第4話 権力者の色-1

 古代の「赤」は身近な色として存在したが、中世になると「赤」を細かく分類する言葉が存在していた。ここから鮮やかさや明度の度合いなどが違う、様々な種類の「赤」があったことが伺える。


「スカーレット」という、鮮やかで美しい赤がある。日本名で言うと「緋色」のことだ。実は、この色が生まれたことにより「権力者がまとう赤」と「卑しいものが纏う色」と、同じ「赤」の中で格差が出来た。


 スカーレットは、前述したようにとても鮮やかな色で、色落ちもしにくい。

 どのようにその色を抽出していたかというと、「ケルメス染料」といって蛆虫うじむしから色を抽出していたのである。しかし、鮮やかなスカーレットの色を出すには、色を染める分の布と同じ量の虫を必要としたようで、大変お金がかかったという。それ故に、スカーレットは「権力者纏う色」という印象が付いたのだ。


「皇帝の座につくナポレオン1世」という絵は、1806年にアングルという画家によって描かれた作品である。この肖像画は題名にあるように、1804年国民投票の際、最も国民の支持を得て、フランス皇帝に就任したナポレオンボナパルトを描いたものである。



【絵画】

*「皇帝の座につくナポレオン1世」1806年 ジャン=オージュストードミニク・アングル


【画家】

*ジャン=オージュストードミニク・アングル

 1780年装飾画家の息子として、フランスのモントーパンに生まれる。新古典主義の最後の巨匠と言われ、ダヴィッドを師匠に持つ。

 当時、最も拡張が高いとされた歴史がを始め、神話が、宗教が、さらには官能性豊かな裸婦、肖像画、風景画など様々な題材を手掛ける。晩年期は、若い画家らの指導者的立場についていたが、1867年パリで死去。

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