


ある女が物語る――――。


こうして、始まりの男神と女神は地上に降り立ち、様々な苦難を乗り越え、見事に国を産みだして永遠に幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし…。



と、言うと思いましたか?

残念ながらそれは大きな間違いです。彼らの物語は、まだ始まったばかりなのですから…。ここまでは、誰もが知ってる昔話、を大いに拡大してお話させて頂きました。伝承と違う?ええ、それは当然でしょう。

ありとあらゆる物語が瞬間瞬間を正確に記録されたものではないのですから。

さて、ここから物語は大きく加速し、あなた方の知っている物語とは解釈の異なるものとなる事でしょう。

覚悟はよろしいですか?『貴方』…。

いいえ、稗田阿礼の事ではありません。


『貴方』。


そう『貴方』の事ですよ。


もしかしたらここからは貴方にとって認められざる、受け入れられざる物かもしれません。けれど案ずる事はありません。この物語はあくまでも虚構フィクションです。けれども…過去に葬られた可能性、現在いまの見えざる可能性、そして未来における無数の可能性においては、この限りではありません。


それでは、物語を続けましょう。

でも、その前にただ一つだけ、約束してください。

ここにあるのは虚無の中沈んでいた無数の因子紡がれた一つの可能性。

それをどう見なすかは、貴方次第。

貴方の目で、貴方の耳で、貴方の心で…悩み続けながらで構いません。

貴方自身を見失わぬよう、答えを見つけて、紡いでください。


さあ、人の子の産声はもうすぐそこに――――――――。


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