第12話 ボスに挑もう!<上>
草原フィールドボスエリア:荒れ果てた大地ではわたし達を出迎えるようにしてフィールドボスである『レンゼルフィア』が出迎えてくれました。
アーサーさんの話では、最初の行動パターン次第では全滅もあり得るので最大限注意して欲しいとのことです。
が、所詮地べたに這いつくばっている犬っころ風情、本気を出せばわたしの相手ではありません。
その “やる気” に気づいたのでしょう、マリさんは「手加減してやってね」と口添えしてきました。
「わかってるよ」と返して、行動開始です。
こちらから何もしなくても『レンゼルフィア』は既にこちらへ釘付けです。熱烈アピールとばかりにウィンクとかして見せてきます。
あの……反応に困るのでやめてもらって良いですか?
さて、精霊は《精霊眼》と《魔法解析》を組み合わせるとこのようなことがわかります。俗に言う鑑定ですが、状態異常の有無や現在のHPがゲージではなく数値で見れるのも大きいです。その上格上でも詳細表示出来るんですよ。凄いでしょう?
★草原フィールドボス
「暴虐」のレンゼルフィア
LV15
種族:
《種族特性:10秒毎に1%HP回復》
属性:樹/地/獣
弱点:火/闇/水/毒
HP:13200/15000
MP:600/800
スタミナ:60%
満腹度:20%(空腹状態)
筋力:180
体力:200
知力:80
精神:80
敏捷:250
器用:60
幸運:0
■アタックスキル
「噛み砕く」獣属性攻撃/出血+スタミナ回復無効付与
「なぎ払う」獣属性攻撃/防御無視+出血付与
「王者の咆哮」獣属性補助/筋力、体力上昇効果
「グラビトン」地属性補助/範囲鈍足効果
「ロックバインド」地属性攻撃/
□サポートスキル
「瞬歩」移動時スタミナの消費を抑える
「身構える」スタミナ回復率2%アップ
ふむーちょっとめんどい相手だね。これを草原に据える運営の底意地の悪さと来たらどういうことなんでしょうか。
HPもさることながらその行動パターンの多さに為すすべもなく蹂躙されるのは最もですね。倒されたら再度リスポーンするまでフィールドモンスターが弱体化するとはいえ……それを踏まえても強すぎじゃないでしょうか?
もはやレイドクラスですよ、これ。
取り敢えずパーティチャットで作戦を立案しながらその都度提案をして行きましょうかね。
ミュウ:戦況どうですかー?
上空から見た限りではまだ接敵してないようですね。マリさんに近づいてもらいましょうか。いいアングルです、グッジョブですよー。
アーサー:やっぱこいつだけは別格だわ。付け入る隙がねー
アーサーさんは獲物のストーンハンマーを構えながら臨戦態勢です。先程からわたしからのヘイトを剥がそうとスキルを使ってくれてますが、反応は薄いようです。スタミナを無駄に消費させてごめんね。
ラディ:ほんとね、迂闊に近寄れないわ
ラディさんも同じく、といったところでしょう。『レンゼルフィア』もHPが減っているとはいえ、じわじわと回復していってます。回復しきる前に仕掛けたいですね。少し提案をして見ましょうか。
ミュウ:隙が出来れば戦えそうですか? あと弱点は火、闇、水、毒らしいです。だれか毒を作成できる方はいませんか? HP微回復持ちだからそれを相殺しておきたいです
リチャード:出番きたー! 毒なら作れるっすよ、任せて欲しいっす。でも5分欲しいっす
リチャードさんは毒も扱えるジョブでしたか。LVはまだ4と低いですが、効果を消すのが目的ですから威力は関係ありません。5分なら余裕で稼げますね。毒は彼に頼みましょう。
カイン:HP微回復持ちとかってマジかよ。そんな情報どこで拾った? 酒場じゃ聞いたことないぜ?
おっと、もっともな意見ですね。
ちゃんと説明しないとパーティに亀裂が入ってしまいます。
これはマリさんがわたしのPRの為だけに用意してくれた活躍の機会なんですから、これを活かしませんとね。
ミュウ:精霊なら相手の残りHP、MP、弱点、種族特性、ステータス、患ってる状態異常の有無、スキルの種類とか仕掛けてくる気配とかわかるよー。その時は教えるね
カイン:おいおい、精霊って超有能じゃねーか。オレはさっきから驚きっぱなしなんだが
カインさんは戦闘中だというのに無防備な格好で驚いてました。おやおや『レンゼルフィア』に見られてますよ?
リージュ:ほんと……なんでだれもやらないんだろ
リージュさん、良かったらやってみませんか? 火力も高いドライアドとかオススメですよ。エルフをやっているんならMPが実質無限のありがたみがわかりますよね? それにわたしもドライアド仲間が欲しいですし。
アーサー:そりゃ情報どおりだからだろうな。強い=弱点が多いの法則だ
鋭い……アーサーさんの言う通りです。精霊は扱いにくいことであまりにも有名です。でもちゃんと強いんですよ。今回を機にあっと言わせちゃいますから。
ラディ:カイン、無駄話してないで準備しな。あちらさん、どうやら準備ができたみたいだよ!
