第十九話「光明」

 黎明の時。

 未だ静かなレジスタンス達の拠点。


 リベンは私を拠点の中に招き入れた。

 そこに彼女を姉さんと慕う男性も混ざってきた。


 名前を尋ねると彼はリーグだ、と言った。

 そしてその傍らでリベンが作業を始めると当時に、私は言った。


「……で、話とは?」

「ぁあ。まずお前に聞きたいんだが……多分、帝国首都に行きたいんだろ?」

「……まぁ、そうですが」


 私がそれに対して頷くと、横のリーグは言った。


「おいおい、マジかよ」

「何か問題でも?」

「エクセルさん。単刀直入に言うが、それは無理だと思うぞ」

「……警備の問題、という事ですか」


 察してそう言うと、リベンは工具から火花を散らして呟いた。


「そうだねぇ。今の関所の警備は異常なまでに強化されてるからな」


 その言葉に私は驚くことは無かった。

 しかし五年と言う空白の間に、何の改革が起きたのかもわからない。

 私は小さくレネに囁いて、聞いてみる事にした。


(事実ですか、レネ)

(……そうですよ。武装もさることながら、物質の検閲も厳しいですねぇ)

(髪を染めるのは?)

(それ用の探知機をご丁寧に作ってますので無理ですねぇ)

(この警戒の仕方……十中八苦、私の襲撃事件が引き金ですかね)

(でしょうねぇ)


 己の愚行さに少し俯いて溜息を吐きながらも。

 私は顔を上げ、告げた。


「兎に角。───解決する策は、あるのですか?」


 そう聞くと、リベンは笑った。


「まぁ、今のお前には無理だろうねぇ。───でもあたし達が手を貸せば……」

「……姉さん、もしかしてあの部品を手に入れたんですかい?!」

「まあな。一人分は出来るだろう」

「マジか!エクセルさん、あんた運が良かったな!」


 リーグは私の肩を叩き、喜ぶ様に笑ってきた。

 ですが、わからない。


「……話の流れが、読めないのですが」

「なぁ、王子エクセル。あたし前に言ったよな。金髪が問題だって」

「確かに、そう言ってましたね」

「それの解決策が───これだよ」


 作業を終えたらしいリベンは、完成品を手にもって見せつけてきた。

 その口角は自信に塗れて、大きく上がっていた。


「───それは?」


 非常に薄い、六角形をした肌色の機械。

 武器……にはなり得なさそうなのは、一目で判別が付いた。


「まぁ、見てもらった方がはえぇかもな。じゃあ……」


 リベンはそう呟くと、その機械を首筋に貼り付けた。

 ……その瞬間、彼女の黒みがかった金髪は───混じりっけ無しの茶髪に変わった。


「元々ある頭髪に、新たな色を投射する機械だ。どうだ、驚いたか?」


 リベンは自慢する様に、私の眼を見詰めてきた。

 しかしそれに私が反応を示す前に、横のリーグが騒ぎ出した。


「す、すげぇよ姉さん、天才だ!!!!ものの数分で───!!」

「馬鹿は黙ってろ。───まぁ、これなら髪染めなくても大丈夫って事だ」

「……確かに、今の時代は髪を染めるのも叶わない。

 しかしそれならば、最小限のリスクで検問を突破出来るやも知れませんね」


 見えてきた小さい光明。

 色々とクリアしなければならない課題はあるものの、復讐へ一歩進んだのは確か。


「だろ?……じゃあ、いつ行くんだ?」


 リベンは首の機械を外しながら、そう聞いてきた。

 まぁ、聞くまでも無いことなのですが。


「──────出来れば、明日にでも」

「そう言うと思ってたぜ。エクセル第一王子」


 リベンは持っていた機械を投げて私に渡し、少し微笑んだ。

 少しでも信用してくれた、と踏んで大丈夫そうです。


「部品の都合でお前一人しか行けないが……うん。これは貸しだぞ」

「ええ、必ず返しますよ。───貴方の家族の為にも」

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