第7話 真相。(その1)

僕たちは、草上川キャンプ場に来た。美しい川、威厳の山はあるが、お父さんの言っていた通りもう廃れていて、人がいなかった。風の音だけがするそのキャンプ場は、不気味な雰囲気を漂わせている。キャンプだからか、2人ともおしゃれとは言えない格好だった。でも、水色のマフラーをした美香さんはとても愛おしかった。

「本当のことを知る前に、バーベキューでもしようよ。これで、会うの最後かもしれないし。」

寂しそうにそう言った美香さんに、僕は声をかけることは出来なかった。

3人でしたバーベキューは、本当に楽しかった。

「楽しかったね。じゃあ、2人に真実を知ってもらおうかな。」

バーベキューをしていた時の美香さんとは打って変わって、寂しそうにそう言った。

寂しそうにする美香さんを見て、正直僕は怖かった。怖かったけど、僕はもう覚悟を決めたんだ。

美香さんに連れられて、草上山に入った。

「あ!」と僕は声を上げてしまった。夢で見た森と同じだったからだ。しかし、隣にいたさくらさんはなぜか落ち着いている。

山の奥深くまで入った時、美香さんは立ち止まって、

「この下に、真実が隠されているの。」

そう言って、山の中の柔らかい土を掘り始めた。

すると、壺が出てきた。その壺を開けた瞬間、僕は気を失いそうになった。人骨が入っていたからだ。

「え?待って、なんでここに骨があるの?警察が来たんじゃないの?」

さくらさんは驚いた顔でそう言った。さくらさんが50年前の新聞記事の中に、草上川で起きた殺人事件のことが載っていたそうだ。

「私は前世でジャーナリストをしていて、政府の闇を知りすぎた私は、政府の人間に命を狙われるようになった。そして、今からちょうど50年前に私は殺された。ただ、警察は来なかった。多分圧力によるものだと思う。なぜか私は前世と今で、名前が変わらなかった。」

「名前が変わらなかったから、50年前の新聞記事に美香の名前が載っていたわけね。」

さくらさんは落ち着いた様子でそう言っていた。だけどぼくは、前世なんて非現実的な話をされて、僕は理解が追いつかなかった。美香さんは一度殺されている?でも誰が?

「さくらは50年前でも私と友達だった。2人で取材をしている時は、とても楽しかった。おそらくさくらは、殺された私の記事を個人的に書いた。だから、新聞記事に私のことが書かれていたのよ。でも、私が死んだせいで心を病んだ前世のさくらは、自殺してしまった。」

さくらさんは途切れ途切れの前世の記憶の点が、線で結ばれたようだった。

「なら、健太は、」

さくらさんがそう言いかけた瞬間、僕は美香さんの言葉を思い出した。

「もし本当のことを知ったとして、自分のことを許せると思う?」

わかった。僕は前世で、美香さんを殺した。僕のせいでさくらさんは自殺した。信じたくなかった。好きな人とその友達を僕は前世で殺していたなんて、絶対信じたくない。

「あなたは、私を殺した。」

美香さんは、そんな僕にとどめを刺すかのように、冷酷に言ってきた。僕は気を失いそうになった。美香さんの笑顔や、手を振る姿が頭を駆け巡った。

僕は、僕は、僕は、、、、


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