第4話 国立図書館にて。

永岡町駅で、さくらさんと待ち合わせをした。さくらさんは全身黒でおしゃれには興味が無さそうだったから安心した。僕もおしゃれには興味がなくて、さくらさんとペアルックだった。国立図書館は想像より大きくて、少し興奮した。それに対してさくらさんは、行き慣れた料理屋に入るような冷静さだ。

「美香さんについて調べるって、何を調べるんですか?」

さくらさんは顔を赤くして、

「ちょっと行ってみたかっただけ。特にこれってのはない。」

と答えた。僕はがっかりした。大切な休みを返せと思う。僕はさくらさんに昨日見た夢の話をした。すると、さくらさんは驚いていた。

「私も、それに似た夢を見た。でも寂しいじゃなくて、がっかりって言ってた。」

僕は呆気にとられた。あと、寂しいとがっかりの差はなんなんだろう。

「さくらさんと美香さんが初めて出会ったのっていつですか?」

「中学1年の時、同じクラスだったから。」

「でも、夢の中の美香さんはもっと前にあなたと出会ったと思ってるんじゃないですか?」

「確かに、でも私は覚えてないわ。夢の中の話でしょ。そんなに考えなくていいんじゃない?」

確かに夢の中の話だが、お互いに似た夢を見ているのが、どうしても引っ掛かった。あと、さくらさんはさっきから50年前の新聞記事を漁っているのも気になった。

「なんで、50年前のなんですか?」

「なんとなく。」

僕は、さくらさんにこれ以上質問するのをやめて、何も調べずにただ昨日見た夢のことを考えていた。あの森はどこなんだろうか、寂しいってどういう意味なんだろうか。そんなことを考えていると、帰る時間になった。さくらさんはずっと、50年前の新聞記事を漁っていたようだ。何かわかったか聞きたかったが、さくらさんが黒色に染まっていることが、なんとなくわかった。

それを聞く勇気は、僕にはなかった。

その日はさくらさんと別れを告げ、僕は家に帰った。

その夜もまた、不思議な夢を見た。僕は泣きながら走っている。土砂降りの雨の中だから、周りには泣いていることはバレないだろう。ただ、この場所もまた、見覚えのある場所だった。

「結局、俺は何も出来ないんだ。」

何故か僕はそう言った。周りには普通の建物しかないのに、音は反射して、何回も僕の声が聞こえてくる。それに耐えきれなくて、慌てて目を覚ました。

僕は、自分でも驚くほど汗だくだった。

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