『続 うさぎさんとかめさん』中編

 西暦684年7月3日は、満月でした。


 飛鳥時代の終わりごろで、あと10年もすると、藤原京に遷都されます。


 美しいお空には、夏の大三角が輝いています。


 彗星が流れております。


 そんななか、突然現れた、月のかめさんは、まさしく、大怪獣というふぜいでございました。


 飛鳥の人々は、天から降り立ったかめさんに、強い恐怖を抱きました。


 なにしろ、謎の、ほうき星が、輝いているのです。


 ただ事では、ありますまい。


 でも、そらま、そうでしょう。


 だって、あなたのお家の、お庭や、マンションの真ん前に、世界最大のおさがめさんなどが、突然現れたら、びっくりするでしょ。


 しかも、お空から降り立ったのですよ。


 空飛ぶかめさんです‼️


 うさぎさんと同様、たいへんに、でっかい、のであります。


 体長8メートルは、あるでしょう。


 そこから、くびや、しっぽをいっぱいにのばしたら、さらに、大きくなりますからね。


 朝廷の最先端部隊が、刀や、弓を構えて取り巻いていましたが、攻撃する決断はできません。


 なにしろ、神さまの使いかもしれませんから。


 すでに、後世に、聖徳太子と呼ばれる人物は、622年に、亡くなっておりました。


 645年には、大化の改新が始まりました。


 684年は、天武天皇の時代です。


 この年には、『八色の姓』が定められています。


 かめさんがやってきた、飛鳥の都には、正体や使い方がわからない、巨大な石造りの物体が、たくさん、残っています。

 

 『鬼のせっちん』、などは、たぶん、お墓だったのではないかしら、と、思うと、なるほどですなあ、と、思いますが、『酒船石』となると、なにか文書が出てこないと、どうも、すっきりいたしません。


 儀式か、あるいは、宮廷遊びの装備品だったのかもしれませんし、最先端の、科学技術的な、装置だったかも、しれません。


 さて、月のかめさんは、特別製のゴーグルを、頭に装置しておりました。


 これは、前方から後方まで、視覚が広がるうえ、人間たちの頭の中がわかるという、超能力意識センサーでもありました。


 また、武器にも、建設用の工具にもなります。


 かめさんは、月の大工さんや、造形作家、みたいな、存在だったのですから。


 注文主の意識をさぐり、納得してもらう作品を作るのに、欠かせないのです。


 『なあるほど。これは、良い場所に来たなあ。ここで、ぼくのモニュメントなど、造ろう。』


 それで、かめさんは、人々の言葉で、話しかけました。


 『われは、月からやってきた、かめさんの長である。この地にいた、多くのかめさんたちの怨念が、月にまで伝わった。かつて、ここは、川が止められて、沼になっていた。しかし、あなたがた人間たちが起こした争いのため、沼の水はなくなり、かめさんたちは、死に絶えた。われは、あなたたちに、罰を下そうとおめい、やってきたのだ。』


 ちょっと、言葉が、間違っていたけれど、十分通じたようです。


 念のため、ゴーグルから、ビームを放って、あまり当たり障りがなさそうなものを、溶解させて見せました。


 さあ、たいへんです。


 朝廷側からは、たぶん、おおあわてで、 祭儀を行うお仕事に携わるらしき人々が、それは、雅な衣服に包まれ、赤く輝く松明に伴われて、現れました。


 さすがは、プロ集団とみえ、命を掛ける覚悟は、とうに出来ている様子です。


 その一団は、それから、かめさんの周囲で、お祈り込の躍りを始めました。


 『おわ〰️〰️〰️ん、キレイだなあ❗』


 かめさんは、感動しました。


 地球の人間は、まだ、小さな火と水くらいしか、使えないけど、こんなことが出来るんだ。


 すると、気がつかないくらい、ゆっくりと、おそらく、呪術をもっぱら扱う技術者のリーダーらしき女の人が、後方から、いつのまにか一番前にでてきておりました。


 なにやら、不可思議な言葉を操るのですが、かめさんは、体がやたら、熱くなったのを感じました。


 普通の化け物ならば、動けなくなるに、違いありません。


 しかし、月のかめさんの力は、さらに、上をゆくのです。


『む、これは、妖術でありますな。『月影』の姫ぎみが得意とする妖術に、似ている。なぜだろう。こやつ、月から忍んできた、『月影』族が憑依していると、見ました。』


 かめさんは、『うぎょわゎぁ〰️〰️〰️〰️❗』


 と、吠え、右足で、地面を叩きました。


 震度4くらいの、地震が、都を襲いました。


 人々は、びっくりして、しゃがみこみましたが、踊り手たちは、まったく、怯みません。


 あの、一番偉そうな、女の人が、前に進み出ました。


『そなた、月の裏側に住む、かめさんよな。』


 その、女の人が、かめさんのゴーグルを通じて、語りかけてきたのです。


『やはり、あなたは、『月影』のかたですか。』


『さよう。地球の人類を調査するため、派遣されたのである。そなたは、何をしに来たのかな?』


『うさぎさんと、競争です。地球に行きまして、モニュメントか、レガシーを残して、早く帰ったほうが、勝ちです。』


『ほう。それは、おもしろい。よかろう。われが、その願い、かなえてやる。そなたの、彫像を、都に造らせるほどに、そのかわり、そなた、このまま、神さまの役を演じてたもれ。像は、なんならば、自分で作っても、よいぞ。』


『たもれ? まあ、モニュメント、できるなら、たもります。すごく、たもります。』


『よかろう❗』


 なんだか、よくわからないお話に、なってまいりましたが、かめさんは、わくわくでした。


 そのころ、うさぎさんは、夜の闇のなか、かめさんを探していました。


 さっさと、月に帰れば良かったのですが、うさぎさんは、かめさんのことが、とても、心配だったのです。




       🐢 🐢 🐢  つづく 




 


 


 

 


 


 


 


 


 


 


 

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