第5話 30cmマグナム
ダンの生まれは、炭鉱で働く者達が集まってできた、山奥にある人口100人にも満たない小さな村のタンコー村。
両親を早くに亡くし、近所の親戚などから少なからず援助を受け、子供ながらに炭鉱での手伝いで生計をたてる、苦労人の少年時代を過ごしていた。
そんな貧しく、苦労をして育った子供の頃のダンは、他の子供と違った身体的特徴を有していた。
それが巨大なイチモツ。太さ、長さ、共に規格外。生まれたての赤子の時ですら、並の大人よりデカいのだ。
まるで三本目の足と見間違う程の見事なまでの大きさ。それが幼少期にはコンプレックスではあったが、思春期にもなれば話は別。
そう、ダンは第二次性徴により、自らのイチモツの素晴らしさを理解し始めたのだ!
そしてダンはある夢を抱くようになる。この愛棒30cmマグナムによる無双…すなわち、
それは思春期特有の青臭い、エロい妄想なのかも知れない。しかし、その妄想を現実のものへと、変える事ができるかも知れない…そう、思わせる程の説得力がダンの愛棒30cmマグナムには備わっていた。
田舎の小さな村にて、女湯を覗くことに情熱を注ぐだけが青春ではない。男として生まれたのであれば…いや、30cmマグナムの所有者として生まれたのであれば、
村一番の物知りである、酔っ払いのゴンベーさんから、毎日のように都会での話を聞く思春期のダン。
…そして18歳。ダンは満を持して田舎から王都へと、上京を果たすのであった!
◆
『…と、まあ苦労人である少年ダンは、夢を追い求めて王都にやってきたって訳だ』
「へー。ハーレムってのが何だかよく分からないけど、ダンがそれだけ夢中になるってことは、本当に凄いことなんだね!」
『ふっ!当たり前だ!!漢であれば誰もが夢見る…それがハーレム!迷宮族の繁殖方法しか知らないジョン、お前にはまだ理解はできないかも知れないがな!まあ、それでも傷が完全に癒えて、治癒に使われているタンパク質が本来の役割を果たす時が来れば…その30cmマグナムの偉大さを知ることになるだろう!楽しみに待て!そして俺の体を借りているにすぎないことを忘れるなよ!その素晴らしい肉体は、いずれ俺に返してもらわないと、いけないからな!』
「うん。それは分かってる。お互いに元の体に戻れるかどうかはまだ分からないけど、ひょっとしたらダンの固有スキルが僕と同じマスターチェンジの可能性もあるからね」
『でも、その可能性は低いんだろ?マスターチェンジって固有スキル自体が、かなりのレアらしいし…』
「そうだね。魔王レドリゲル様から継承した知識の中でも、僕以外に所有してるのは確認できなかったし…。そこでね、ダンに提案があるんだ」
『ほう?提案とな?』
「うん。今、僕はダンの話を聞いてて…僕も王都に行ってみたくなったんだ!ずっと同じ景色を千年間も見てきて、少しでもいいから別の景色を見たいって思ってきたけど、まだまだ世界には色んなものがあるみたいでしょ?だから…王都や他の場所を訪れて、その先々で元の体に入れ替わる情報をゲットできるなら…」
『却下』
「えっ⁉︎一考もせずに却下⁉︎」
『当たり前だ。どんなに考えたってダメに決まってるだろう!』
「いや、ちゃんと傷を完治させてからだよ⁉︎それでもダメなの⁉︎」
『ダメのダメのダメ子ちゃんだ。何度も言うが、その体は俺様の物だ。今は仕方なく、お前が使用しているだけで、本来であればその30cmマグナムを持つ世界一の肉体は、俺様の物。それを勝手に危険に晒すような真似など、許可するわけがないだろう?』
「危険なところになんか行かないよ!王都や町に行って情報を得るだけだから…」
『ド阿呆。なんで王都や町に危険が無いって言えるんだ?そもそも、お前は人間としての知識が乏しいだろう?ダンジョンとしての知識なら、それなりにあるだろうがな。そんなジョンが…人としての知識が乏しいジョンが、たった一人で王都になんて行ってみろ。悪い奴らに騙されて借金を背負ったり、下手したら殺されたりするんだぞ?』
「え?そんなに危険なの…?」
『そうだよ。おれが人間で、お前と二人で王都に行けるなら考えなくも無いが、お前一人で行くしかないだろ?俺も王都に来たばかりで信頼できる友達もいないし、お前を任せられる奴なんかいないんだ。そんな状況下で…人としての経験も無いお前が…たった一人で王都に?無謀にも程があるだろう!』
「で、でも…」
『知的好奇心があるのは大いに結構だ!俺もエロいことに関しては、人並み以上に好奇心があるからな!だが、お前の体は俺の物!危険に晒されるなら、止めるにきまってるだろう!それでもお前は王都に行きたいのか⁉︎』
ずっとずっと同じ景色を見てきたジョンにとって、世界の広さを知りたいと思うのは、ごく自然なこと。
しかし、今のジョンの体はダンの物であるのも事実。そしてジョンには知り得ないような危険が、旅先にあることも、また事実。
思い悩むジョン。しかし、ダンの正論を覆せる程の知識がジョンには無い。それでも、やはり、知的好奇心が疼くのだ。千年間、我慢し続けた思い。悩むなと言うのは無理な話である。
そんなジョンの顔を見て、仕方無しにとダンが助け舟を出した。
『…まあ、俺がここでじっとしてても、餌となる人間がやってくる訳じゃ無いからな〜。いずれは誰か人間の協力者に、ここへと餌を誘導する依頼をしなければならないし〜』
そこでジョンの顔がパッと明るくなった。
「そ、そうだよ!ダンの食事だって考えなくっちゃいけないんだ!だったら、やっぱり、僕が王都に行かないと!」
『ああ、そうだな。なら仕方ないな〜…ってか、自分の顔でそんなに悲しそうな顔をされたら、断り難いよなぁ、しかし』
やれやれといった感じのダンではあったが、ダンにとってジョンは命の恩人である。そして今は自分の慣れ親しんだ顔をしている。悲しい顔をされては、流石に甘い事を言ってしまうのは、仕方のないことだろう。
『いいか、ジョン。お前がこれから、傷を完治して王都へと向かうのであれば…それまでの間に、徹底して人間の世界についての常識をお前に叩き込む。田舎者の俺の知識がどれだけあてになるかは、分からないがな!』
「うん!」
『それと…常識を語るその前に、だ。お前に教えなければならない事がある』
「え?なんだろ?」
『俺がここにやってきた時、敵兵に追われて、死にかけてたよな?』
「あ、うん。そうだったよね。返り討ちにして捕食したけど…」
『俺がなんで追われてたのか、そして死にかけてたのか。お前が本当に王都に行くなら知っておかなければならない。俺が罠に嵌められた、その理由をな…』
「……」
『さっきの話の続きだ。俺が田舎から王都へとやってきて…そして、冒険者ギルドに登録を済ませてからのことを…』
そしてダンはポツリポツリと語り出した。自身が死にかけ、そして逃走した経緯について…。
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