第10話 中世ヨーロッパ-1

 古代では良いイメージを持たれていた黄色は、次第に「狂気」「裏切り」「異端」「嫉妬」「臆病」などの負のイメージを付されることになる。


 その理由の一つに、色の認識に人々が敏感になってきたためであり、「光」は「白」や「黄金」で表現できる色であると気づいてしまったためである。


 昔、「白」や「黄金」という色は簡単に手に入れることはできなかった。その一方で、「黄色」は黄土などから簡単に手に入れることができた。そのため、人々の「光」は「黄色」で表現されていたのである。


 しかし人々が色を生成する技術を持つようになり、多彩な色を手に入れることができるようになると、次第に手にしにくかった元々の色に、そのイメージが移されていった(戻されていった)。


「光」は「白」へ、「黄金」は「金」へという具合である。

 そして黄金の代わりを担っていた黄色は、黄金と比べてしまうと光沢というものがない。そのため、光沢のない黄色い布は黄ばんだように見え、当時身分が低かったものが着ていた「ベージュ」と混同され、低俗のイメージがつく。さらにはくすんだ黄色は、糞尿を連想させることから汚いイメージも持たれることになった。


 さらに悪いことに、黄色は標識にも使われるように派手で目立つため、娼婦や道化、芸人など被差別者が着用する色に指定されていた。


 やがてキリスト教徒が、ヨーロッパ社会からユダヤ人を追い出すために、「黄色」という目印をつけた。読者の方の中には、「黄色いベンチ」のことをご存知の方もいるかもしれない。


 その後絵画の中でも、裏切り者ユダの衣の色が黄色で表現されていき、中世末の紋章協定で黄色は「すべての中で最も醜い色」と規定されていく。ちなみに現在でも、英語の「yellow」には俗語で「臆病者」という意味が残っている。

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