第20話 111,402人って、どんなジャンルに興味があるの?(歴史・時代・伝奇編)

(注意)本作で出てくるデータは、全て2020年2月21日までに取得されたものです。


 ――――――――――――――――


「おーう、今けーったぞ帰ったぞ!」

「あら、あんた。お帰りなさい」


 俺――のタケルが障子の破れた戸を勢いよく開けると、のおけい文机ふづくえの前に正座してせっせと毛筆を走らせているところだった。


「あんた、今日も遅かったじゃない。どうせまたろくでもないところに寄ってたんじゃないのかい?」

「てやんでぇ! おめぇはいつもいつも俺が酒や博打に溺れていると思ってやがる」

「違うのかい?」

「べらぼうめぇ! ちったぁ亭主のことを信用しやがれってんだ」

「あらあら、言ってくれるじゃない。あたしのがちょっとばかし売れるからって、銭をちょろまかしてることくらいお見通しなのよ?」


 おけいはを舞台にしたの物語を書いていて、幕府の目を盗んでは裏路地で売りさばいている。巷では結構人気らしい。どうでぇ、すごいだろ。

 なんでお天道様の当たるところで売れねぇかと言うと……とにかくやべぇんだ。それは今までの経験からよぉく分かってる。


「な、なに言ってやがんでい。それはな、本屋でこいつを買うためよ」


 俺はそう言うと、かかぁの前に一冊の本を放り投げた。


「なにさ、これ――『かくよむゆうざぁのせいたい?』」

「そいつがさぁ、面白いのなんのって!」

「あんた、字が読めなかったんじゃないのかい?」

「べらぼうめぇ! 本屋の若旦那から聞いたんだよ。なんでも、おめぇのような歴史・時代・伝奇の『書き手』がどんなじゃんるに興味を持っているかのが詳しく分析してあるってぇ話だ。どうでぇ?」

「じゃんる? 不思議な言葉だこと。なのに意味が分かるのはどうしてかしらねぇ……」

「こまけぇことは気にすんな! 早速俺に読み聞かせてくれよ」

「あんたにしては上出来だよ。俄然興味が出てきたわ」


 ――――――――――――――――

 統計情報:歴史・時代・伝奇の『書き手』733人が興味のあるジャンル

  ○―――――>○

 歴時伝   ランキング

 ――――――――――――――――

 1位:読み専

   1,553人 (272.46%)

 2位:異世界ファンタジー

   1,531人 (268.60%)

 3位:現代ドラマ

   831人 (145.79%)

 4位:現代ファンタジー

   652人 (114.39%)

 5位:歴史・時代・伝奇

   570人 (100.00%)

 6位:恋愛

   564人 (98.95%)

 7位:SF

   492人 (86.32%)

 8位:エッセイ・ノンフィクション

   359人 (62.98%)

 9位:詩・童話・その他

   305人 (53.51%)

 10位:ラブコメ

   278人 (48.77%)

 11位:ホラー

   148人 (25.96%)

 12位:ミステリー

   104人 (18.25%)

 13位:創作論・評論

   29人 (5.09%)

 14位:二次創作:けものフレンズ

   23人 (4.04%)

 15位T:二次創作:涼宮ハルヒの憂鬱

   2人 (0.35%)

 15位T:二次創作:第2回冲方塾対象作品

   2人 (0.35%)

 17位T:二次創作:神話創世RPG アマデウス

   1人 (0.18%)

 17位T:二次創作:ダブルクロス The 3rd Edition

   1人 (0.18%)

 17位T:二次創作:アカシックリコード

   1人 (0.18%)

 17位T:二次創作:グリムノーツ

   1人 (0.18%)

 17位T:二次創作:ガーデンオーダー

   1人 (0.18%)

 ――――――――――――――――

 ※Tは順位タイを表す。


「歴史・時代・伝奇の『書き手』って、733人しかいないのね」

「それがどうしたってぇんだ?」

「分析するには規模が小さすぎるのよ。別の見開きページ見たら、異世界ふぁんたじぃを書いている人は14,603人もいるらしいの。実に20倍の開きよ」

「な、なんでぇ。その異世界ふぁんたじぃってのは」

「多分、和蘭オランダかどこかを真似した舞台で古事記や日本書紀を模した話しよ」

「てやんでぇ! それのどこが面白いってぇんだい!?」

「なんでも、はーれむとかいう吉原を法度に触れることなく作る話らしいわねぇ」

「なに!? 本当か!」

「あんた?」

「す、すまん……」

「恋愛、えすえふ、えっせい・のんふぃくしょんと、数字の下がり方が穏やかね。幅広いジャンルに興味を持っていることが伺えるわよ」

「えすえふってなんでぇ?」

「からくり人形とかが活躍する物語よ」

「てやんでぇ! 俺みたいな江戸っ子よりからくり人形が主人公とかどうかしてるぜ!」



「……あら? 歴史・時代・伝奇の『書き手』がどれくらい興味をかの数字も載ってるわね」

「あたぼうよ!」

「なんであんたが自慢げなわけ?」


 ――――――――――――――――

 統計情報:歴史・時代・伝奇の『書き手』733人が興味をジャンル

   ○―――――>○

 ランキング   歴時伝

 ――――――――――――――――

 1位:異世界ファンタジー

   1,720人 (301.75%)↑

 2位:読み専

   1,611人 (282.63%)↓

 3位:現代ドラマ

   903人 (158.42%)

