第2話 OB
大会当日、私たちはレディース部門に参加していた。もちろんこの船はいままで男子が使っていたので、女性初参戦となる。
建築関係のOBが大きなトラックで私たちのボートを運搬してくれた。OBたちも新設の高校にボート部が作れなかったことを悔いて万全のバックアップをしてくれているのだ。
毎夜OBが集まり、ボートに若干の細工を加えて、最新型の軽量ボートと戦えるようにセットアップしてくれているのだが、なにせ旧型のために重量の差がありすぎる、だからこの夏、あんなに苦しいトレーニングで体をいじめ筋力と持久力を養っていたのだ。
「おいエリカに裕子、セットアップはバッチリだ!あとは悔いのないように行け!」
さすがは工業科のOBだけあってボートのセッティングはお手の物だった。おそらくメカニック的な技量ではウチの高校が一番だろう。学生服を着た応援団のOBたちに頭を下げてボートに乗り込んだ。コクピットは今のものと違って広くのゆったりとした気分でスタートの合図を待っている。
「ねぇ、エリカ。これで最後だね。あのさ。」
「えっ、なによ裕子しんみりしちゃってさ。」
「あのね。いろんな思いでが湧いてきちゃって、一年でマネになった時、先輩たちすごく喜んでいたね。」
「そうね。まさか、マネの私たちが受け継ぐとはおもっていなかったわ。」
「だね。エリカのおじいちゃんが作ったこの船の最後の試合だね。笑われないように頑張るから!」
「ありがと裕子。うん、おじいちゃん、私頑張るね!」
私はボートを撫でて愛でている、湖面には秋風が吹き始め、はらりとカエデの木から一枚の葉が落ちたと瞬間、スタートの号砲が鳴った」
「いけーぇ!私たちのスワン号!」
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