第8話 偉大な哲学者キルケゴール



【保険調査員3号の調査報告書3枚目に添付 被害者Jさんの事例】


 

 被害者Jさんは、新種の作物を使った醸造酒を研究する酒造ギルドで働く30代後半の中年男性。

 下毛野のキャバクラ「ナル・カポネ」(一人だけオカマが混じってるので、カマクラと人は呼んでいる場所)が、酒造ギルドの総務部の接待の場所に指定されているのだが、被害者Jさんが、仲間と共に訪れた「ナル・カポネ」で、カマママである上名月ノジェルが、ドアを開けた時、被害者Aさんのように、衝撃波で5メートル吹っ飛んだ訳ではないが、加害者であるノジェル嬢が被害者Jさんを一瞥いちべつするなり、


「あんたは、入っちゃダメ!


 上名月ノジェルに、入店を拒まれた被害者Jさんの事例。


「確かに被害者Jさんは、デンマークの有名哲学者のキルケゴールのように、せむしと呼ばれるような体をしているけど、すごくいい奴なんだよ。だけどあの上名月ノジェルってオカマのキャバクラママは、被害者Jさんを一目見るなり、入店を拒むんだぜ。俺達も、被害者Jさんだけ帰す訳にはいかないから、俺達全員で入店せずに帰ったんだけどさ」


 ここに出て来るキルケゴールとは、デンマークの偉大な哲学者で「あれか、これか」等の著作があり、孤独者の主体性に真理があると、キリスト教神学と対立し、後の実存主義の骨格を固めた哲学者の事だが、キルケとは海の魔女で船乗りを豚に変えてしまう存在であり、ゴールとはガリラヤ、ギリシャを意味する言葉でもある。


 被害者Jさんと共に入店しようとした同行者Kさんの談話


「いやあ、あの総務部のオカマママと言うか……。有名歌手が歌っている歌詞にもあるけど、口角を上げて、不気味な笑みを浮かべて、何回も笑うような奴なんすよ。自分の虎を見つけると、猫なで声を出して、なんか自分の主君でもないのに、時代劇口調ですり寄りだすんすけど、なんか鳥肌が立つというか、サブイボが立つというか、サブキャラがサブちゃんで、オカマが三郎なのか、それとも次郎なのか? パン君なのかもわからないような存在で、酒造ギルド組合の本部で対策会議が取られているんすけど、何回会議が行われたのか、知りたいっすか?」




【保険調査員3号が聞いた話】



① ノジェルが自分で鏡を見て、メイクをするように仕向けるにはどうしたらよいのでしょうか? という酒造工場総務から酒造ギルド本部へ泣きが入った回数が、113回を数えたという工場伝説。



② ノジェルがオカマ男性だったと仮定した時、彼のイチモツが左曲がりなのか、右曲がりなのかを確認する為の手段を考える会議は、58回を数えたという工場伝説。



③ 有名歌手を「ナル・カポネ」に招待し、ライブを計画するも、歌手に固辞された回数は589回を数えたという伝説。



④ その歌手の歌の歌詞にある「モンスター」という呼称が、朝のシャワー一回で石鹸を一個丸ごと使い果たすという、顔だけに石鹸一個丸ごと一回で使い切る、顔の無駄遣い伝説は、まだ連続記録を更新し続けているというギネス記録に挑戦しようとしているのか、決して本人に聞いてはいけないという暗黙のルールが発生し続けているという。



⑤ 全ての人間に気に入られたいと考えているノジェル嬢にとっては、一人でも自分を嫌っていると分かると、無理矢理自分を好きにならせようとする裏工作に金を使い果たし、ノジェル嬢が居候している家が借金の抵当に入り、借金の差し押さえ、家の家財道具に貼られた差し押さえの紙をはがしまくり、その度に罰金が発生し、借金が膨らんでいるのに、また胸にシリコンを注入する豊胸手術で借金が膨らんでしまったという笑い話が発生しているが、皆がマスクをしている状況化でしか聞く事が出来ないという都市伝説。



⑥ ノジェル嬢が足を組み替える事を確認しようと派遣された調査員が失踪した事件について。右足が下なのか、左足が下なのかの問題と、足の組み替えが可能だったかは、ノジェル嬢が勤務する酒造ギルド支部で、四肢障害の振りをしている事を見抜いた同僚の訴えで、どちらの足が下にあるのかの確認の為に派遣される調査員の選考会議に出されるお煎餅の銘柄とお茶の本数を経理で落とせるかどうかの判断を本部に仰ぐべきなのか、仰ぐべきではないかの会議を別の場所で開く意味があるのかどうかを諮問委員会へ電話で問い合わせるべきかどうかを悩む経理部の女性が、電話の前で悩む時間をストップウオッチで計測する為の機器を配達に頼むべきか、現地調達するかの問題について、考える経理部女性の健康状態を心配する会が、男性社員諸氏で結成されたが、その会合の場所として勧められた「ナル・カポネ」で、被害者Jさんが追い出された事で、その会議が開かれず、幻の会議になったという工場伝説。



⑦ 特別でもないノジェル嬢が自分を特別だと思い込んだ理由を考えるNPOが、NGOなんじゃないかと訴える市民オンブズマンの数が5000人を超えた時点で、ノジェル嬢に対して罵詈雑言を並べ立てる人間の数が市民の30パーセントを越えた時、ノジェル嬢をこの地域から追い出す正当なる理由とする為に、保険調査員が、各地域のラーメン屋に派遣。ズンドコつけるから、豚肉チャーシュー2枚おまけにつけてと、トッピング代を支払うつもりがないノジェル嬢が、化粧を落とした男性の姿で出没するのを確認する目的は、彼である彼女が男性の姿で、イチゴ世代という15歳前後の美少女から可愛くない血が流れた事件を調べる司法機関とは別に、保険調査の目的は、ラーメン屋に行ってアルコールを飲まないのに、船酔いのように酔ってしまった時、嘔吐してしまった時、洋服が汚れたクリーニング代金を、ラーメン屋に請求したらいいのか、それとも、そのノジェル嬢に請求すればいいのかの問題の調査。




【クリーニング代金請求の如何についての調査は続行中】




第8話 了

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