第2話 結局、僕は。
今日もいつも通り電車に乗って、美香さんに話しかける。しかし今日は1人ではないようだ。美香さんは、彼女の隣にいた女の子に僕を友達だと紹介してくれた。自分を友達だと認めてくれてるのかと、ちょっと嬉しかった。
「初めまして健太くん!私はさくら!よろしくね!」
さくらさんは、初対面でも明るく接してくれた。
「LINE交換しよ!」
と言って、QRコードを出してきた。ついでに美香さんも交換しようと言ってきた。初対面の人とLINEを交換したのは初めてで新鮮だったけど、美香さんと交換できたことの方が、僕は嬉しかった。どちらのアイコンも2人のツーショットで、本当に仲がいいんだなと思った。
ただ、2人が楽しそうに話しているのに割って入れない自分がいた。さくらさんにも言葉を返せていなかった。少しむずむずしながら、美香さんの笑顔を見ていた。自分と話している時は全く見せてくれなかった、最高の笑顔だった。結局、僕は2番手なんだと思った。昔からそうだった。人と仲良くなりきれない。上辺だけの関係で、親友と言えるようなやつは、いなかった。
そんなことを考えていると、僕が降りる駅に電車は着いた。美香さんとさくらさんは笑って手を振ってくれたけど、前までのように心は橙色にはならなかった。
何も話をすることなく、電車を降りる日々が続いた。僕の朝は、青色から灰色に戻り始めていた。そんな日の帰りの電車で、美香さんとたまたま出会った。美香さんは優しかった。
「最近話してないよね。あんまり気を使わないで、私に話しかけてきてね。」
と言ってくれた。
僕は、
「ありがとう。」
と言って、別に気を使っているわけじゃなくて、ただ話の輪に入る勇気がないだけなのを隠した。
さくらさんがいないのに、前みたいに美香さんと話せなかった。
いつも藍色の夜が、今日は黒色だった。自分の欠点を見せつけられたような気がしていたからだ。
その日はベッドに入って少し涙を流した。自分に自信がなくて、無駄に怖がって、やりたいことができない自分が、ずっと前から嫌いだった。
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