第9話 111,402人の繋がりを可視化するとどうなるの?

(注意)本作で出てくるデータは、全て2020年2月21日までに取得されたものです。


 ――――――――――――――――


「カクヨムユーザーの繋がりを『見える化』できないかしら」


 研究助手アシスタントで幼馴染みであるとう景子けいこが、何故かスケッチブックを持っている。俺――草薙くさなぎタケルは、嫌な予感を抱きつつ口を開いた。


「最近流行ってるよな。まぁ、数字よりも図にした方が直感的で分かりやすいのは確かだ。最近は図すらも通り越して、アルバイトのマニュアルが動画の時代らしい」

「へー。世の中進むものね。ところでタケル君、このスケッチブックに111,402人の『見える化』はできないかしら」


 嗚呼……やっぱり。なんというアナログ娘!


「いやいやいや。111,402人のネットワークをどうやって手で書けと?」

「タケル君くらいの情熱があれば問題ないわよ。スーラって画家の『グランド・ジャット島の日曜日の午後』は見たことある?」

「な、なんだよそれは」

「全部で書いてあるんだよ! 縦2メートル、横3メートルだって。2年くらいかければタケル君もできるよ!」

「いや、現代のテクノロジーを使わせてください。まじでお願いします……」


 俺はパソコンを起動すると、とあるソフトウェアを呼び出した。


「ということで、使ユーザーのフォロー・フォロワー関係からネットワークを作成したぞ」

「なんだ、つまらない」

「図は『Gephi』というネットワーク解析及び可視化用のオープンソースソフトウェア(※)を使用している」


(※)https://gephi.org/


「ただし、これから示す図に描かれているのはフォロー・フォロワー関係を持っている85,142人だけだ。残り26,260人はどのユーザーとも繋がっていないので、図からは除外されていることに注意して欲しい」

「はーい」

「それじゃぁ、図を見てみよう」


https://pbs.twimg.com/media/ER2687fVAAE4h_0?format=jpg&name=4096x4096


(ツイート本体:https://twitter.com/t_kusanagi/status/1233347439223984129)


「なにこれ、塗り絵みたいになってるんだけど!?」

「うん。ノードとエッジが多すぎて、線が見えなくなっちゃった……」

「そうだったのね。ところでこれ……何か意味があるの? 例えばノードの大きさとか」

「ごもっともな質問。図の簡単な説明をしておこう」

「よろしく」

「丸い点(○)がノードと言って、ユーザーに対応している。ノードとノードを繋いでいる棒はエッジと言って、ユーザーのフォロー・フォロワー関係を表している。本当は矢印の向きがあるんだけど、今回のネットワークはあまりに大きくて矢印が見えないから忘れてくれ」

「分かったわ」

「ノードに繋がっているエッジの総数を次数と言うぞ。今回の図は、次数が大きいほどノードを大きく描いてある」

「周りへの影響力をノードの大きさで表しているのね」

「その通りだ。ノードの色はそのユーザーの代表ジャンルを表している。『読み専』は白、その他の色は下の表を参照してくれ」

「どれどれ……?」


 ――――――――――――――――

 統計及び凡例情報(全体111,402人)

 ――――――――――――――――

 白色  :読み専 (53.35%)

 赤色  :異世界ファンタジー (13.11%)

 オレンジ:現代ファンタジー (6.70%)

 水色  :現代ドラマ (5.50%)

 薄緑色 :恋愛 (5.02%)

 黄色  :SF (3.48%)

 肌色  :詩・童話・その他 (3.32%)

 濃緑色 :ラブコメ (3.06%)

 ピンク :エッセイ・ノンフィクション (2.30%)

 青色  :ホラー (1.29%)

 紫色  :ミステリー (0.97%)

 灰色  :歴史・時代・伝奇 (0.66%)

 薄灰色 :二次創作:けものフレンズ (0.61%)

 黒色  :創作論・評論 (0.24%)

 薄灰色 :二次創作:その他全て (0.40%)

  (※色はけものフレンズと同じ)

 ――――――――――――――――


「実は、エッジにも色が塗ってある。エッジの色付けルールは『二つのノードの色の中間色』にしているんだ。例えば、赤色と赤色同士のノードを繋いでいるエッジなら赤色だし、赤色ノードと白色ノードをエッジが繋いでいたらその中間、という感じになっている」

「なるほど、『読み専』に繋がっているエッジは『書き手』の代表ジャンルに染まりやすくなっているのね」

「そういうことだ。そして、これが一番大事なことなんだが……ノードの位置にも意味がある」

「ん? どういうこと?」

「『できるだけ全部のエッジを同じ長さにしよう』というルールでノードを配置しているんだ。こうすることによって、同じノードに繋がっているノード同士が近くなって、逆に繋がっていないノードは自然と離れて行くんだ」

「つまり、何が言いたいのかしら」

「見た目が離れているノードはユーザーの関係も離れているとみなして問題ないってことだよ」

「ははーん、ノードが近いほど仲間意識が強い、仲間意識が強いほどノードが近いってことか」

「その通り! 詳しい原理は下のURLで触れているから(多分誰も興味ないだろうけど)読んでみて欲しい」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054893608096/episodes/1177354054894336372


「図の見方は以上だけど、改めてこの図を見た感想は?」

「そうねー。色が混じっているところもあるけど、単色っぽい部分も所々あるわね。左下なんかはとっても赤いわ」

「そうだね。その部分はどう考えても『異世界ファンタジー』クラスターだろうなぁ」

「後は、大きいノードが天の川みたいにベルト状になってる気がする」

「密集しているように見えるな。これは決して偶然ではなく、次数が高いノード同士は近くに集まる性質なんだ」

「なるほど。そうかもしれないわね」




「次回からは、各ジャンルに絞って考察していくぞ」

「おー。最初は何?」

「当然、『異世界ファンタジー』だ」

「わーい。楽しみ!」



 ――――――――――――――――

 今日の研究ノートまとめ

 ――――――――――――――――

 ・ノードが多すぎて図がやばい!

 ・エッジが多すぎて線が見えない!

 ・ネットワークらしく見せようと思ったら図が巨大化しすぎて無理だった!(狂乱)

 ――――――――――――――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る