4.
昨日――では、ないです。
おととい――でも、ないです。
わたしは、学校から帰りました。帰って、森を歩いていました。ぶらぶら、ずっと、歩いてました。
理由……。
ない、です。歩きたかったから、歩いてました。
……はい。それで、夜になって、朝になって、たぶん、お昼になって、また夜になりそうになりました。
そしたら、疲れて、横になって、うとうとしました。
――はい。森のなかで、です。
沼――池――どっちでしょう。水がたくさん溜まっているところを見つけたので、そこの近くで、ちょうどたくさんあった葉っぱをお布団にしました。たぶん、すぐに寝たと思います。
それから……。
それから、夢、見てました。
夢、です。いっぱい。たくさん。色んな誰かになる夢でした。
女の人とか、男の人も。腰の曲がったおじいさんも、暗い――砂嵐みたいな音がするとことか、血の匂いとか、蛆がたくさん沸いてたり、御札や人形が張ってある部屋、色んな、とこです。
それで――……。
いちばん最後に見た、夢が、女の人になる夢でした。
女の人……お仕事毎日いっぱい、いやなこと、いっぱい。
お休みの日、欲しいけど、なくて、夜おそくまで、仕事、たくさんで。
男の人、お金返してくれなくて。結婚もしてくれなくて。
いやだな、いやだな、って思いながら、毎日、お仕事、でした。
それで――空が、キレイだったんです。
とってもとっても、素敵な空だったんです。青空、キレイで、風がふんわりしてて。
だから、終わりだな、って思いました。
私の命は、今日で終わり、って。
そしたら、目が覚めました。
外は真っ暗で、月があって、わたしは、わたしでした。
でも、沼を見たら、人がいっぱい浸かっていました。
人――人、だったのかな。
人の形をした赤くない炎、みたいな。
首とか手足の先がなくて、そのかわりに揺らめいてて。
そういう人たちが、沼のなかを歩いていたんです。
よくわかんなくて、じっと見てたら、後ろから、誰かが見てるって思って。
ぱって振り返ったら誰もいなくて、でも、耳に誰か囁いたんです。
“わたしのかわりに見つけて”、って。
それで振り返ったら、岸辺にこの手帳がぽつんって置いてあって。
この手帳の持ち主を見つければいいのかな、って思いました。
……これで、お話しは終わりです。
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