第15話 Hello, World

「ああ、角が消えた……」アキはヒルヤの角を指差した。


「……ちなみに、服も……」青が言い淀んだ。


 どういうこと?


 でも外は教室よりずっと明るい。

 ……黄金色の光が、厚い樹冠をとおして、地面に落ちている。

 地面には誰も掃除していない落ち葉が落ちていた。ここは静かで、私たち以外の音は聞こえない。


 思いがけずにぎやかな都市の中に、こんなところが……秘密基地みたいだ。


「ウーム、……、……」ヒルヤは背中からもがいてくる。


 彼女は何か言ったようだが、どうして私にはわからないのか。

「うん……ヒルヤちゃん?何を言ってるの?」と私は訊いた。


「……、ウム……、……」ヒルヤちゃんはちょっと焦っているようだ、イライラ。


「うん?……どうしたの?」私は少し戸惑った。「なんだよ、ヒルヤちゃん?」


「やっぱり」花が顎に触れ、地面にうずくまっている。

 ちょっと間を置いた。「ここが目印です」


「うん……だから?……」ここは確かにアキが精霊になる臨界点です。


「だから、変わった。……言葉も」花が説明する。


 どうして変わるの……ちょっと……


「えっ?あの……マッピング?」ふとそれを思い出した。


 だから私たちはヒルヤの言葉を聞き取ることができた……そうだったのか。


「そう理解できます」花は断言する。


「うん……じゃあ、話せない?」どうしよう。


「マッピングのあるところでしかできない」今のところそうだ。


「あ、だったら、困るよ……」私は眉をひそめた。「話せないと、話せないよっ……」


「はあ、ボディーランゲージが使えるのでは?」ナコが突然言った。「ぼくはお姉さまにそのようです」

 言って、登ってきて、唇で私の頬に触れた。


「おい、人前に……」私は逃げ隠れしたい。「毎日何を考えているの?は?」少し怒っている。


「へえ~、意味は……家でいい?」ナコは人差し指で彼女の唇を押さえた。「お姉さまを考えているーっよー」


「困った……」手段をとらないと……この子は……まぁ……「やんちゃ……おまえを無視したい!」


「あっ、そうだ。服も持っていたのに……」

 まあまあ使える。


 ふと思い返すと、ちょっとヒルヤちゃんのイライラの原因が理解できたよう……

 うまい話だけど、こんなに使ってたなんて……私は何かに呪われてるんだろ……


「これは全て勇者のせい?」背中を見て、ヒルヤちゃんに聞いた……


 なるほど……か?


 でも、わからないようだ……


 私は彼女の頭をなでた。この子は耐えてきたのかも……

「もう大丈夫よ……」


「もう大丈夫よ……?」ヒルヤが私を真似して言った。彼女の目で私を見る。


「うん……帰るか、言うことがあるかも……」



「あの……ヒルヤちゃん……」私は何を言っていいのかわからない。


「ウム……ノコさまなら、理解できる、大丈夫……」

 ヒルヤはまた元の姿に戻った。


「……じゃあ、背中には……」


「ウーム、そのうちいいんだけど……アナヤルルさまのせいにするな……ワタシ自分……」


「うん、……」何と言えばいいのかわからない。


「あのバカ勇者は……」アキは首を振り、感嘆した。


「本当に私たちに入りたかったら、始めましょう」


 ……私は花が注意していることを知っている。


「うん……あのう、……なんというか……もう決めたよ、地球の生活に溶け込むのか……?」


「ウム、地球……ここは地球だっ……」ヒルヤは地面を見た。「決めたよ、ノコさま……」


「よし……だったら……」アキを見る。「アキちゃん、……」叫んだ。


「いいでしょうか?ヒルヤちゃん……」私は振り返って彼女の目を見た。


「ううん……魔霊……ヒッ、ヒルヤ、……ちゃん、いけないわけでもないし……」アキちゃんもちょっと……

「……ああ、まったく、お前は無理なことをしないでいい。そう簡単にできるでしょう」


「ウーム」うなずいた。


「もう……日が暮れ早いではないから、みんな帰ろう……」私は伸びをして、皆に言った。


「うん、ヒルヤちゃん、地球へようこそ!」私は彼女に微笑みかけた。「この服を持って行きます」


「あ~っ、アキちゃんと花ちゃんとヒルヤちゃんは同じ道……青、一緒に帰ろう」ナコにちらりと目をやった。


「あの方はどなたですか~?見たことはないねぇーっ」ナコにおいが何を闻いてみたい……なんだよ、早くついてこい。


「はあ……お姉さまはぼくを捨てないで……」ナコは走ってきた。

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