あらあら怒られてしまいましたね。このお二人、付き合っているのでしょうか?
馴れ馴れしいと言うか、信頼し合っている感じがなんともいえませんね。見ていてニマニマしてしまいます。
カイン:あいよ、ラディ。 オラァ! 犬っころ! こっちを向きな! 【
ラディさんからの一喝で先ほどまでの和やかな雰囲気は消し飛び、カインさんはその顔に緊張の色を残しながらも注意を引くように吠えました。
カインさんの武器は身の丈ほどもあるバスタードソード。それを遠心力で振り回し、下からカチ上げるようにして『レンゼルフィア』の顎を捉えます。
しかし『レンゼルフィア』はそれをつまらそうに眺め、ヒョイっと頭を動かして躱します。
見てから回避余裕でしたーと言わんばかりの『レンゼルフィア』の態度にカインさんは苦虫を噛み潰した表情を浮かべます。
躱された事で態勢を崩し、そこへラディさんが後方から小弓でやを連射して援護。カインさんへ集まったヘイトを一瞬だけそらし、その間にカインさんは態勢を整えました。
これぞコンビネーションて感じですよね。凄いです。
アーサー:うっし、オレらも行くか、リージュ、時を稼ぐぞ。リッチに繋げるんだ
リージュ:わかりました! リチャードさん、頼みますね
リチャード:了解っす。出来たら知らせるっすよ!
ここも信頼関係が出来上がってるね。
自分の仕事に張り切っているリチャードさんを守るようにアーサーさんが前に出てカインさんと肩を並べて攻撃を仕掛けます。
武器の重さで叩き斬るカインさんに対して、筋力で叩き潰すアーサーさん。どちらも攻撃時にスタミナを消費するタイプですので順番に叩き合って消費を抑えてるようでした。
『レンゼルフィア』もこれには少し鬱陶しそうです。
ラディさんの微ダメージによるヘイト剥がしと、リージュさんによるスタミナ回復バフでアーサーさんとカインさん達は攻撃を継続して当て続けました。
そしてHPが12000に差し掛かった時、『レンゼルフィア』の様子見が終わり、本格的に行動を開始しました。
初めに行った行動は「王者の咆哮」からの「グラビトン」。
まるで咆哮に鈍足効果でもあるような使い方ですが、問題はそこではありません。
二回行動。これが第二ラウンド開始の合図になりました。
形成は逆転した……と言うのは言い過ぎですね。今まで不動だった相手が動き始めた。それだけでメンバー達は翻弄されてしまいました。
なんといっても敏捷250の暴力。
それを瞬歩でスタミナを温存しながら忍び寄ってくるんですよ。
わたしも【ノック】でメンバーを陰ながら守ってます。ええ、わたしは有能ですからね。
マリさんなんかはパーティチャットで頑張れーだの、畳み掛けろーだの、よくやったーだのと応援しかしてません。
彼女はわたしの足として働いてくれてますからね……あ、もう少し近づいて。うんうんその位置取りいいよー。
はい、【ノック:横方向/中】。精霊眼で置きたいところに置けて、その上向きも威力も自在なのはやはり強すぎますよね。
上から見たら死角になるような場所でも精霊眼なら透過させて置けますもん。
状況は変わらないですけど動き回ったおかげで『レンゼルフィア』はスタミナ回復に回ったようですね。マリさんもそれを見て分かったのかメンバー達へ労いの言葉を送ります。
マリ:あちらさんはスタミナ回復に専念してるみたいねー。いい調子よー。ミュウさん、向こうの残りHPは?
ミュウ:ちょっとまってー……うん、そうだね残り10000とちょっと。ここで回復させたくないから毒状態にさせよう。リチャードさん、準備は?
リチャード:いつでもいいっすよ!
マリ:よーし、んじゃここから激しくなると思うからがんばろーね。 えい、えい、お──!
マリさんの気の抜けた応援に一同は各々のタイミングで活力をみなぎらせていったようですね。
カイン:うちのリーダーは呑気だね、どうも
ラディ:ホントね。でもヘイト取りを率先してくれて助かってるわ、ここまでスタミナが維持できてる状態は想定出来なかったわ
アーサー:違いない。リージュ、残りMPは?
リージュ:残り200です。ここまで戦ってこんなに残ってることもないですよ、普通は。だいぶリーダーに助けられてますね
リチャード:これも精霊効果っすか
アーサー:かもな……っと、スタミナが戻った、こちらも動くとしよう。
カインさん、10秒稼げるか? 大技で少しあのイヌッコロの鼻っ柱を叩いて躾けてやりたい
カイン:いいねぇ、乗った。ラディ、援護を頼むぞ
ラディ:了解。でも矢の数が心許ないしあまり後ろに溢さないでよ?
リージュ:私も手伝います
リチャード:俺っちだってやるっすよ!
マリ:よーし皆の衆、行動開始!
こうしてマリさん指導の元、大規模討伐戦が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます