第39話 色の3原色、4原色-2
3原色である赤、青、黄色、それに加えて白と黒というのは、色の極地にあり一番遠い存在の色という風に考えていた。また3原色は混ぜずに一緒に使うと、色の中でメリハリが生まれ、さらに人物のポジションを色によって確定してくれる。
ただ一方で、色は3原色ではなく4原色という考えもある。理由は、3原色において赤と青は必ず含まれるのにも関わらず、もう一つの色が黄色であるか緑であるかきちんと決まっていないせいだ。
私は上記に述べた考えの通り、絵の具などにおける3原色は赤、青、黄色であると思うが、赤、青、緑という3原色の組み合わせもある。そうなると黄色と緑どちらも捨てがたいのであれば、どちらも組み入れればよいのではないか、と研究者は考えたようだ。
ドイツの生理学者エヴァルト・ヘリングという人物は、4原色を提唱した人物である。彼の考えで重要なのは「反対色」という考え方で、赤、青、黄色、緑の4色が色の頂点としてあるということである。そして全てが「純粋」で色の「原色」であり、まるでまるでダイアのように4つの頂点にそれぞれの色が位置しているようになっているという。
実は、この3原色や4原色を上手く利用した作品が存在する。
その主題は「聖家族」というものだ。「聖家族」は、聖母マリアとキリストを中心に聖人を配する構図で描かれる。
例えばミケランジェロの「聖家族と幼児洗礼者ヨハネ」という作品。
これはミケランジェロが、フィレンツェ滞在時にドーニ家から依頼されて制作された作品だ。この作品の中には聖母マリア、イエス、聖ヨハネが中央にまとまって描かれてある。
作中では4原色が上手く使われているのだが、分かるだろうか。
イエスの背景にある黄色、聖母マリアの赤い服に青いドレス、そして聖ヨハネの青い服に下に来ている赤い衣。ここでは、聖母マリアと聖ヨハネが着ているものに同じ青系統の色が含まれている。
しかし、それを上手く解消しているのが、マリアが羽織っている緑色のマントだ。これが被りそうになっている色を上手く解消し、他の色との調和を担っている。ほとんど目立たないような色ではあるが、ここではとても重要な役割を持っているように私は感じる。
同じように聖家族または聖母子のでは、全て3原色または4原色が使われており、色の原色であり一番遠い色の存在たちであるからこそ、このように重要人物を沢山描き入れても、しっかり目立たせることができるのだろう。
また「聖家族」の主題では必ず3原色または4原色が使われているが、それ用いることにより、完全性を示しているのではないか、と推察する。
白と黒の組み合わせでは、白と黒とのイメージに差がありすぎて色を一緒に並べることができない。また紫など混色によって生み出されるような色は、複雑になってしまい(例えば紫であるならば、赤を強くして赤紫にしても、青を強くして青紫にしてもどちらも紫でグラデーションができてしまい、色の差異がはっきりとしない)、人物を特徴づけるようなはっきりとした色にはならない。
しかし赤、青、黄色、緑をつかうことにより、色の原色を使うことによってそこに完全性を色によって表現したのではないだろうか。
【絵画】
*「聖家族と幼児洗礼者ヨハネ」ミケランジェロ
以下、上記以外の「聖家族」をテーマにした絵画
どれも3原色、4原色の要素をもっていると感じる。気になる人は画像検索してみて欲しい。
*「カンジャーニの聖家族」1507年 ラファエロ・サンツィオ
*「小椅子の聖母」1514年 ラファエロ・サンツィオ
*「美しき女庭師」1507年 ラファエロ・サンツィオ
*「聖家族(聖家族と眠る幼児イエス)」1655年 シャルル・ブラン
*「三位一体(聖家族)」1681-82年頃 ムリーリョ
【画家】
*ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)
盛期ルネサンスの三大巨匠の一人。彫刻はもちろんのこと、絵画でも後世に残る素晴らしい作品を残している。そのほかにも建築家としての才を持っており、晩年にはサン・ピエトロ大聖堂の主任建築士として、その作業に没頭した。
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