第1話「入学式と魔術師 I」
俺は昨晩、小学二年生の時以来一度も接点が無かった学校に通う事の楽しみと緊張で一睡も出来なかったが、俺の意識は完全に起きたままだった。
時刻は午前六時半
俺は布団から出て、顔を洗いに洗面所に向かった。
二階の俺の部屋から一階の洗面所に行く為に階段を降りるが、以前はこうしてのんびりした感じはあまり無く、新鮮だ。
普通の家庭なら家族が朝ご飯を作っているらしいが、俺には家族が居ない。 その理由は、昔俺が親に捨てられたからだ。
元々魔術師の家の長男として産まれたが魔術の腕は下の妹の方が上で、俺は妹より劣っていたせいで両親から可愛がられないどころか、虐待の日々。
そして最後には俺がまだ八歳の時、夜寝ている間に運ばれて、知らない所に捨てられてしまったのだ。
だが今となってはただの苦い過去だ。 今は今、過去は過去と俺はいちいち考えなくなった。
そして俺は蛇口を閉めてタオルで顔を吹き、二日ぐらい連続で使っていたタオルを洗濯機に放り込んだ。
午前七時半
俺は朝食を食べ終え、コーヒーを一杯飲んでいた。
「ついに俺にも青春と言う未知の世界に足を踏み入れるのか……正直楽しみだが今になって思ったがただ学生生活を送ったとしても『普通』というものが味わえるのだろうか。 まあ結局それを見つけて感じるのは俺なのかもしれないな」
俺はコーヒーを一気に飲み干し、重ねた皿を台所に持って行って水に着けて自室に戻った。
「これでよしっ!」
俺は自室で制服に着替えて姿鏡で自分の姿を確認した。
「こ、これが制服かぁ……今まで一度も着た事が無かったが俺は気に入った!」
俺は自室の掛け時計で時間を確認すると七時四十分になっていた。
「よしっそろそろ行くか」
俺はカバンを手に取り家を出た。
桜が散る坂道。
こんなに綺麗な桜は初めて見たかもしれない。
俺は高校前の坂道を登っていた。
平和だ。 俺はこういうのを求めていたッ! 殺し屋として働いていたらこんなのも味わえないし全く、最高じゃねぇかよ!
そしてこれが学校かぁ。
小二以来行けなかったから、本当に感動的だぜ!
俺は正門を通るまでの一歩に謎の力が入ってカクカクと、不自然な動きをしてしまったせいか、同じ高校に通う生徒達が俺を見てニヤニヤしていた。
クッソ。 めっちゃくちゃ恥ずかしい。
俺は上履きに履き替え、下駄箱近くに貼られていたクラスと出席番号を確認して一年二組の扉を開け、教室に一歩足を踏み入れた。
教室の中は先に来た者が雑談をしたりと賑やかだ。
すると奥のグループの男子の一人が俺に気付いてこっちに視線が向いた。
「おっ! 新しいクラスメイトが更に来たぜ!」
すると教室にいた人達が一気に俺の方を向いた。
「おいお前、そんなとこでぽへっと突っ立ってないでこっち来て自己紹介してくれよ」
「あ、あぁ。 今そっちに行く」
俺は自分の机にカバンを置き、俺を呼んだ男子のグループに向かった。
「よろしくな! えっと」
「──あっ、俺の名前は
「俺の名前は
治彦が俺の方に手を差し出した。
「あぁ。 よろしくな、治彦」
俺はその差し出された手を握った。
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