第四十一話『クソ野郎』

 

 レジスタンスキャンプを発つ時だった。

 私が荷造りを終えて去ろうと言う時に、彼らはこう言って止めた。


「まぁ待てよ、エクセル」


 手を挙げて止めるは、リーグとリベン。

 両方共『り』から始まる、仲良い二人組だ。


 最近では、リアルもそう言う一族では無いのかと思ってしまう。

 まぁ、そう名付けた方が悪いのであろうが。


「何でしょうか」

「お前に頼みたい事がある。どうせ帝国首都まで難なく行くんだろ?」


 リベンはそう言いながら、ある写真を渡してきた。

 ……見たことも無い。髪がボサボサの陰オーラを醸し出す男性だ。


「───誰ですか、この人」


 金髪でも無い。ただ、私と同い年に見えるだけだ。

 私がそう尋ねると、リーグは悪夢を思い出す様に告げた。


「姉さんのダチだ。俺の、友達でも在った人間だ」

「……友達ですか。───その人の写真を渡して、何かの意味が?」

「あるさ。そいつはとある名門校で、お前が昨日倒したやつみたいな兵器を作ってる」

「学生なのに血の気が荒いことで」


 鼻で笑いを零し、そう呟く。

 リーグは言った。


「もし、その人を見付けたら連絡を下さい」

「……何をするつもりですか?」

「エクセル。それは知らなくて良いことだ」

「リベンさん。───なら私が手伝う理由も無いのでは?」


 私がそういうと、リベンは顔を硬らせた。

 否定する訳でもない。彼女は煽る様に告げた。


「───借りを忘れたのか?」


 それに対し、私は咄嗟に首筋の機械をさすっていた。

 ……確かに。忘れていましたね。


 その表情の変化を読み取ると、リーグは言った。


「話が分かる人で有難い」

「という訳でエクセル。その対象の名を告げるぞ」


 リベンは息を吸い込み、

 これまでに無い睨みを伴って、その単語を告げた。


「帝国第一二年、機械兵科。名をユリス・キャップ」


 そして彼女は続け様に。

 私に事を託す様に、こう言った。



『──────私達を裏切った、クソ野郎の名だ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る