第27話 「光」を意味する白、キリストの変容

 また、上記で述べた「無原罪の御宿り」と同じように、聖書の主題を取り上げているもののなかで「キリストの変容」という主題も「白」をつかうことによってある効果を生み出している。


 まず「キリストの変容」という主題は、イエスが父なる神へ祈りを捧げるために、ガリヤラのタボールという名前の山に聖ペテロ、聖ヤコブ、聖ヨハネの三人の弟子を連れて登山したときのことである。旧約聖書に登場する預言者・モーセとエリアが現れ、変容したキリストの傍により、そこでイエスが自分が神であることを天から告げられ、それを示す場面である。


 この主題に関する作品は3つ取り上げようと思う。一つはフラ・アンジェリコ作「キリストの変容(1437-1446年)」、もう一つがベッリーニ作「キリストの変容(1487年頃)」、最後にラファエロ作の「キリストの変容(1518-1520年)」である。 


 この場面で描かれているキリストはどの作品も中央に位置し、白い服を身に纏っている。他の作品をみても分かるが、イエスが着ている服の色は様々である。しかしここでは全ての作品がそろって「白」を用いて表現している。これは何故なのだろうか。


 私が思うに、この場面はキリストが己が神であることを示すところである。しかも天からイエスが神であるということを聞いている。そのためキリストが神の子でいかに尊いかを「白」を用いることによって他とは全く違う存在であることを示し、「白」は「光」を象徴する色でることからイエスが神の子であることを表したのだと思う。


 さて、次が最後の色になる。「黒」を見てみよう。


【絵画】

*「キリストの変容」(1437-46年) フラ・アンジェリコ


*「キリストの変容」(1518-20年) ジョヴァンニ・ベッリーニ



【画家】

*ジョヴァンニ・ベッリーニ(1433-1515)

 ヴェネツィア派という画派を確立した初期ルネサンス期のイタリア出身の画家。

 父親が画家であったことから、早くから父の工房で修行をおこない、また当時活躍していたフランドル絵画から強い影響を受ける。彼と腹違いの兄弟・ジェンティーレと共に、当時最大規模の工房を開き後に巨匠となる画家を輩出する。彼の作品の多くは大小の祭壇画や、ピエタ・磔刑などキリストを主題とするなど宗教的なものが多かったが、肖像画も多数描いていることがわかっている。

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