最終章 色

第40話 「色を認識する」ということ(まとめ)-1

 人は色に意味を持たせ、色は心理学的に人間に影響を与える。色とは人の生活の中にひそみ、そして常に重要な役割を果たしている。


 遥か昔、紀元前までさかのぼるが、この世で初めて「人がものを見る」あるいは「色を見る」ということがどういうことなのか、そして「何故見えるのか」ということを考察した人物がいる。それがギリシアの自然哲学者、エンペドレスであった。彼は「見える」ということを、次のように述べている。



 感覚が生じるということは、対象からある流出物が、絶えずいろいろの方向に発散していて、そのうちの我々のほうにむかった流出物が身体にある穴に入り込むことによっておこる。


 ただし、その流出物にはその穴よりも大きいものも小さいものもあるので、その穴に 適合するものだけが穴にはいって感覚を生む。


 見るということは、見えるもののほうからの流出物が眼にむかい、眼からも穴を通して身体内部の火の流出物が外に向かい、両者から出会った流出物どうしが合体して眼の 穴にはいったときに知覚像が生じる。

(川添泰宏「色彩の基礎 芸術と科学」より)



 当時は当然科学というものが発達していないため、このような見解になっているが、この「流出物」を「光」に置き換えると案外的は外れていないと感じる。


 私達が色を認識している、または物をみているのはそれらから光が反射して目に入ってくるからだ。


 昔のドラマの『水戸黄門』のシーンに、「この紋所が目に入らぬか!」と水戸光圀の臣下である格さんが印籠を人々に見せるところがあるが、もしかすると「それは目に入らない!」と言いたくなった人もいるのではないだろうか。

 もちろん印籠を目に入れるというのは、当然無理な話であるが、私達はそれから反射される光を目を通してみることにより、格さんが見て欲しい「紋所」を見ることができる。


 つまり、私達が物を認識するのは、「目」という感覚器官があるからこそであり、その中に色を認識する機能が備わっているからこそできることなのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る