 4位:現代ファンタジー

   807人 (141.58%)

 5位:SF

   587人 (102.98%)↑

 6位:歴史・時代・伝奇

   570人 (100.00%)↓

 7位:恋愛

   476人 (83.51%)↓

 8位:詩・童話・その他

   390人 (68.42%)↑

 9位:エッセイ・ノンフィクション

   389人 (68.25%)↓

 10位:ラブコメ

   293人 (51.40%)

 11位:ホラー

   182人 (31.93%)

 12位:ミステリー

   157人 (27.54%)

 13位:創作論・評論

   34人 (5.96%)

 14位:二次創作:けものフレンズ

   22人 (3.86%)

 15位:二次創作:ダブルクロス The 3rd Edition

   4人 (0.70%)↑

 16位:二次創作:涼宮ハルヒの憂鬱

   2人 (0.35%)↓

 17位T:二次創作:第2回冲方塾対象作品

   1人 (0.18%)↓

 17位T:二次創作:アカシックリコード

   1人 (0.18%)↑

 17位T:二次創作:グリムノーツ

   1人 (0.18%)↑

 17位T:二次創作:この素晴らしい世界に祝福を!

   1人 (0.18%)↑

 ――――――――――――――――

 ※Tは順位タイを表す。


「『読み専』獲得比率が2倍と8割2分6厘3毛 (282.63%) ……結構高いわねぇ」

「そうなのか?」

「これは恋愛の3倍と2割9厘2毛 (320.92%) に迫る数字だわ。だけど、恋愛の『書き手』が獲得してる『読み専』15,343人と、歴史・時代・伝奇の1,611人では、数に開きがありすぎて比較するのはちょっと可愛そうな気がする」

「なんのこれしき。殿様が1人で敵をばっさばっさ斬っていく感じで、おもしれぇじゃねぇか!」

「えすえふが順位を2つ上げてるのが興味深い。実は、えすえふって壮大な歴史物が多かったりするから、物語の参考にするために歴史・時代・伝奇の『書き手』をフォローしているとも考えられるわねぇ」

「そ、そうなのか。えすえふって色んな物語があるんだな」

「後はそうね……。軒並みふぉろぉ数よりもふぉろわぁ数の方が上回ってるわ。これはホラーのときのように、『書き手』が少なすぎてふぉろぉが集まっている現象だと考えられるわね。

 歴史や時代、伝奇ものは、ミステリーとは違った意味で知識が要求されるから、ほんと大変よねぇ。家を切り盛りしながら資料を買うのは中々骨が折れるわぁ。

 ……ってあんた、なんで泣いてるんだい?」

「……おめぇがそんなに肩身の狭い思いをしてるとは知らなかったんでぇ。許してくれ、おけい!」

「あぁ、ようやく分かってくれましたか。あたし、嬉しい……」

「おけい!」

「タケル!」


 俺とおけいがお互いを抱きしめようとしたまさにそのとき、耳をつんざく笛の音が鳴り響いた。


 ピィィィィィ~!


『東町奉行、小岡こおか越後守えちごのかみである! この長屋に、禁書を売り歩く不届き者がおるとの知らせがあった! 神妙にせいっ!』

『御用だっ! 御用だっ!』


 小岡越後だって!?


「おい、おけい! 奉行所の連中でぇ!」

「あんた、早く逃げないと! ……あらやだ、いい男ね」

「ずらかるぞ! のことがばれてらぁ!!」


 ちなみに攻めは菅原道真、受けは平清盛という現実には接点の無い2人だったりする。このとき、おけいの頭の中には将軍×小岡越後のカップリングが成立していたが、そんな妄想がはかどっていることなど俺は知るよしも無かった。



 地球滅亡――ユーザー数40万人突破のXデーまで、あと66 日!



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 今日の研究ノートまとめ

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 ・歴史・時代・伝奇の『書き手』が何に興味を持っているのかは『ネットワーク外部性』の影響でよく分からない

 ・ただし興味の幅は結構広そう

 ・読み専獲得比率はかなり高い (282.63%)

 ・これはホラーと同様に『書き手』そのものの人数が少ないからだと考えられる

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