第二十話『検査』

 食料を持ち、機械を使って頭髪を変えて。

 バッグに物を取り入れて、立つ。


 そして朝の太陽が目を突き刺す、その時に。


「───では、また」

「ああ、例の件……遵守してくれよ?」


 頷き合った後に、エクセルは彼らの元を去った。

 それに手を振る事無く。


 二人で呟き合うリーグとリベンは、憂う様に言っていた。


「……本当にこれで良かったんですかい、リベン姉さん」

「良いんだよ。今のままじゃ、あたしらも死ぬからな」

「後は首筋の機械がバレなきゃ良いんですがね……」

「まあ、それで死んだらそれまでの奴だったって事だ。期待しておけ」


 送る二人。

 その目には多少か、期待の眼差しが籠っていたに違いないだろう。



 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



「レネ、行けると思います?」

「ああ、あそこですか?多分行けるんじゃないですかねー」


 見つめる先には、以前殺戮して通った第一関所が存在している。

 ここを通った先の第二関所を越えれば、帝国首都。


「でも、正攻法で通るとなると、少し厳しい山ですかね」

「まぁ第一関所の審査さえ通れば良いんですし、ね!行きましょ!」

「……言わずとも、元からそのつもりです」


 銃は持っていない。検査の時にバレるから。

 しかし緊急時の抵抗用のナイフは、胸元に仕込んでいる。


 首筋に仕込んだ機械も、長髪で若干と言えど隠している。

 ……これを発覚させない様に、上手く立ち回りたいところですね。


 歩み出す私の足。

 それはいずれ、第一関所に辿り着く。


 見上げるまでに大きくなった門戸。

 その前で少し佇んでいると、銃を構えた機械兵オートマタが寄ってきた。


「───入国証のご提示を」


 機械的な声だったが、別にその言葉が予想外だったと言うわけでも無い。

 まぁ事実、私は正規の入国証など持ち合わせてすらいない。


 だが、非正規のならば……持っている。

 私は奥で私の様子を伺っている男性を一瞥し、バックに手を伸ばした。


「少し、お待ちを」


 がさ、ごそと。

 食料を入れた所とは別のスペースにある、白い書面を取り出して。


「───どうぞ」

「拝見致します」


 受け取った機械兵オートマタは、背後にいる警備隊長と思しき男性に、その入国証を見せに行った。

 あれが、本当に認証されるかは分からない。


 淡々とした仮面の下に緊張を味わいながら、私は待つ。

 その間、レネがその不安を煽る様に、囁いてきた。


「ニセ入国証、許可されると良いですねぇ」

「リーグさんの腕を信じるのみでしょう」

「でも凄いですよね。たった一晩であんなの作れるなんて」

「手先が器用なんでしょうね」


 あのニセ入国証を作成したのは、あのリーグだ。

 見た目からして、戦いしか出来ない柄だと思ってましたが……。


 予想に反しましたね。

 ───で、後は……結果を待つのみ。


 少し待つと、機械兵オートマタが戻ってきた。

 そして、告げられた判定は……。


「入国証を認可。───次は、荷物検査を行います」


 これはホッとして良いでしょう。

 しかしそれも束の間。


 ───ここからが鬼門の、荷物検査ですね。

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