クマさんと、ワンナイトドリーム その2 前編
食事が終わる頃になると、僕はすっかりいい気分になっていました。
お酒がいい感じでまわっていたのもあるんだけど、ポリンカが僕の話を笑顔で聞いてくれていたのが大きく影響していたと思います。
元々話ベタだし、女の子が喜ぶような気の利いた会話は出来ていないと思します。
でも、ポリンカは
「うんうんっス」
「それでそれで、っス?」
と、笑顔で楽しそうに、そんな僕の話を聞いてくれていたんです。
生前、会社の飲み会に行っても、僕より若い同僚達は会話をするよりもスマホをいじっている時間の方が長いもんだから、飲み会だっていうのにまるでお通夜のような空気が漂っていたものでした。
だいたいそんな飲み会って、料理も酒もこの上なくまずく感じた記憶しかありません。
会話がはずむだけで、こんなにも違うもんなんだな。
僕は、ポリンカと話をしながらそんなことを実感していました。
いつの間にか僕の隣に座って、僕の腕に抱きつくようにしながら話を聞いてくれていたポリンカ。
ポリンカも酔っ払っているようで、顔が真っ赤になっていて、やたらと笑い続けている気がしないでもありません。
その胸元に目がいったり、腕に伝わってくるポリンカのおっぱいの感触に思わず鼻の下がのびたりしていた僕だったのですが……
そんな僕の脳裏には、ある人の顔が浮かんでいました。
……あぁ、シャルロッタ……
シャルロッタの顔が脳裏に浮かぶと同時に、急速に酔いが冷めていきました。
「……ポリンカさん、今日はありがとうございました、とっても楽しい時間をすごせました」
僕はそう言うと、唐突に席をたつと、ペコリと頭を下げました
「あ、クマ氏……せっかくなんだし、もう少しいいじゃないっスか」
ポリンカが笑いながら僕の手を掴みました。
「お、お気遣いは嬉しいんですけど、明日は早めの仕事もありますので、き、今日はここまでにさせてください」
ポリンカさんの笑顔を前にして若干ドギマギしてしまった僕なのですが、少し引きつった笑顔を浮かべながらポリンカさんの部屋を後にしていきました。
……今の僕は、シャルロッタの顔を見たくなっていたんです。頭の中には、もうシャルロッタの顔しか浮かんでいませんでした。
無意識のうちに超身体能力を使用して街道をすごい速さで移動していたように思います。
シャルロッタの邸宅に戻った僕は、まっすぐにシャルロッタの部屋へと移動していきました。
本来、もう夜ですし、自重すべきだったはずなのですが、酔っ払っているのもあって、気持ちを抑えることが出来ませんでした。
コンコン
シャルロッタの部屋をノックしたんだけど……反応がありません。
コンコン
もう一回……でも、やはり反応はありません。
(もう寝ちゃったのかな?)
少しがっかりしながら、僕は自室へと戻っていきました。
すると……そこにシャルロッタの姿がありました。
シャルロッタは、僕の部屋の扉の前に座っていたんです。
いわゆる体育座りのような格好で、膝に顔を埋めたままジッとしている。
「……シャルロッタ?」
僕が声をかけると、シャルロッタはビクッと体を震わせて、ゆっくりと顔をあげた。
「……く、クマ殿……」
びっくりした様子で顔をあげたシャルロッタは、
「あ、い、いや……その、なんじゃ……ちょっとトイレに行こうと思っての……その、ちょっと帰り道を間違えてしまったというか……べべべ別に、クマ殿の顔を見たくて仕方なかったとか、そういうわけではないのじゃぞ」
慌てた様子で一気にまくし立てていたんだけど……え? つまり、僕の顔を見たくて待っていてくれたって事?
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