カクヨムユーザーの生態～111,402人分のデータを分析してみた

第18話 111,402人って、どんなジャンルに興味があるの？（ホラー編）

（注意）本作で出てくるデータは、全て2020年2月21日までに取得されたものです。

　――――――――――――――――

　俺――研究所主任研究員（マッドサイエンティスト）こと草薙（くさなぎ）タケルは、自分の研究室に向かっていた。

　やっとKAC2020が終わった。これでいつもの日常に戻れる。

　そう。俺はKAC2020向けの作品を書くのに忙しく、他の作品を更新する心の余裕が無かったのだ。

　白状しよう。時間はあった。

　時間は作るものだ。データはすでに揃っている訳だし、その気になれば更新することは可能である。

　現に、他の作者様はKAC2020中にもちゃんとメインの更新を行っている方がいらっしゃった。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

　よし、これからまた気合いを入れていこう。

　俺が決意を新たにして研究室の中へ入ると、そこにはすでに研究助手（アシスタント）で幼馴染みである塔（とう）景子（けいこ）がいた。

「おはよう、ケイコちゃん――いや、助手のケイコよ」

「……」

　しかし、反応がない。一体どうしたと言うのだ？

「おーい？」

　もう一度呼びかける。そのとき、彼女が小さな声で何かを呟いていることに気がついた。

「378.74%……315.67%……168.89%……149.82%……117.25%……100.00%……」

　俺はぎょっとした。

　ケイコの表情が死んでいる。目に光がない。

　魚で例えるなら、まるで陸に上がって死んだ後の暗く濁った目。アニメで例えるなら、濃い単色で塗りつぶされたヤンデレの目。

「おい！　どうしたんだ！　しっかりしろっ！」

　それでもなお、ケイコは謎の数字を呟き続ける。

「82.26%……65.61%……56.74%……55.89%……35.24%……22.11%……」

　ま、まさか……。

　俺は、机の引き出しにかけてあるカギを開け、自分の研究ノートを慌てて引っ張り出す。そして、カクヨムでホラーの『書き手』がどんなジャンルに興味を持っているかのデータが記されたページを、急いで確認した――

　――――――――――――――――

　統計情報：ホラーの『書き手』1,439人が興味のあるジャンル

　　○―――――＞○

　ホラー　　　ランキング

　――――――――――――――――

　1位：読み専

　　　3,117人 (378.74%)

　2位：異世界ファンタジー

　　　2,598人 (315.67%)

　3位：現代ファンタジー

　　　1,390人 (168.89%)

　4位：現代ドラマ

　　　1,233人 (149.82%)

　5位：SF

　　　965人 (117.25%)

　6位：ホラー

　　　823人 (100.00%)

　7位：恋愛

　　　677人 (82.26%)

　8位：詩・童話・その他

　　　540人 (65.61%)

　9位：ラブコメ

　　　467人 (56.74%)

　10位：エッセイ・ノンフィクション

　　　460人 (55.89%)

　11位：ミステリー

　　　290人 (35.24%)

　12位：歴史・時代・伝奇

　　　182人 (22.11%)

　13位：創作論・評論

　　　55人 (6.68%)

　14位：二次創作：けものフレンズ

　　　24人 (2.92%)

　15位：二次創作：グリムノーツ

　　　6人 (0.73%)

　16位：二次創作：ダブルクロス The 3rd Edition

　　　3人 (0.36%)

　17位：二次創作：涼宮ハルヒの憂鬱

　　　2人 (0.24%)

　18位：二次創作：精霊使いの剣舞

　　　2人 (0.24%)

　19位：二次創作：この素晴らしい世界に祝福を！

　　　1人 (0.12%)

　20位：二次創作：ソード・ワールド2.5

　　　1人 (0.12%)

　21位：二次創作：オーバーロード

　　　1人 (0.12%)

　23位：二次創作：神話創世RPG アマデウス

　　　1人 (0.12%)

　22位：二次創作：幼女戦記

　　　1人 (0.12%)

　24位：二次創作：キミラノ

　　　1人 (0.12%)

　――――――――――――――――

　※Tは順位タイを表す。

　ケイコちゃん……君は何故、数字を知っている……！？

　確かに、ホラーの『書き手』は少ない（異世界ファンタジー14,603人に対して僅か1/10の規模）し、ホラーの次に多いジャンルであるエッセイ・ノンフィクションにすら1.8倍近い差を付けられているから、考察しにくいなぁ……ホラーだなぁ……とか思ってたよ？

