第五十四話『quiet』

 

 リベンが作成し。

 ユリスが改造した、あのプロトタイプ。


 其れが死に際に放ったモノが、暗号である。

 レネですら解読が不可能だったあの膨大な文字列は、一体何だったのか。


 後にユリスに聞いてはみたが『分からない』と。

 リベンを裏切った後に報酬として送られたモノらしいが、彼にすら価値が不明だと。


 リベンが作成し。

 ユリスが改造した、あのプロトタイプ。


 其れが死に際に放ったモノが、暗号である。

 レネですら解読が不可能だったあの膨大な文字列は、一体何だったのか。


 後にユリスに聞いてはみたが『分からない』と。

 リベンを裏切った後に報酬として送られたモノらしいが、彼にすら価値が不明だと。


 兎に角情報ならば入れ込まない理由は無いとし、入れた、と。


 そう言われた。

 まぁ分かってはいた。


 だから最初にエルシーと合った直後、憶えておいたその暗号に付いて話してみた。

 すると『シエル古代文字ではないか』と言われた。


 確かに、そう言われてみればそうだった。


 かの古代文字は、レネには偶然か理解し得ないモノだ。

 しかし一部のシエル諜報員や王族には、前提知識として必要な学である。


 ……記憶から抜け落ちていた。

 度重なる身体の移動の所為かも知れないが。


 言われたことで、やっと気がついた。


 と言う訳でそれを解読し、その文をエルシーに送り。

 解析してもらう形で……つまり任務として彼女に提示した。


 今からその解析結果を聞きに行く所なのだが──────。


 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



 数日前。

 暖炉灯る一室にて、エルシーは解析を行なっていた。


「古代文字だけではなく、これ程までに暗号が複雑だとは……。

 ですが解析は終えました。後はこれの意味を理解するのみ。

 ──────電脳のカードキーの様ですね。見てみますか」


 キーボードを淀みなく叩き、解析し終えた数列を入れてみる。

 その先に現れた、とある『報告書』に、エルシーは戦慄を覚えた。


「今直ぐ報告しないと───」


 直ぐ様暗号化し、己が主人の元へそれを送っていく。

 その、時。


 ──────部屋の扉が、ゆっくりと空いた音がした。


「───!!!?」


 発砲。

 硝煙も伴わない静かな襲撃。


 卓上に流れるは鮮血。

 粉砕された液晶の数々。


 華麗な暗殺に、襲撃者は笑った。


「エルシー。君の悪い所は察しが良すぎる所だ。

 ──────本当に、淀まなければ良い人材だったんだがねぇ」


 暗号は未だ送られ続け。

 程なく、扉は閉められる。



 ──────以来、轟いたのは悲鳴のみだった。

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