第14話 黄色の心理学的意味と力から、画家の「心」を見る-1
黄色は心理学的に「幸福」なイメージを与えるといわれているが、その色を多用しすぎた者はある病・症状に陥っていることを示しているのではないか、と言われている。その病とは精神病、つまり鬱などの心からくる病だ。
今までの歴史の中で、黄色を異常なまでに好んで使った画家が二人いる。
一人はゴッホ、もう一人はゴーギャンである。しかしその前に注目して欲しい画家がいる。それがオランダ人画家であるレンブラントである。
レンブラントは「夜警」を描いたことで有名である。彼は背景や周りの色を「黒」中心として暗い色にし、特定の人物や目立たせたい部分を明るい色で描くことで、まるで絵から光が放たれているかのように見せるのだ。
この方法は、レオナルド・ダ・ヴィンチが提唱していた描き方で、背景を暗くし、光を当てたいものを白に近い色で描くことで、まるで光が放たれているような感覚を人にもたらすことができる描き方だ。
そしてレンブラントが1658年頃に描いた「自画像」。
今まで描かれた作品と同様に背景は黒くすることで、人物を浮き上がらせている。しかし、この作品には豪華な服を着せてはいるものの、光が放たれるような感覚はない。
丁度この時期、レンブラントが資産運用を失敗したり、内縁から破綻し財産の競売などが行われるなど、画家の人生で最も経済的苦難を強いられた時期であったようだ。よって、自分自身にこの豪華な服を着せることで、画家としての誇りを示した、という解釈がある。
実は色彩心理学の中で、精神的に不安定な人物は黄色を見ると救われるといわれている。
理由は様々あるようだが一説に、人は幸福だと思われる色を好んだり、その色を身につけることで心の中で足りない「幸福感」を埋めようとするのだそうだ。そして黄色は色の中で一番「光」に近い色で、「白」よりも暖色系統に属するため、温かみもある。
レンブラントはこの辛い時期に黄色を使用することによって、自分の不安定な心、暗くなってしまった気持ちに明るい色を取り入れようとしたのではないだろうか。
しかし、レンブラントの色遣いは普通だ。心の不安から、自分を明るく魅せようとするのは、明るい服を着て、気持ちを高めようとすることに似ている。
それよりも黄色に依存していたのは、ゴッホとゴーギャンだ。
彼らの黄色の使いようは、レンブラントのそれとは比較にならないほど激しく、強い。時には、人の肌の色までも黄色に染めていることがあるくらいだ。
【絵画】
*「夜警」レンブラント
*「自画像」1658年 レンブラント
【画家】
*ポール・ゴーギャン(1848~1903年)
後期印象派を代表するフランス出身の画家。1848年にパリで生まれ、翌年に一家で南米のマリへ移住する。1855年(ゴーギャン6歳)までマリで過ごしたが、祖父がパリで亡くなったことから生まれ故郷フランスに戻るが、このマリでの生活が後にゴーギャンが描くこととなる、タヒチ移住への重要な役割を担ったことになる。
はじめは画家として生活していたわけではないが、カミーユ・ピサロとの出会いから印象派の画家達と交流をもつようになり、絵を描くようになる。その後サロンに作品を出展し入選したりしたことから、仕事をやめて画家一筋の人生を歩むことを決断する。後にゴッホとともに南仏のアルルを訪れともに生活し作品を作ったがだんだんゴーギャンのほうの負担が大きくなりわずか2ヶ月という短い期間でその共同生活に幕を下ろす。
その後、ゴーギャンは様々な困難にぶつかり、娘が亡くなるなどの悲しみもあって精神的にも、肉体的にも病になり53歳でこの世を去る。
*レンブラント(1606-1669)
7世紀に活躍したオランダ出身の画家。スポットライトを当てたような強い光による明瞭な明暗対比や赤褐色又は緑褐色を基調とした、輝くような色彩、場面状況を明確に伝達する劇的な運動性、登場人物に示される深い精神性を帯びた表情などが大きな特徴。1606年7月15日、中流階級の家柄の9番目の子息として生まれる。アムステルダムでバロック様式を学んだ後独立。1634年に裕福な美術商の娘サスキアと結婚し、大規模な工房を構える。弟子をとり彼らと共に数多くの肖像画、宗教画、神話画など様々なジャンルの作品を手がける。また1643年から庶民的とされる版画の制作を開始。レンブラントは生涯にわたり作品を手がけ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。