　ホラーの人たちは『読み専』のフォローが積極的なのはちょっとホラー……とか思ってたよ？

　SFが自身のジャンルよりも上位に来てるのはちょっとホラー……とか思ってたよ？

　ケイコちゃんがおかしくなったのは……これらのせいなのか……！？

　そのとき、ケイコが何の前触れも無く立ち上がる。

　あまりに突然のことで、俺は思わず地面に尻餅をついた。

「327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……」

　今度は何だ……？

「327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……327.34%……」

「まさか……ホラーの『書き手』がどれくらい興味を持たれているかの――」

　俺は研究ノートの次のページを開く。

　そして、戦慄を覚えた。

　――――――――――――――――

　統計情報：ホラーの『書き手』1,439人が興味を持たれているジャンル

　　　○―――――＞○

　ランキング　　　ホラー

　――――――――――――――――

　1位：読み専

　　　2,694人 (327.34%)

　2位：異世界ファンタジー

　　　2,676人 (325.15%)

　3位：現代ファンタジー

　　　1,560人 (189.55%)

　4位：現代ドラマ

　　　1,311人 (159.30%)

　5位：SF

　　　1,062人 (129.04%)

　6位：ホラー

　　　823人 (100.00%)

　7位：恋愛

　　　689人 (83.72%)

　8位：詩・童話・その他

　　　651人 (79.10%)

　9位：エッセイ・ノンフィクション

　　　484人 (58.81%)↑

　10位：ラブコメ

　　　462人 (56.14%)↓

　11位：ミステリー

　　　328人 (39.85%)

　12位：歴史・時代・伝奇

　　　148人 (17.98%)

　13位：創作論・評論

　　　56人 (6.80%)

　14位：二次創作：けものフレンズ

　　　27人 (3.28%)

　15位：二次創作：ダブルクロス The 3rd Edition

　　　12人 (1.46%)↑

　16位T：二次創作：グリムノーツ

　　　4人 (0.49%)↓

　16位T：二次創作：涼宮ハルヒの憂鬱

　　　4人 (0.49%)

　18位：二次創作：精霊使いの剣舞

　　　2人 (0.24%)

　18位T：二次創作：キミラノ

　　　2人 (0.24%)↑

　20位T：二次創作：神話創世RPG アマデウス

　　　1人 (0.12%)

　20位T：二次創作：幼女戦記

　　　1人 (0.12%)

　20位T：二次創作：アリアンロッドRPG2E

　　　1人 (0.12%)

　20位T：二次創作：第2回冲方塾対象作品

　　　1人 (0.12%)

　――――――――――――――――

　※Tは順位タイを表す。

　読み専獲得比率、327.34%。まさにホラー。

　読み専以外の各ジャンルからのフォローされている率が、軒並み上昇している。まさにホラー。

　これは供給側が少ないことを示しているのだ。まさにホラー。

「40……67……40……67……40……67……」

　今度はまた別の数字を呟きだした。

　心なしか、ケイコの輪郭線がぼやけていくように見える。

「40……67……40……67……40……67……」

　やめてくれ……。

　どんどん体が透き通っていくケイコ。ついに、彼女の体の向こう側にあるものまではっきりと視認できるようになってしまった。

「40……67……40……67……40……67……」

　お願いだ……！　正気に戻ってくれ……！！

「40……67……40…………67………………40…………………………67…………………………」

「ケイコオオォォ！！　頼むから行かないでくれえええぇぇ！！！」

　そして俺は、ケイコをLOSTした（失った）（※）。

　呆然とする俺。そして目の前には、極めて恐ろしい予言が書かれたモニターの画面だけが残されていた。

　地球滅亡――ユーザー数40万人突破のXデーまで、あと67 日！

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　今日の研究ノートまとめ

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　・ホラーの『書き手』が何に興味を持っているのかは『ネットワーク外部性』の影響でよく分からない

　・SFに興味を持っていそうなのは言える

　・読み専獲得比率はかなり高い (327.34%)

　・ホラー作品の供給が少ないことが原因と考えられる

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（※）LOST：2004年から2010年にアメリカで放送された海外ドラマ。ホラーと言うよりスリラー。作中に登場する謎の数列『4……8……15……16……23……42……』を巡って大激論が繰り広げられた。