スワンズ

かもがわぶんこ

第1話 スワンズ

 私の名前は「白川エリカ」白鳥高校3年ムキムキ系の女子。


 山頂向かって坂道を駆け上がる高地トレーニングをしている、

傍らにはボート部のペア、つまり相棒の「鳥居裕子」と一緒に7合目を超えたところだ、酸素も薄くて息切れが思考をぼやけさせてしまう。


山頂まで続く坂道の先に入道雲が登りたち私たちを見下ろしていた。



「はぁはぁ、エリカぁ。ちょっと休もうよ。」


「そうね。じゃぁ、ここで休憩でもするか。」



 ボートというのは脚力と背筋が勝敗を決めてしまう。筋力と持久力、そして整備、その上遠征費もかかる高コストなスポーツなのだ。



 まずは私たちのボート部の歴史から話さないといけない。



 旧白鳥高校は、商業科と工業科で成り立つ高校だったのだが、県の工業化推進プロジェクトで最先端技術を教科として取り入れた学校が創設され、工業科が学校から離れ商業科の女子校になってしまったのだ。


 元々ボート部は男子部員と私たち女子マネージャーだったのだが、男子部員が新しい高校に進み、私たちが受け継いだ形でこの部を存続させている。


 私はこの歴史の長いクラブ好きだ、私たちが使っているボートは、戦後私のおじいちゃんが物不足の中、仲間たちと一から作ったボートなのだ。脈々とボートは受け継がれ孫の私が使っている。今では重くて大きいのだが、立派に競技に参戦できるスペックをもっている。

去年亡くなった祖父のために私は卒業までこのボートをあづかる事にしたのだ。



「エリカ。もう夏おわっちゃうね、秋の大会にはあの子(ボート)を絶対に輝かせてあてたいな。」


「裕子なんか私のわがままに引っ張り込んでしまってっごめんね。」


「いよ、いつも昔からあんたには振り回されっぱなしだから。」



一足早い初秋の風に吹かれながら私たちは大粒の汗を流してトレーニングしていた、そして月日は流れレースを迎えることになる。

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