はじめに(後編)――こんな小説を書いてみたい――

   

 さて。

 自分は珍しい経験をしたのではないか、と思ったら、それを元ネタとして小説にしたくなるのが、素人作家のサガというもの。アマチュアはプロと違って執筆のための取材活動がしにくい分、自分の人生経験はフル活用しないと、もったいないですからね。


 では、私の場合、どんな小説が書けるでしょうか?

 二つの合唱サークルを舞台にした青春物語。定期演奏会のような区切りはありましたが、コンクール参加みたいな活動はなかったので、目に見えた結果を目指すようなスポ根ものは、書きたくても無理でしょう。

 ふと頭に浮かぶのは、テレビアニメや映画にもなった、京都の高校の吹奏楽部を舞台にした小説。ちょうど私が通った大学も京都にあったので――ただしそちらとは違って京都市内でしたが――、そんな感じの小説が書けたら理想です。

 とはいえ『コンクールがない』という時点で、もう方向性は大きく変わるので……。二つの合唱サークルを比較する形で、合唱音楽の多様性を描くことは出来ても、メインは大学生たちの恋愛模様になってしまうのかな?

 大学のサークルを舞台にして、同じ趣味に打ち込む者たちの恋愛を描く。……と考えると、私の頭の中に浮かんでいた理想が『響け! ユーフォニアム』から『げんしけん』に変わってしまいました。あれ?


 エッセイなので、ついつい商業作品のタイトルを実名で書いてしまいましたが。

 自分が書こうとしている作品の大まかなプロット、特に主人公の恋愛面の展開を考えると、もう一つ、商業作品が頭に浮かんでしまいます。サマセット・モームの『人間の絆』……と名前を挙げたら「『人間の絆』は恋愛小説じゃないよ?」と言われてしまうかもしれませんね。いや大学生の頃に合唱サークルの友人から借りて読んだだけなので、うろ覚えなのです。私の印象に残ったのが、恋愛小説的な部分であって……。ごめんなさい。


 そんな感じで、物語の着地点だけは見えていて。

 物語のスタート地点は、大学入学のために、主人公が京都に到着した辺りから。

 それを本編として、プロローグとエピローグでサンドイッチ。プロローグとエピローグは本編より後の時系列として、後年、プロの合唱団で歌うようになった主人公が、大学時代を振り返る。……みたいな構成。

 もちろん私は『プロの合唱団』に所属したことはないので、その辺りは思いっきりフィクションになります。

 ただし「固定の給料ではなく臨時のギャラしか出ないから厳密には『プロ』ではないけれど、大学の合唱団から見ればプロのようなもの」というところで歌っていた時期もあるので――確か実働では三年くらいだったはず――、それはそれで、小説に使えるネタになるだろう、と思っています。大手レコード会社のCD録音に参加したり、有名な作曲家の先生が主催するコンサートで歌ったり出来たのは、私の人生の中で、ささやかな自慢です。


 ……と、こんな感じで構想を練るのは楽しいのですが。

 これは「そのうち、そのうち」と言っているだけで、いつまでたっても書き始めないパターンではないか。そんな気もしています。

 でも、すでに私の大学時代は、かなり昔。せっかく小説のネタになりそうな出来事も、どんどん忘れてしまいます。

 そこで、そのメモを兼ねて、まずは合唱に関してのエッセイを書いてみよう、と思い立ったのでした。

 小説のネタとしては大学以前は必要ないのですが、自分の合唱に対する想いの原点として、小学校時代から始めてみたいと思います。

 そしてメインである大学時代を経て、エッセイとしては、上述の『プロのようなところ』の話も書いてみたいと考えています。合唱に興味ある読者にとっては、メインパートよりも面白くなるかもしれません。


 また、合唱には興味ない、という方々も。

 大学で同じ趣味のサークルに二つ入る、という話が、小説投稿サイトの複数利用とどこまで重なるのか。あるいは、重ならないのか。そんな観点から読んだら、それなりに楽しめるエッセイになるかもしれません。


 そんな感じのエッセイですので、よろしくお付き合いください。

   

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