閑話 ダンスパーティーのその後
ダンスパーティーの翌日、日向は朝早く寮を出た。
別に何か特別なことがあるといわけではない。単純に悠護と顔が合わせ辛いだけだ。
(だってどんな顔をして会えと?)
あの発言のせいで変に意識してしまい、昨夜はあまり眠れなかった。
悠護の顔を見るだけで赤面する自信があるため、なるべく早く出て平常心を取り戻したかった。
だが日向がドアを閉じた直後、まったく同じタイミングで隣のドアが閉じた。
「あ」
「あ……」
隣のドアを閉めたのは悠護で、彼は眉間に眉を寄せながらこめかみを押さえていた。
日向もまさかこのタイミングで鉢合わせるのは予想外だったが、彼の様子を見て首を傾げた。
「どうしたの? 頭痛いの?」
「ああ……気にすんな、ただの二日酔いだ」
「なんでソフトドリンクの中にシャンパンが混じってたんだよ……」とブツブツ文句を言うのを見るに、どうやら自分がお酒を飲んだことは覚えているようだ。
日向自身としては、その後の爆弾発言を覚えてなくて少しほっとした。
だが、
「……なあ、俺なんか変なこと言わなかったか?」
「へっ!?」
まさかの問いかけに日向は裏返った声を出した。
「ななな、なんでそんなことを……!?」
「いや、なんか樹が酔っぱらった俺を介抱した日向の様子がおかしいって言ってて」
(樹のバカー!!)
同居人からのリークを聞いて、あの赤髪魔導具バカを心の中で罵倒した。
いつもならプライバシー以外のことならなんでも言えるのだが、今回ばかりは流石の日向も口をつぐんだ。
(無理だよ! 『贈ったドレス着たら襲われる覚悟しろよ』みたいなこと言ったなんて言えるわけがない!!)
昨夜の発言と共にお酒に酔ってどこか色っぽい雰囲気を醸し出したパートナーの姿を思い出し、日向の顔がトマトみたいに真っ赤になる。
その様子を見て悠護がギョッと目を見開いた。
「お、おい、なんだよその反応。俺本当に何を言って――」
「悠護のバカぁああああああああああああ!!」
「はぶっ!?」
絶叫と共に悠護の右頬から強い衝撃が襲った。
理由は単純、日向が持っていた通学鞄をハリセン代わりとして殴りかかったからだ。
しかも普段から鍛えてるせいで腕力は普通の女子より上をいっており、悠護は体ごと壁に激突する。
「なんだよ今の音……って、おい悠護!? しっかりしろー!?」
壁にヒビを作り、額から血を流しながら倒れる親友の姿を見て悲鳴を上げる樹の声を聞きながら、日向は全速力でその場から立ち去った。
その後、今朝の件で陽に軽く説教を受けて、悠護に土下座付きで謝罪したのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます