第2話「入学式と魔術師 II」

 俺と治彦はるひこはあの後適当な雑談を楽しみ、入学式が始まるから、体育館に向かった。

 校長先生の話が長いと言うものは本当だったようだな。 一種の都市伝説か何かだと思っていたが、本当に長いんだな。 つい眠くなって寝てしまいそうだ。

 俺は周りをチラチラと頭や体を動かさず、目だけを動かして面白いものが無いかと探していると、治彦が爆睡しているのが目に入った。

 いやいや流石にあれは無いだろ。

 俺でもあれはありえないと思うんだが……まぁあいつは勇者だな。


 そして入学式が済み、教室に戻ってきた。

 そしてその後担任がプリントを取りに行くと言って教室を後にした。

 担任が居なくなったからか、皆が一気に周りの人達と喋りだした。

 聞こえてくるのは笑い声と何の変哲もない平和な会話その物だ。

 俺は治彦と話そうと思ったが、席は出席番号順となってしまい、少し離れてしまっていた。

 仕方なく俺は何となく持ってきていたラノベを読み始めた。


 数分が経ち、担任の先生が教室に戻ってきた。

 両手に抱えていたのは大量のプリントで、手伝おうかと思ったがもう時すでに遅しと、プリントは教卓の上に置かれていた。

「はいじゃあ皆さん挨拶しましょうか!はい起立」

 その先生の合図と共に皆が席から立ち上がった。

「気をつけ礼。 おはようございます!」

「「「「おはようございます」」」」

 皆が挨拶を言い終えると、皆が席に座った。

「はいじゃあこのプリントを配る前に、皆さん一人つづ自己紹介をしてもらおうと思います」

 そして聞こえてくるのは「え〜」と嫌がる声だった。

「じゃあまず私が自己紹介しますね」

 そう担任の先生が言った。

「今日からこの一年二組のクラスの担任を務めさせてもらう、社会科の南 光みなみひかりと言います。 一年間よろしくお願いします」

 そして南先生が礼をして、クラスの皆が拍手をした。

 このクラスの人達は優しい人が多そうだなぁ。

「じゃあ今みたいな感じで自己紹介してください! じゃあ最初は出席番号一番の今井君からです」

 そして自己紹介が始まった。


 あれから少し経ち、俺は何を言おうかと悩んでいたが考えはまとまった。

「じゃあ次は……長谷川君お願いします」

 俺は席から立ち、教卓前に立って一度深呼吸をした。

「えぇ、俺の名前は長谷川 莉久はせがわりくって言います。 趣味は特にありませんが平和な日常生活を送りたいですね。 この一年間よろしくお願いします」

 俺も一礼して、自分の席に戻った。

 まぁ自己紹介ってこんなもんでいいよな。

「じゃあ次は春上火菜はるうえひなさんお願いします」

 そして俺のひとつ後ろの席の赤い長い髪のツインテールの女の子が皆と同様教卓の前に立った……のだが、あの女の子明らかその辺の一般人の魔力量じゃない。 俺と同じ、魔術師か?

 まぁ、別に魔術師が珍しい訳でもないしどうでもいいか。

「私の名前は春上 火菜。 趣味は無いけど特技は魔術よ」

 えっ?!

「魔術?」

「えぇ?」

 クラスの皆がザワついた。

 いやまぁあの子が言っていることは嘘ではないと思うけど、魔術師は普通一般人とは違う、裏の人間だ。

 魔術師として、一般人に魔術がバレる事は厄介になるはず……なのに何故あの子は自分が魔術師と言ったんだ? しかもあんな堂々と。

 それに火菜だっけか。 何故かずっと視線が俺の方を向いているのだが。 しかも火菜はどうやら魔術師としてかなりの腕を持っているみたいだ。

 その理由は簡単。

 まずあの魔力量の異常さは普通の魔術師でもあの量は異常だ。

 そしてもう一つは眼が赤く光っている。

 一般人から見ると普通の赤い眼にしか見えないだろうが、一般人より魔力量が多い魔術師からするとあの眼はただの眼じゃなく、血塗られた赤眼ブラッドムーンと呼ばれている、魔術師でもあの赤眼を持つ者は少ない。

 正直、俺は火菜が魔術組織の一人と予想している。

 俺は今まで殺し屋をしてきた。 そして依頼の中に何度も魔術組織の人間の暗殺依頼を受けることも多かった。

 その復讐として、魔術組織から送られた者では無いのかと思っている。

 もしそうだとしたらかなり厄介な事になる。

 俺の平和な学生LIFEが無くなってしまう。 それだけは何としてでも阻止せねば。

 そして火菜は満足したのかそのまま席に戻った。

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