2019/7/18
彼が亡くなって一年経った。
死を目前にした彼を苦しめる病気を前に、謝罪を繰り返すだけの無力な医者を、私と妻は責めることも出来なかった。
最後の数ヶ月はほとんど意識も無かったが、たまに起きると「会いたい。」と何か思い出したかのように唱えていた。
彼はずっと自己面談謝絶。
人と話したがらない彼の性格を知っていた私は、彼の意思を尊重した。
幼い頃はよく話す子だった。
変わってしまったのはあれからだろう。
幼馴染の女の子の交通事故。
本当に一瞬のことだったらしい。
車通りの多い年末の時期に、女の子は向かいにいた手を振る男の子のことしか見えていなかった。
それから彼は全く他人と話さなくなってしまった。豊かで明るかった表情も消えた。
そんな彼に再び笑顔が戻ったのは、ノートパソコンを買い与えてからだ。
何をしていたのかは知らなかったが、
時折見せる彼の笑みがあれば、正直それで十分だった。
でも、それからすぐ入院し、二年足らずで彼は亡くなった。
看護師に聞いたところでは、全く腕が動かなくなる日まで、ずっとこのパソコンを触っていたのだとか。
私は妻と決めてそのパソコンを今日起動してみることにした。
彼が何をしていたのか、何が彼に表情を取り戻させたのか、どうしても気になった。
コンセントを刺す
電源を入れる
ウィンドウが青く光る
しばらくして突然、文字が現れた
「いつまでも待つとは言ったけど…!やっと会えた!」
モノログ あろじぇな @alogena
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます