第2話 弟のお守り
「お姉さま!無視しないでください!」
静かに1人で図書室で座って本を読んでいる私の膝によじよじと登ってこようとする彼が私にとって最大の恐怖である。
仕方ないので、1人のゆっくり読書タイムを諦めて、彼を後ろから抱きしめるようにして私が一人で読むとき用の分厚い本から、簡単な小さい子向けの絵本に取り替えて読み聞かせをする。
彼と一緒に入って来たらしい他の子ども達も私の隣に座って本の読み聞かせを聞くために集まってきた。たくさんの子供たちに囲まれ、先ほどの静けさが嘘のようだ。
図書室であるにも関わらず、子ども達の喧しさを咎める者がいないのは、これが日常の一部だからかもしれない。もしくは小さな子供たちが本に親しむのが嬉しい司書の小さな思いやりか。はたまた子ども達の中の何人かが有力貴族だからか。
ほんの少しの打算と思いやりとで出来上がった今この暖かな空間に尊く得難いものを感じた。私はそんな小さなことが重なり合い作りあげられた空間で死んだ。
その時と何が違うのかと少し感傷的になる。何が違ったのか、全て違ったのだ。そう思うしか私に生きる道はない。
最初の一冊が読み終わると、子供たちが私に読み聞かせをしてほしい本を四方八方あちこちから次から次へと渡してくる。
「アンヌ様!次はこれを読んでくださいな!」
「アンヌ様!私はこれがいいです!」
「そうね。どれもとっても素敵だけど、少し落ち着いて。順番にね。」
弟のお世話をしているうちに私は小さい子どものお世話をすることが多くなった。弟のヨハンは私と違って友達が多いのだ。
弟とまとめて世話をすることになる。特に読み聞かせが多い。
まあ、私が図書室にいることが多いからかもしれないが。
王都の図書館は国一の蔵書量を誇る。中には大変貴重な絶版になったような本もあるため私は足繁く通っている。子ども達の中には本が好きではない子もいるようだ。
「もう読書はやめてお茶にしましょうよ〜。」
と誘われたりもする。子ども達は別段読書のためにこの図書館に通っているわけではない様だ。公爵家の私と弟のヨハンと仲良くなれれば、そこから家同士の繋がりに発展するわけだからか、日に日に私がお守りをする子供の数が増えてきている気がする。
まぁ、世話だお守りだと言ったが、私は本当に本の読み聞かせしかしていないが。
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