第17章 終焉告げる無限光〈上〉
Prologue 現状報告
『魔導士という生き物は、誰よりも人の理から外れていて、誰よりも人間らしい存在である』
一九九〇年代に活躍した魔法研究家ジェルス・ルイザーの格言の一つである。
彼は魔導士を異形の存在だと言っておきながら、魔導士は普通の人間以上に人間らしさが強い生き物だと矛盾じみた発言を残した。
これには様々な批判家が酷評したがそれは一部であり、他の批評家達は彼の言葉に言い得て妙だと思った。
魔導士は、良くも悪くも感情に支配されやすい。
たとえば怒り。愛する人を亡くした魔導士は己を巻き込んでも敵を殲滅する。
たとえば悲しみ。全てを失った魔導士は生気すら失い、やがてそのまま朽ち果てる。
喜怒哀楽以外にも様々な感情が存在する以上、魔導士は物心ついた頃から魔法の暴走に繋がる感情を制御しなければならない。
さて、何故このような前置きをしたのか。それにはちゃんと理由がある。
聖天学園襲撃事件から早一ヶ月が過ぎ、世界情勢は不安定化してきている。
『ノヴァエ・テッラエ』なる魔導犯罪組織の宣戦布告は世界中にいる魔導士崩れや準魔導士達の心をひどく触発させ、これまで抑えてきた感情を爆発させるように魔導士非魔導士問わず襲うようになった。
それに伴い犯罪行為や急激に増加し、それまで魔導士と非魔導士の間で燻っていた火種が燃え広がってしまう。
非魔導士は感情の赴くまま魔導士への怒りをぶちまけ、選民主義思想の魔導士は今まで内心見下してきた非魔導士に対し躊躇も遠慮もなく魔法で攻撃するようになる。
日本のみならず世界中で発生した事態に、IMFは職員を派遣し鎮圧行為を図るも数分もしない内に別の場所で同じことを繰り返す。
今まで以上の激務に心身がついていけず、過労で倒れてしまう職員が続出。
しかし事態は一向に鎮まらず、負傷者が増加し各地の病院もIMFのように人手が足りない状態になっていく。
さらには差別主義者団体の活動も勢いを増し、魔導士を国から追い出し僻地に幽閉するという計画を立て始めているという噂も流れ始めた。
世界の中枢として担っていた魔導士の立場と一般社会と魔導士社会の確執。
これまで数百年もかけて保たれてきた均衡が崩れ始め、世界は『ノヴァエ・テッラエ』――カロンの思惑通り進んでいく。
その先に待つのは、カロンによって選ばれた人類のみが生存を許された世界。
理不尽も不条理も差別も迫害も絶望もない、まるで夢のような理想郷。
しかし、その理想郷に住めるのはほんのひと握り。
それ以外は不要と見做され、生存すら許されず問答無用で捨てられる。
理想郷の実現するため必要なものは三つ。
世界の改変に必要な巨大魔道具『
『
そして、『
この三つの内、一つはカロンの手の中にあるが、残り二つはまだ手に入っていない。
それにより始まるのは、世界を巻き込んだ争奪戦。
前世から続く因縁の波乱が、今幕を開ける―――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます