閑話 パートナー馬鹿の仲間入り

 小鳥遊小夜子の事件から一ヶ月が経ったある日、日向と心菜が購買でデザートを買っている間、悠護と樹、それからギルベルトは食堂である二人をじっと見つめていた。

 視線の先にいたのは、桜小路凛音と小鳥遊楓華。

 先の事件で多方面から色んな意味で好奇な目を向けられている二人は、受け取り口で何か言い合っていた。


「俺が持っていくから、お前はジュースでも買ってこい」

「でも……凛音に持たせるのは、ちょっと……」

「もう主従関係はないんだ。これくらい遠慮すんな」

「……うん。分かった。凛音はアイスティーでいいよね?」

「おう。頼むわ」


 凛音の言葉に了解の意味で頷いた楓華は、小走りで自販機がある廊下へ向かう。

 その後ろ姿を見送った凛音は、自分と楓華が注文した昼食を乗せたトレーを持って席に着くと、どこか生温かい目で見てくる悠護達を見てびくりと肩を震わせた。


「な、なんだよアンタら……その目はなんだ!?」

「いやぁ~? 桜小路も随分とパートナー馬鹿になったなぁって」

「は? パートナー馬鹿って……」

「文字通りだぜ。親馬鹿のパートナーバージョン」


 親馬鹿。子供のことを非常に可愛がっている人を指す言葉。

 そして、そのパートナー馬鹿というのはつまり……パートナーを非常に可愛がっている人という意味だ。


「は、はぁ!? 俺、あいつのこと可愛がってないですよ!?」

「いや、可愛がるっつーか……そういう過保護なところがな」

「ああ。パートナー馬鹿の共通点は、パートナーに対して過保護なほど気を遣い、なおかつ恋愛感情を抱いているというところだ。思い当たるところはあるか?」

「そんなの、ある…………わけ…………」


 ないと言いたいが、ギルベルトの出した共通点を聞いて口を閉ざす。


(いや、確かに俺は楓華に対いて恋愛感情抱いてるし、昔の名残でまだ鈍臭いから色々と気にかけているけど……けど!)


 反論材料が見つからずダラダラと汗を流す凛音に、三人はにやついた笑みを浮べながら言った。


「「「おめでとう、お前もパートナー馬鹿の仲間入りだ」」」

「ちっとも嬉しくねぇええ――――っ!?」


 不名誉な称号を手に入れた凛音は、人目を憚らず大声を上げた。

 それをちょうど鉢合わせた日向達が見て首を傾げたのは言うまでもない。

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